第三章 17 魔術と魔力射撃
「要はこうでしょ?」
言葉とともに、キウイの生み出した炎の隣に新たな炎を出現させる。そっくりな、瓜二つになった炎を見て、キウイは感心したかのように言った。
「すごいです乃子さん! いきなり完璧な炎を出せるなんて!」
「さすのこ、でしょ?」
『さすのこ! さすのこ!』
分かってるとは思うけど、さすが乃子さん、の略だからね?
「僕は杖なんてないんですが、どうすればいいんですか?」
「大丈夫です、杖は魔術の行使に直接は関係ありませんから。イメージだけで問題ないです」
「そうなんだ。分かりました」
紘はダブルファイアの隣に、さらに炎を発生させようとしているようである。しかし、いざそこに発生したのは、炎と呼べるようなものではなかった。
それは言葉ではかなり表しにくい、何というか、オレンジ色のゆらゆらとしたものであった。少なくともパッと見では、炎に見えないかもしれない。
「あれ?」
紘が首を傾げる。どうして上手くいっていないのか、分からない顔をしていた。
「……キウイさん、もしかして僕、才能ないですか……?」
「才能というより、まだ慣れていないだけだと思います。人は初めから泳げないですよね? それと同じです。乃子さんが特殊なのですよ」
乃子はドヤ顔を見せつけた!
「それに、紘さんはまだ良い方ですよ。メロンなんて、三か月経った今でもこれよりひどいレベルですから」
あの子は努力が嫌いなんですよね……、とキウイは独り言のように呟く。それと一緒に、彼女は魔術で水を生み出して、未だに地面で燃えている二つの炎と、一つの橙色のゆらゆらをその水で消した。
「何にせよ、お二人とも魔術が使える人で良かったです」
「なーんか含みのある言い方なんだけど。もし使えなかったどうしてたのよ?」
「魔術的体質を無理矢理発現させる薬品を使う予定でした」
「……それ、絶対何か人体に悪影響あるでしょ?」
「……ノーコメントでいいですか?」
「うわぁ、やっぱり。まあ別にいいけどさ」
「では、それはいいということで。置いておいて、次にいきましょうか」
薬品うんぬんは闇の底に消え、キウイ先生の授業はステップ2に入る。
「魔術をもっと簡略化して、戦闘用に転化させたのが魔力射撃というものです。昔はこれも、先にイメージが必要だったのですが、戦闘中にいちいちイメージするのは非効率的で、とても面倒でした」
確かに、戦闘中には面倒くさそうではある。あたしもそう思う。
「ですので、近頃では武器自体に魔力射撃用の機構を組み込むことで、イメージの工程を省略しています。これにより、『撃つ』という意思さえさればすぐにでも発射可能となりました。……では、実際にやってみますね」
キウイは杖を水平に構えると、そこら辺の壁に対して狙いを定めた。
次の瞬間、ほぼ無音のままで、杖の先から弾丸のような白い超小型のビームが発射された。
それは一瞬もかからない速さで壁に衝突し、壁に小さな穴を穿った。キウイは乃子たちに向き直ると話を続ける。
「これが魔力射撃です。まるで本物の銃弾みたいですよね」
「た、確かに、炎で焼き殺すよりも、ずっと効果的ね……」
「それに加えて魔力の消費量も、炎や水を出すなんかより、格段に少なくて済みますし」
それから乃子と紘は、キウイの指導のもと、着々と翌日へ向けての鍛錬を積んでいった。
そして翌日がやってくる――。
えー、皆様。おはようございます。
脚本家の人に、そろそろ尺のことを言われ始めたので、これからエンドに向けて巻いていきたいと思います。くるくるっとね。
「お二人とも、用意と覚悟はいいですか?」
キウイが真剣な眼差しで、ガラス扉の向こう側を見据えながら言った。
「いいわ」
「完了しています」
乃子と紘が同じく扉の向こう側を見つめながら、落ち着いたように返事をする。手には昨日貸してもらった、戦いのための武器がしっかりと握られている。
「あーあ、面倒くさいなー。さっさと終わらせよーっと」
メロンが眠そうな目を擦りながらそう呟く。彼女だけは戦闘前だというのに、緊張一つすらしていない。恐れていないのか、はたまた自分が負けることなどまったく考えていないのか、いずれにせよかなり余裕そうである。
『このタイプのキャラはいわゆる、やる気のない天才ですね! 私には分かりますよ!』
(そうね、あたしもそう思うわ)
『おそらく矢のように敵に突っ込んでいって、無双しますよたぶん』
(あたしの見せ場がなくならないか心配だわ)
『それは頑張り次第でしょうねぇ』
まもなくして、ガラス扉の奥を見張っていたキウイが声を発した。
「来ました! 行きましょう!」
その声とともに、四人全員が前へと踏み出す。アジトのビルのロビーを歩き出した四人は、そのままガラスの自動ドアを潜り、確かな足取りで外へ出た。




