15・勇者と聖女の怒り
長くなってしまいました。状況を分かりやすく書くのは難しいですね。
ではどうぞ。
「はぁぁぁあっ‼」
勇者が振るう火の聖剣の一閃。
それだけで周囲に群がる魔物達の十数体が、血飛沫を上げながら倒れる。
勇者とそして共に戦う者達を囲む魔物の軍勢は、恐れるように後ずさる。目は逃げるか戦うか、迷うように揺れている。
勇者達はこの機を逃さず、武器を手に猛攻し魔物達を殲滅していく。
街に侵入し暴虐の限りを尽くしていた二百体を越える魔物の群れは、勇者達によって全てその命を狩られていた。
「お疲れ様でした‼勇者様‼」
「ありがとうございます!勇者様‼」
「本当にありがとうございました‼」
尊敬の眼差しで元気一杯に告げる者、涙を流してお礼を言う者、恭しく静かに頭を下げる者、黄色い声で叫びながらその声に熱を乗せて囁く者、様々な人達で決して広くはないその場が、騒然としている。
―――まるで見せ物みたい………
人々が道の左右に別れて、遠まきに自分達に声をかける姿に、そんなことを思う。
“勇者”として邪神を倒してからというもの、容姿の特徴が世界中に知れ渡り、行く先々でこんな感じだ。
いや、勇者が“黒髪黒目”っていうのは召喚されてから、噂話で囁かれていたけれども。
以前から勇者と知られると騒ぎにはなっていたけど、“邪神を倒した”という事実が顕著にした。
黒髪黒目はこの世界では、特にこの大陸では大変珍しい。いないと言った方が正しいかもしれない。どちらか一方をもつ人になら逢ったことがあるけれど、それも極僅か。その人達も別大陸から来た旅人のようなもの。
英雄の話では、遥か東にあるロドウィン島と呼ばれる、小さな大陸?に黒髪をもつ人達がいるらしいけど、その人達の中でも黒目をもつ人は珍しいらしい。
だから黒髪黒目=勇者という感じで広がってしまったみたい。
ちなみにその人達の料理は、薄味で日本の味に似ているらしく、英雄が初めて食べた時、懐かしくて感動で泣きそうになったとか。
俺の場合、英雄が日本料理を再現して作って食べさせてくれてたから、そこまで恋しいと思わなかったなぁ………………とここまで考えて思考を切る。
気持ちがず――んと下がり、膝を抱えたくなった。
英雄が目の前で死んだ事実が、重く心にのし掛かる。二年経った今でも、英雄のことを思えば悲しみが胸に溢れる。
俺がこんな状態なのだから、聖女の悲しみを思えば辛くなる。でも彼女はそれを周りに見せないよう、気丈に振る舞う。それが余計に皆の心配を煽る。聖女もそれを察して更に笑顔を振り撒く、という悪循環が出来上がっている。
何とかしなければと思うが、下手なことをすれば彼女の心を抉ることになるから慎重になる。
俺達は、今は見ていることしか出来ない。
聖女に本当の笑顔をさせられる人物はたった一人だけ。そのたった一人がいないのだからどうしようもない。
しかも更に頭を抱えたくなるようなことが、二つある。
一つは聖女の心が弱っているのをいいことに、そこにつけこむ馬鹿でアホで、自分を“聖女に相応しい良い男”と思っている愚か者の存在だ。
身分は侯爵の長男で、女性が十人に八人は格好良いと言うぐらいには容姿も整っている。性格も少し他者を、特に平民や魔力が低い人達を見下す傾向があるが、概ね温厚で優しく人当たりもいい。
確かに聖女、というか皇女には相応しい相手ではある。
だがしかし‼皇帝陛下をは初め、皇妃様皇太子様、皇子皇女様方、皇国の有力貴族(特にフィンランディ公爵家)、勇者一行の一人で聖女の親友の神官、そして俺は一切その男を認めていない‼
聖女もその男の相手はするが、笑顔は誰が見ても作り笑いだと分かるものだし、瞳も極寒の如く冷えきっているのに、何故あの男は気づかない?
