23・モフモフ従魔達
マリア=ツェーレ
ランクSS ブラッディドラゴン 女の子
黒一色の長く柔らかいサラサラな毛を持つ、体長一五メートルはある竜種の中でも最強を誇る魔物。
首と尻尾が長く、尻尾などお尻から頭まで届く。瞳は琥珀石のような紅色。
ブラッディドラゴンの特化属性、闇と月魔法が得意で風水空間も操る。
性格は竜種らしく気位が高い。人や精霊の言葉を理解する高い知能もあるが、他者と共にいることを拒む孤高の存在。本来は人も入らぬ奥地に居るが、カインに出逢って以来彼と共にいることを願い一緒に旅をする。
彼女には「縮小」という固有スキルがあり、肩乗りサイズになれる。
カインに対しては甘えん坊で常に一緒にいる。カインに優しく撫でてもらう時間が何より好き。
ムツキ=ルーン
幻獣 男の子 地球でいうイタチの姿。 森属性
故郷の森から拐われ貴族に囚われていたのを、いろいろあってカインが助けた。その後故郷の森に連れていったがそのままついてきたので、旅の同行者になった。
人の言葉を理解するが、言葉は話せない。
人に囚われていたせいか、大変な人嫌いでカインから離れず他の者には近寄らず触らせない。
ただカインが心許す者には、慣れるまでに時間がかかるが触られても平気になる。
ムツキはもっふもふ。いつまでも触っていたいもっふもふで癒しである。
カインの服かフードの中が彼の定位置。
テト=クラーラ
ランクS スノウウルフハウンド 男 氷属性
二メートルを越す白い狼。瞳は空色。
氷山に住む種族で誇り高く知能も高い為、人の言葉を理解し話せる。氷山を荒らす者には容赦しないが、基本的に人の前には姿を見せない。
実はもう一頭いる。
カインは薬草を求めて氷山に入り彼等に出逢う。事情を説明して薬草を譲って貰うが、その際彼等の姿に感動し一緒に来てくれないか願った。
“我等より強き者になら付き従おう”と言われたので、一騎討ちし見事彼等の忠誠を勝ち取った。
彼等は一言で言うなら格好いいのだ。そして毛がサラサラなのもカインの心を掴んだ。
性格も格好良く狼らしい。カインのボケに突っ込んでくれる素敵さも併せ持つ。
幻獣とは、精霊と似た存在。精霊が透明な羽根を持ち、尖った耳や羽のような耳と差異あれど全員が人形に対し、幻獣は人形をもたない獣の姿のみである。
精霊が“精霊”という種族のように、幻獣は“幻獣”という種族だ。姿は違えど個別の種族名はない。
幻獣には本来は名もない。けれど同じ場所に住む精霊などがつけて呼ぶことはある。
ムツキも出逢った時は無かったのでカインがつけた。他の二頭も同様だ。
名前に特に意味はない。思いつきと音と響きで決めた。思いつきのわりにはカインも本人達も気に入っている。
閑話休題
三体の獣達を見て心からの笑顔になる。また逢えた喜びと懐かしさで、彼等に抱きつき柔らかな羽毛に顔を埋め思いっきりモフモフしたい。
だけど今はダメだ。先ずは彼等に僕が【カイン】だって分かってもらわなければ。
マリアもムツキもテトも二年ぶりだからか、突然違う場所に来てポカンとしている。
けれど直ぐに瑠華に気付き、警戒するように臨戦体勢をとる。瑠華はそんな彼等に軽く両手を広げ話しかける。
「マリア=ツェーレ、ムツキ=ルーン、テト=クラーラ、僕だよ、カインだ。姿は変わってしまったけど分かるかな?」
三頭はじっと瑠華を見つめ、そして直ぐに気付く。目の前の人間が、かつて血と魂の盟約を結んだ相手だと。
『あるじぃぃぃぃ‼』
先ずマリアがその巨大すぎるモフモフで抱きつき瑠華を押し潰す。
「きゅうぅぅぅぅ‼」
次いでムツキが隙間をぬって入り、瑠華の頬に顔や身体を擦り付ける。
二頭の間から身体を捻ってテトを見れば、呆れが多分に含まれているが嬉しそうに目を細めていた。
それから十分ほど戯れ、二頭が落ち着くのを待ってから立ち上がる。眼鏡や身を整えて改めて三頭と向き合う。
『主、姿が違う。でも魂は同じ。どういうことなの?』
マリアが首を傾げながら聞く。瑠華は高い位置にある瞳を見つめる。
「説明はシェシカルの街に着いてから話すよ。ここは魔物の気配があって落ち着かないから」
三頭は頷く。マリアはスキル「縮小」で肩乗りサイズになり、瑠華の左肩に乗る。ムツキはフードの中に這って入り右肩に顔をちょこんと乗せる。テトは瑠華の右に寄り添う。
抱き着いてスリスリしたいのを堪えつつ歩き出す。
その後は三頭をもふもふ撫でながら街を目指す。魔物に襲われながら森を抜けると、遥か前方に小さく街の城壁が見えた。
テトは目立つので、以前と同じように人が集まる場所ではマリアに闇と空間の複合魔法『影縫い』を影にかけてもらいテトに入ってもらう。
闇と空間の複合魔法『影縫い』‥‥影と空間魔法で創った異空間を繋ぐ。本来なら更に別の影を繋ぎ移動できる魔法だが、影と異空間を繋ぎ留めることでモノや生き物を入れられるのだ。
以前もいざという時の為に召喚した従魔達に入ってもらっていた。
テトが影に入ったのを確認し、走る。と言っても本気ではなく駆けるように景色を楽しみながら城壁に向かう。
城壁の前は門が開いたばかりのようで列が出来ていた。村を早く出すぎてしまったから仕方ない。
最後尾に並び人を観察しながら順番を待つ。
二十分程で瑠華の番になる。
簡易な鎧に身を包んだ兵士が、持っている槍を見せつつ右手を差し出す。
「身分証の提示をお願いします」
「すみません、身分証は持ってないんです。手続きをお願いします」
「…………分かりました。ではこちらにどうぞ」
兵士は一瞬面倒くさそうな顔をするが、直ぐに真面目な顔になり門のすぐ裏手にある兵士の詰所に促す。
兵士に激しく同意したい…………
出そうになるタメ息を堪えつつ兵士の後についていく。
ああ……………………めんどくせぇ………………
読んでいただいてありがとうございました。
ネタバレ的な?
次回はテンプレです。そして英雄様が非情です。
嫌わないで下さい。




