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24・シェシカルの街

 シェシカルの街

 二つの国の国境に近い為国の端、辺境の街にしてはかなり大きい。人も物も集まってくる。街の周辺には魔物の狩り場も多いから拠点にしている冒険者も多い。

 けれどその分、治安は良いとは言えない。街の住人も夜はあまり出歩かないくらいで、騎士や兵士が目を光らせていても犯罪は減らないそうだ。




 兵士の後について詰所に入る。外から見て分かっていたが、こじんまりしている。詰所というより簡単な手続きの為と兵士の休憩用の建物のような感じだ。

 入り口のところでボケっと突っ立って待っていると、兵士が台座にセットされた水晶を持ってきた。

 真偽の魔道具だ。



 真偽の魔道具。

 触れた者の賞罰を映し視ることが出来るモノ。



 兵士がテーブルに台座を置き触るように促す。言われた通りに真偽の魔道具の上に手を添える。

 真偽の魔道具が光り手を退けると、そこには何も映されていなかった。

 何もないのだから当然ではある。



 しかし、僕には“完全隠蔽”のスキルがあるのであっても隠そうと思えば隠せる。真偽の魔道具より“完全隠蔽”のスキルの方が上だから。


 もう一度言おう。僕には(やま)しいことは何もない。ただ言ってみただけである。



 「はい、大丈夫ですね。ではこちらが仮の身分証になります。期限は三日間。その間に正式の身分証を作って下さいね。すみませんが、通行料の銀貨一枚は頂きます」


 銀貨一枚を渡して仮の身分証を受け取る。礼を言って出ようとした時、従魔のことを忘れていたことに気付く。


 従魔は街中で連れていてもいいが、その場合〔従魔の首飾り〕をしなければならない。〔従魔の首飾り〕は今アイテムボックスに一つしか入っていないので二つくらい貰おうかな。



 というか兵士さん、貴方が言うべきことでしょう?思いっきり肩にドラゴン乗ってるでしょう?



 「すみませんが、〔従魔の首飾り〕を二つ頂けませんか?」

 「ああ、そうでしたね。少しお待ち下さい。」


 またもや一瞬面倒くさそうな顔をして奥に向かう。


 お前は新人か?表情くらい隠せ!というか仕事だろ!、と兵士の背中に少しの殺気を込めて念を送れば、兵士は飛び上がり辺りを見回す。



 若干イラっとしたのでつい…………………てへ♪



 直ぐに兵士は〔従魔の首飾り〕を二つ持ってきた。その顔が青ざめ怯えたような視線を向けられたので、眼鏡を上げつつ何かありましたか的な素知らぬ顔で首を傾げる。

 兵士は青ざめたまま首を横に振る。〔従魔の首飾り〕は二つで銀貨五枚。銀貨を渡すと逃げるように外に出ていった。瑠華は肩を竦めると、マリアとムツキの首に〔従魔の首飾り〕を掛けてから外に出て、冒険者ギルドを目指して歩き出す。


 途中大通りには沢山の屋台が立ち並び、美味しそうな匂いを漂わせていた。

 まだ昼には時間があるので屋台は開いていないが、匂いはそこかしこからしている。


 (お腹が減っていたら軽い拷問だな…………)


 実際瑠華も、森での戦闘とその後の走りで小腹が空いている。後ろ髪を引かれるが、先ずは冒険者ギルドで登録しなければ、と大通りを進んでいく。

 匂いにつられマリアとムツキが鼻をヒクヒクさせている。



 冒険者ギルドは街の中心に近い場所にある。大通りから少し離れた場所に三階建ての木造の建物が見えてきた。

 一本の剣が中心に立ちその後ろに二本の剣が交差している、というエンブレムを掲げた看板が入り口にぶら下がっている。


 冒険者ギルドの入り口の戸の前に立ち、マリアを一撫でしフードの中に入るように促す。



 念のためにマリアには隠れてもらう。念のために、ね。




 戸を開け中に入る。ギルドの中には冒険者がそれなりに居た。早い者は既に依頼を受注してこなしている頃だろう。ここにいるのは割りのいい依頼を取られた後か、遅れてきたか、逆に今帰ってきたところという感じか。

 こんな時間に隣接された酒場で、飲んでいる冒険者もいる。


 この場にいるほとんどの者から視線を感じる。ローブとフードで顔を隠しているからやはり目立つ。

 興味、敵意、疑念、観察するような視線だ。


 そんなものは丸っと無視し、三つ並ぶ受付を見る。受付の女性は皆それなり以上に美人だった。

 人族、獣人族、人族と並ぶ。獣人族は犬耳かな?