何故自分は聖女に好かれていると、声を高々に周りに言いふらしているんだ?
あの男が聖女に近づけないよう、周りが然り気無く邪魔しているのに、それすら気づかず聖女を探しだし、愛を囁く。
バカなんじゃないの?、と皆面と向かって言いたいのを堪えていると、よく愚痴っている。
俺は知らなかったんだけど、英雄が居た時から、あの男は聖女に言い寄っていたらしい。
聖女が英雄に恋しているのは、誰が見ても明らかだったのに(聖女は隠していたみたいだけれど)。
あの男も勿論それは知っていたから、よく英雄を見つけては決闘を申し込んでいたらしい。英雄は全く相手にせず、眼中にすら入れていなかったから、決闘は行われなかったらしいけど。
しかものらりくらりと避ける英雄に業を煮やしたのか、ある時いつものように声を掛けて、英雄が“欠陥色”であることを最大限に見下し、これでもかと罵詈雑言を吐きまくったそうな。
更にあまつさえ、聖女の目の前で言ってはならないことを言ってしまった。
―――無能は死ね。
これには聖女のみならず、皇帝陛下やフィンランディ公爵様も動いた。
普通に考えて(俺は一般市民でしかないので知識でしか知らないけれど)、侯爵子息が公爵子息に対してとっていい言動ではない。
それにこの時既に、英雄はSSランクになっていて、ジルトニア皇国だけではなく、獣人の国ティアッティマレイと、魔族の国ミシュッピィ・ソファディと冒険者として契約していた。
国と冒険者の契約は、冒険者が国の後ろ楯を得るようなもので、Sランク以上になると大抵どこかの国と契約する。
契約すると、主にその国で冒険者として依頼を受けるけれど、別に他の国で依頼を受けてはいけないってことではない。
当然、契約した国にはいい顔はされないけれど。
契約はほぼ一つだけ。三つの国と契約しているのは英雄だけ(これには他の国も納得する理由がある)らしい。
ちなみに俺はどこの国とも契約していない。
“勇者”だから、ね。
でもほとんどジルトニア皇国で活動している。
だって英雄がいた国だし、召喚された場所だから思い入れがあるんだ。
そんなこと絶対に口には出せないけど。
話は逸れたけど、そんな人物に“気に入らないから”って喧嘩売っちゃいけないよね。一つ目の理由だけでアウトだと思う。
言われた当の本人は、本当に全く欠片ほども気にしていなかったから、滑稽で哀れだと思うけど。
でも侯爵家が責められて、断罪されても周りを止めないんだから、英雄も少しは怒ってたのかな?
というか侯爵家も、原因を作った人間をそのままにしてるのは、どうなのかな?何か理由があるんだろうか?
