第三章 25 こうなりましたとさ!
「そういうのは、大体一巻の中盤くらいで判明するものだけどな」
乃子のことを、さして考えていない様子の紘が、茶化すようにそう言った。
「それはもちろんネタで言っているのよね? 紘様?」
「当り前だろ。だってこの世界は、現実なんだから」
「そ、そうよね、現実よね」
そう。彼らにとって、この世界こそが現実なのであり、本当に生きている世界なのだ。
けれども、乃子は違う。乃子はキャラクター役者として、仕事でこの世界に来たに過ぎない。
だだ、今だけは、メインヒロインとして実際にこの世界の住人でもある。ならば、今だけは、この世界も現実ということだ。
……って、何を言っているんだろうか。
まあ、そんな哲学みたいなことは、アリストテレスさんにでも任せるとしよう。
だってあたしは、今ここにいるんだから。
三人は、それから仲良く帰宅する。乃子と紘がダイニングに向かうと、いつものように継夜がキッチンに立っていた。
「二人ともおかえり……ってぇ!? 紘! どうしたのよその姿!」
「ごめんママ、男に戻っちゃった」
「ええええ!? そんなぁ~」
本当に残念そうな声と表情をする継夜。紘はやっぱりヘコみそうになったが、何とかそれに耐え、はっきりと継夜に対して告げた。
「僕は男に戻っちゃったけど、その代わりにある女の子を連れてきたから」
「えっ!? 本当!?」
「リムル、おいでー」
紘がそう言うと、廊下で待っていたリムルが、ダイニングの中に入ってきた。
【……こんにちはなのん、こーやんのママさん。あーしはリムルというのん】
リムルは継夜に自己紹介をすると、ペコリとお辞儀をした。それから紘が、あとを引き継ぐように言った。
「リムルは、実は悪魔なんだけど、家族にしてもいいよね? ママ?」
紘にリムルは悪魔だということを知らされ、さらに自身の家族にしようと提案された継夜。果たしてその反応は――。
「――もちろんいいわよ! 母さん、新しい女の子が増えて嬉しいわ! しかも悪魔だなんて! 美人で悪魔なんて、一石二鳥すぎるわ! もう大喜びよ!」
見事に予想通りの反応だった。
「ほら言ったでしょ? 絶対歓迎してくれるって」
継夜に歓迎された人物第一号である乃子が、リムルに近寄ってからそう言う。
【……悪魔だけど、心は人間になるのん。だから、だから、これからよろしくお願いしますなのん!】
「何言ってるのよ。あんたの心は、もう人間そのものよ」
「そうだよリムル。リムルはもう人間さ」
そして乃子、紘、継夜の三人は、声を揃えて一緒に言った。
「「「ようこそリムル! 種神家へ!」」」
…………あれ?
これってあたしが、メインのヒロインだったわよね?
これじゃあ、どっちがメインヒロインか分かんないじゃないの!
そして、物語に一旦の区切りがつき。
その世界は、一度眠りにつく。
全ての事象が完全に止まり。
再び動き出すのは、果たしていつか。
それはもちろん、二巻が出る時よ!
これにて、『メインヒロインに物語を丸投げしてみた』、無事終了です!
メインヒロインに物語を丸投げしてみた結果、こうなりましたとさ!




