第三章 20 マリンですわ
「ふぅ……」
ゆっくりと立ち上がった乃子は、一仕事終えたかのように一つ息をつく。
「決まった……!」(んぎもちいいいいぃぃぃぃ!!)
先ほどの連撃を脳内で思い出し、その余韻に乃子は浸っていた。戦闘はまだまだ続いているのにもかかわらず。
『乃子さん、まだ終わっていませんよ。むしろメインバトルがまだ残っています』
冥狐の言う通りである。まだ倒したのはロイドたちの一部だけで、肝心の相手組織の魔術師は、今もなお高台からこちらを見下ろしていた。
「ロイドであたしたちを消耗させて、弱ったところを狙おうってわけね……」
相手の魂胆が分かったところで、乃子は残りのロイドと戦闘を開始した。
そして、それほどしないうちに、全てのロイドは乃子たち四人によって破壊された。
「お見事ですわ! さすがはキウイさんとメロンさん!」
最初にあたしたちを格好良い(以下略)と仰ってくれた人物が、戦場を見渡すようにしてからそう言った。続けて彼女が言う。
「それに、そちらの新顔二人も、なかなか良い動きでしたわ! よろしければ、お名前を訊いても良いかしら!?」
少し考え、乃子と紘ははっきりと名乗りを上げた。
「あたしは、メインヒロインのノコよ!」
「僕は、主人公のコウだ!」
実は特にヒロインとか主人公とか言ったのに意味はない!
「ノコさんにコウさん。とても良いお名前ですわ! ……けれど、そちらの味方をしてしまったのが運の尽きですわね」
彼女はそう言って目を細めると、静かに武器を構え、再び言った。
「……あなた方もここで一緒に死んでもらいます」
「御託はいいから、早くかかってきなさいよ。回復しちゃうわよ?」
乃子の煽りのせいかは定かではないが、相手組織の魔術師が高台から跳躍し、こちらのそばへ音もなく着地した。
両者の距離は五メートルほど。
いよいよメインのバトルが開始された。
「あたしの相手はあんた? これは運命を感じるわね!」
「あなたは私が、直々に殺しますわ」
図らずも一対一の構図になる。乃子の相手は、最初に格好良いお出(以下略)と言ってくれた彼女だった。彼女はなかなかに良い体をしており、服の上からでも分かるバストと、モデルのような長い脚をしていた。
「あんた名前は?」
「マリンです――わ!」
マリンは名乗ると同時に猛スピードで距離を詰めてくる。彼女が持っている武器は、細身の剣とほとんど棒のような杖という組み合わせのものだった。右手に剣を、左手に杖を持っている。
「はあッ!!」
「りゃあァァッ!!」
マリンの袈裟斬りを乃子は正面から受けて立ち、曲刀でその一撃を受け止めた。乃子の曲刀とマリンの剣が交錯し、剣戟の音が響く。
続けざまにマリンは水平に斬り払った。しかしそれも、乃子は曲刀で華麗に防ぐ。今度は受け止めるのではなく、受け流すパリィで防いでみせた。間を置かずに鋭い突きが飛んでくる。細身の剣は斬撃だけではなく、軽さを活かした素早い刺突がある分、攻撃方法にバリエーションが生まれて非常に厄介である。
「突きはNGぃ!」
乃子はそう叫びながら体を横に捻り、ギリギリのところで何とかその刺突をかわした。そのまま大きくバックステップをし、一度マリンから距離を取る。
「ねぇマリン、あんた何で魔術師なんかやってるのよ?」
「あなたみたいな人を殺すためですわ!」
そう言ってマリンは魔力射撃を放ちながら、再度接近してきた。
「何とキレのある返しっ!」
乃子も負けじと射撃を返しながら、反撃の姿勢を取る。マリンの縦斬りを受け流し、横薙ぎを受け止め、突きを避ける。そして右からの斜め斬り上げを曲刀で受け止めると、左手の杖を強く突き出し、マリンのお腹に一撃をお見舞いした。
「――っぐ!」
思わぬ攻撃を腹部に受けたマリンは、一瞬動きを止める。
「ちっ!」
今回はマリンが後ろに下がって距離を取る版だった。まだまだフィニッシュとはいかないわよ! もっともっと楽しまなくちゃ! この戦いをね!
『楽しむだけの実力があるから、余計にタチが悪いんですよねぇ』
冥狐も認めるバトルセンス! あたしと結婚したくなったでしょ!?
「あんたいい体してるんだから、魔術師なんかやめてグラビアアイドルでもやればいいのに」
「何です? もしかして、羨ましいんですか?」
「な! ばっ、バーロー! 違うわい!」
図星を紛らわすかのように、これまで受け身だった乃子が、自分からマリンに向かって突進していった。その途中で武器を薙刀モードに変形させる。曲刀の柄が杖の上部と連結し、杖の棒の部分がジャキッ! と勢いよく伸びる。