まぁ、俺は本当に貴族のことはさっぱりだから、余計なことは言わないし、言わないけれど。
聖女は英雄を失った悲しみを癒せずにいるのに、そんな男の言動に心を痛めている。いつか倒れるんじゃいかと周りが気が気ではないというのに、更に追い討ちをかけるような馬鹿共が現れた。
馬鹿共のことを思い出し、そこでまた思考を切る。あいつらを思い出すと、冷静でいられないからだ。
身内しかいないような場合なら、心のままに愚痴るけど、ここは人目がありすぎるからね。
凱旋のようになっている道を進み、宿へと入る。そこでも盛大にお礼を言われるが、相手もそこそこに部屋を借りる。
部屋に入ってベッドに腰掛け、一息つく。
「お疲れ様です、アカツキ」
俺が一息ついて落ち着いたのを見計らって、この街に一緒に来ていた神官が声をかけてくる。
フィーリア・ランベージ
勇者一行の神官。ジルトニア皇国ランベージ伯爵の長女で、身長は160前半、腰まである美しい金髪、瞳は淡いエメラルド、キメ細かい白い肌、細く均等のとれた身体を白い神官服で隠している。その顔にはいつも穏やかな微笑を浮かべていて、慈悲深く誰にでも優しい。
俺がイメージしていた神官像そのまんまの人。
でも俺が英雄にいじめられてても助けてくれない。
曰く、“英雄様”が恐ろしいから、巻き込まれたくないらしい…………………ぐすん。
そして俺が心から愛する人。
「うん、お疲れ様。結構な大群がいたね」
「ええ、間に合って良かったです」
お互いに顔を見合わせ、笑い合う。
俺達は、この街からギルドに緊急依頼が出され、その依頼をギルドマスター経由で知らされて、急遽この街に来た。
街のすぐ側にある森に、魔物が集まっているという情報で来てみれば、街が既に魔物の侵攻を受けていた。
先ずは街に入り込んだ魔物から始末し、徐々に森の手前まで押し返す。そこで一気に殲滅した。
緊急だったため、こちらはフィーリアと偶々近くにいたAランクパーティー三人の計五人しか来れなかったが、なんとかなって良かった。
でも今ここに英雄がいたら怒るんだろうな。常日頃から、いつでも戦えるように万全に準備しておけって、何度も何度も繰り返し言われていた。
フィーリアとデート中だったんですって言った瞬間に、アイアンクローされ、服の中に英雄愛用のキャタピラーさん(勇者専用教育アイテム)を入れられるんだろうなぁ…………………………ガクブル………
この世界に来て出来た、二年間更新されず、これからも更新されないであろう心のトラウマノートが開きかけたので、そっと閉じる。
思い出してはいけない。見てはいけない。心の平穏の為に。
そんな心の中でブルブルしていたら、フィーリアが隣に座り労るように頬に触れてきた。
「先程、悲しそうな顔をしていましたが、何かありましたか?………またカイン様のことですか?」
「うん、アオのこともそうだけど、聖女、レミーディアのこともね」
「そうですか……………」
フィーリアも辛そうに顔を歪ませる。彼女はレミーディアと親友だから余計だろう。
フィーリアもレミーディアに何もしてやれない自分に苛立っているし、例の男に関して暗殺でもするんじゃないかってくらい殺意を抱いている。ちょっと怖い……………
その時、窓から一羽の鳥が入ってきた。
その鳥は皇軍で使われている連絡用の鳥である。呼び名は連鳥……………この世界のネーミングセンスに一度もの申してみたい………
窓から入ってきた連鳥は赤色。緊急用の色。他にも通常時は青、急ぎは黄色がある。信号の色なんて思っちゃいけないよ?
フィーリアが連鳥に近づき両手に乗せる。そのまま俺の前にもってくる。俺の前に来た連鳥は、小さな口を開き話し始める。とっても格好いい男性の美声で。
「勇者よ、緊急の話がある。急ぎ皇都に戻られたし」
皇帝陛下の声だ。
連鳥は特殊な鳥で、声に魔力を乗せて話すとそのままの声を覚えるのだ。しかも産まれて初めて聞いた魔力込みの声を生涯忘れないというビックリな鳥である。
しかも最初の声の主の魔力は、どんなに遠くても感じるらしく見つけることができる。そしてその人にしか口を開かない、連絡役にぴったりな鳥。
初めて聞いた声は忘れないのに、二回目以降に覚えた声は一度口にするとその瞬間に忘れるという。
特殊さが長所であり短所の生き物。そして魔物ではなく幻獣。
主に皇家、皇軍本部から個人へと使われる。
この赤色の連鳥は、俺が卵から孵した俺専用の連鳥。
名前は【そうくん】。くんまで名前だよ。
呼び捨てになんかしたら、英雄様から見事な踵落としがくるんだからね?
ちなみに、皇帝陛下や皇太子様、軍の偉い方は三色の連鳥を卵から孵して声を覚えさせる。大変だね。
更に、この世界には魔道具の通信機がある。けれど数が少ないので、連鳥が使われている。
俺、通信機持ってるんですけど?何で連鳥?