 とりあえず左の人が空いているのでそちらに向かう。


 「こんにちは、いらっしゃいませ。本日はどういったご用件でしょうか?」


 近づく瑠華に気付き受付嬢は笑顔で挨拶をする。瑠華も受付嬢の前まで行き軽く頭を下げる。


 「すみません、冒険者登録をしたいのですが」

 「ご登録ですね?ありがとうございます。失礼ですが、成人しておりますでしょうか?」

 「はい、それは大丈夫です」

 「畏まりました。ではこちらに手を置いてください」


 受付嬢が取り出したのは、先程兵士の詰所で見た真偽の魔道具と同じモノだ。水晶の上に手を置き、賞罰が無いことを確認する。


 「はい、大丈夫のようですね。ではこちらの紙に必要事項を書いて下さい。必要であれば代筆も出来ます」

 「いえ、書けますので」


 おぉ、懐かしい!僕にとっては十数年ぶりだけど、ちゃんとこの世界の文字が書けるね。良かった!



 登録用紙には名前、年齢、種族、主な武器、属性、従魔を書く。書いた用紙を受付嬢に渡す。


 「ルカ様ですね。大丈夫です。召喚師の方ですか。〔従魔の首飾り〕はお持ちですか?」

 「はい、門で兵士に頂きました。」

 「ではこちらで登録してきますので、少々お待ち下さい」


 受付嬢を待っている間に依頼でも見ようかなと、身体を動かそうとして止める。斜め後ろから強い視線を感じる。敵意と殺気が込められた視線。


 (これが、テンプレってやつかな?)


 背中に感じる視線に集中していると、受付嬢が帰ってきた。


 「ルカ様、お待たせしました。こちらが冒険者ギルドのカードになります」


 受付嬢から掌サイズのカードを受け取る。


 「ギルドカードは身分証にもなりますので、無くさないで下さいね。再発行は初回は銀貨一枚、次からは金貨五枚頂きます」

 「分かりました」

 「冒険者ギルドについて説明しますが宜しいでしょうか?」

 「いや、説明は大丈夫です。ただこの二年の内に変わったことがあれば知りたいのですが」

 「二年ですか?特に変わりはありませんね。もし何か知りたいことがあれば、ギルド内にある資料部屋で調べてみては?」


 確かに資料部屋ならギルドの事や魔物の情報なんかも見れる。後で見に行ってみよう。


 「本当に説明は大丈夫でしょうか?」

 「ええ、知っているので大丈夫です」

 「分かりました。今日から貴方はギルドの一員、冒険者です。これから励み頑張って上を目指してください」

 「よろしくお願いします」

 「あっ、遅らばせながら私はアミーナと申します。よろしくお願いいたします」


 椅子に座ったまま、ぺこんと頭を下げた彼女に口元が緩む。


 その時だった。横から野太い声が聞こえてきたのは。


 「おうおう、てめぇ何勝手にアミーナちゃんと話してるんだよ。てめぇみたいなローブ野郎、アミーナちゃんは相手にしねぇよ。分かったらさっさと出ていけ、このピ――――――野郎!」


 言葉が汚いので自主規制入りました。


 「…………………」


 瑠華は黙ったまま立っていた。アミーナは止めようか誰かを呼ぶか迷っているように、瑠華と後ろを交互に見ていた。


 「てめぇ!聞いてんのか‼」


 男は痺れを切らしたように声を上げ、瑠華の肩を掴もうと手を伸ばす。

 瑠華は一歩後ろに大きく下がり、男の手を空振りさせバランスを崩して前のめりにさせる。前のめりになった男の足を払い転倒させ、そのまま片方の足首を踏み砕く。

 およそ人体から鳴ってはいけない音がして男が絶叫を上げる。


 瑠華は踵を返し依頼が貼ってあるボードで、Gランクの依頼を三つ適当に選び受付まで戻る。


 受付の前で男が丸まって足を抑え呻いていたので、足の側面で軽くボールを横に蹴るような感覚で男の尻を蹴れば、男は十メートルは飛んで壁に激突し動かなくなる。


 「すみません、この依頼を受けたいのですが」


 アミーナに依頼の紙とギルドカードを渡すが、アミーナはぽかんとして瑠華を見上げていた。ギルド内にいる他の冒険者も、口を開けて間抜け面を晒している。



 ギルドは静寂に包まれていた。



 その中で、英雄だけが不思議そうに首を傾げていた。






テンプレって難しい………全然悪者風に書けません………


英雄も全然…………次では非情に‼


読んでいただいてありがとうございました。

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