「皇帝陛下からですか。何があったんでしょうね?」
「う~ん、また魔物関連かな?だったら通信機にしてくれればいいのにね」
「せっかくの連鳥を使ってあげないと可哀想だからじゃないですか?」
「……………………緊急なんだか呑気なんだか判断に困るね」
その後、宿でゆっくり休み次の日の早朝に街を出る。
そして皇帝陛下から話を聞いて、俺の心は怒りに染まる。
皇太子様がカーウェン鍾乳洞で異世界の者を発見した。それも一人ではなく十一人もだ。しかも更に居るらしい。
それはありえない、あってはならないこと。
異世界の者がこの世界に来るのは勇者召喚のみ。それ以外は決してない。セラフィミリム様がしない。
勇者召喚は邪神を倒す為に行われるから、邪神がいない今、そんなことは行われない。
なら何故異世界の者が居るのか?
人間が召喚した?神の御業を真似て?なんの為に?
悪いことの為、としか思えないなぁ…………
許さないよ?
英雄が、アオが命をかけて護った世界を、皆が安心して暮らしている平和を壊そうとしているの?
何処の誰だが知らないけど、そんなこと俺が許さないよ?
アオが認めてくれた勇者の力で、完膚なきまでに潰してやる―――
☆☆☆
朝露に濡れる草木が朝日に照らされキラキラと光る。
あの場所に行くこの時が、今の私にとってかけがえのない時間。
愛しい方を亡くした痛みは、癒えることなく私の心にある。きっと一生癒えはしないだろう。
けれどそれで構わない。
私があの方を忘れることなど生涯あり得ないのだから。
坂道を登っていくと、皇都を一望できる丘に出る。
皇都の後ろに聳える聖なる森。その森との間にある小さな丘。そこに二年前の戦争の慰霊碑をつくりました。
ここには誰の遺体も埋葬されておりません。身元が分かる方はそれぞれの家に、身体の損傷が激しく身元が分からない方、身内がいない方などは彼の地で皆が見守る中、癒しと浄化をもつ神聖な焔で供養しました。
愛しい方もフィンランディ公爵家の領地で、公爵家のお墓に入られました。
フィンランディ公爵家の領地にはあまり行けませんから、こうして慰霊碑に毎日毎朝来ております。
愛しい方を思い出すのは、嬉しくて悲しくて辛くて、泣きたくなるような愛しさが込み上げます。
だから私にとってこの時間が何よりも大事。
ここに来た後は、気持ちが溢れて笑顔がぎこちなくて、そんな私を皆が心配してくれていることは身に染みて分かってはいるけれど、ここに来ることは止められない。
父も母も兄弟達も誰も、行くなとは言わない。皆の優しさに甘えている自覚はあるけれど、私はここに来る。
それが私を私として保つ為に必要なことだから。
黙祷を捧げ、心を落ち着かせるように深く深呼吸をする。瞑っていた瞳を開き、最後に愛しい方を想い笑顔を送る。
振り返れば、二人の護衛が静かに佇み待っていた。
勇者と神官の親友がいるときは彼等と三人で来るけれど、今は魔物討伐の依頼を受けて皇都を離れている。私は一人では皇都を離れられないから、一人の時はこの二人が一緒についてきてくれる。
カミラ・フォウス・フィンランディ
キース=ウィレア・トラン・ディザーレウェハス
フィンランディ公爵家三男と皇家第二皇子。
この二人は特に一緒に居てくれる。忙しくて側にいられない両親や兄の代わりに。二人に感謝の意を込めて小さく頷いてから、近くの木に繋いでいた愛馬に声をかけ跨がります。
二人も何も言わずに頷き返して、馬に乗り追従してきます。
二人は黙ったまま。
私がこの時間を大切にしていることを知っているから。
そのまま皇都の門まで馬をかっぽかっぽと歩かせながら行くと、いつもより騎士の数が多くいた。通常、門の騎士は二人なのに四人いる。私は不思議に思い、キースに視線を送る。
するとキースも知らないのか、眉を寄せて隣のカミラを見る。けれどカミラも知らないらしい。
何かあったのでしょうか?不安に思いながら門へと近づく。
「お帰りなさいませ、レミーディア皇女殿下、キース皇子殿下」
「はい、ただいま戻りました」
「ご苦労様。何かあったのか?」
私の斜め後ろから、キースが問いかけます。
「はっ、皇帝陛下より皇女様皇子様が戻られましたら、謁見の間に来るようにと」
「直ぐにか?」
「戻り次第と仰せです」
「分かった。直ぐに参りますと皇帝陛下にお伝えしてくれ」
騎士は一礼して踵を返し馬に乗り、走り去ります。
私達も急いで皇宮を目指します。
皇宮に着き、馬から降りて近くの騎士に預けて入り、自分の部屋へと行き、侍女に身なりを整えてもらってから謁見の間に足を運ぶ。扉を守る騎士に目線をやれば、恭しく頭を下げ重厚な扉を開ける。
既に私以外の主だった者は集まっていた。キースやカミラも定位置に着いていた。私は玉座に座る父の前で臣下の礼をとる。
「遅くなってしまい申し訳ありません、皇帝陛下」
「よい、まだグレンも帰ってきておらぬでな」
「お兄様、ですか?お兄様に何かあったのですか?」
「いや、グレンに何かあったのではない。ただ昨夜、グレンから緊急通信が来てな、その内容についてだ」
お父様の気配が険しい。何かよからぬ事が起こったに違いありません。
皇太子であるグレンお兄様は、三日ほど前にカーウェン鍾乳洞に精霊石を求めて向かいました。
鍾乳洞は精霊が支配する領域。立ち入ることは本来なら、得策ではありません。
ですが最近、世界中で報告されている奇妙な出来事に対応する為に、精霊石が必要になるかもしれないのです。
それなので、カーウェン鍾乳洞に住む精霊達に敬意を示す為に、皇太子であるお兄様が行かれました。
その地で一体何があったのでしょう…………
その後直ぐに、お兄様がご帰還なさったと連絡が来たので、私は母の隣、第一皇女の席に着き兄の到着を待ちました。
そして兄が謁見の間に入ってきた時、私の心臓は痛いほど跳ねました。
兄の後ろから謁見の間に入ってきた者達は、明らかにこの世界の者ではない色合いと雰囲気をもっている方達。
そう、異世界から召喚された勇者、アカツキ・キリュウ様と同じ気配。
どういうこと?何故、彼等はここにいるの?
皆が驚愕する中、兄が彼等について説明をし、また彼等にも話を聞きました。
やはり彼等は異世界の者でした。突然地面が光り、そこに吸い込まれて気づいたらカーウェン鍾乳洞で倒れていた、と。
彼等は神様によって召喚された者達ではない。
神様は、創造神・セラフィミリム様はこんなことしない方。
ならば神様以外、即ちこの世界に生きる者。
なんの為に?邪神はいない。では異世界の者を召喚して何をさせるつもりだった?ただ召喚してみたかっただけ……………いいえ、そんなことあり得ない。
意味は分からない。けれど一つだけ予感がする。
よくないことが起きる。
この世界の平和が足下から崩れていく、そんな予感。
ただの気のせいならいいけれど……………
けれどもし、この平和を壊そうという者がいるのなら、わたくしはその者を許しません。
わたくしの愛しい方が願った世界を壊すというなら、わたくしが敵になりましょう。
覚悟なさいませ。
わたくしは愛しい方の為ならば、あの方が美しいと言って下さったこの手を、血に染めることも厭いません。
後悔なさいませ。
二度と愚かな妄執に囚われぬよう、その心根叩き潰して差し上げましょう。
叶わぬ祈りを捧げて待っていなさい。
読んでいただいてありがとうございました。
次回は英雄になります。




