第三章 3 リムル登場
紘が話を続ける。
「……それで、みんなと話をしたいそうだ。その悪魔が」
「話すのは構わないけど、どうやって? もしかして出てきてくれるの?」
乃子が紘の顔を見ながらそう言う。紘はおもむろに右手を持ち上げると、人差し指で自身の口を指差した。そしてそれから再び言った。
「何でも、僕の口を借りて自分の言葉を伝えるんだってさ」
それを聞いたレミアが、椅子に深く寄り掛かりながら腕を組みつつ言う。
「いいですわ、話してみましょう。おそらく危険もないですし、わたくしが許可しますわ」
「じゃあ悪魔にそう伝えるけど、いいよな?」
紘の確認に、全員が頷いた。紘はそれを見ると、またも目を閉じる。
「………………」
今、悪魔に会話の了承を伝えているのだろう。さて、どうなるのやら。
【…………あー】
紘が目を閉じたまま声を漏らした。
【……あー、あー。聞こえてるん】
紘は目を閉じたまま、今度ははっきりと言葉を発した。目を開けないのは、悪魔の言葉と自身の言葉を分かりやすくするためだろう。目を閉じている今は、悪魔の方の言葉ということな
んだろうな、たぶんだけど。
「聞こえてるわよ、悪魔さん」
乃子が一番乗りで悪魔と会話をする。
【こんにちはなの、皆さん。悪魔なのん。あーしの名前はリムルと言うのん】
この少しの言葉で分かる、とてつもないキャラクターのニオイ。
悪魔――リムルは、何というか個性的な喋り方をする子だった。あたしとしては、こういう色物系は大好きなんだけど。現実にはありえないような感じが好きなのよね。
「リムル、いきなり訊くけど、あんたが紘を女の子にしたの?」
あたしが訊きたいのは、まずそれだった。それがどちらかによって、今後の物語の展開が変わってくる可能性があるからだ。いや、可能性どころか間違いなく変わると思う。
【いんや、あーしじゃないのん。勝手に変わったんだよん】
「本当に? 嘘ついてないわよね?」
【あーしは嘘はつかないのん。悪魔だけどんね。それに、あーしも体の中から出られなくて困惑してるのん。まー、この子の中は居心地がいいから、出なくてもいいんだけどねん】
嘘はついていない……わね。この手のキャラクターは嘘をつかないと、相場が決まってもいるし。まあ仮に嘘をつかれたとしても、ギャグ作品のこの物語にはあまり関係ないからいいんだけどね。
さて、リムルが言うには、紘が女の子になったのはまったくの偶然――イレギュラーのせいであるらしい。だとすると、リムルを説き伏せて紘を男に戻すという展開はないわけだ。
とはいえ、それはそれで逆にやりやすい。女の子になった理由がないということは、当然どのように解決してもよいということだからである。
「ねぇ、リムル。あんた紘に対して他に何かできないの?」
乃子は重ねて質問をした。
【何かって何なのん? 具体的に言ってほしいのん】
「あー、つまり、紘の口を借りられるってことは、他にも何か紘の体に対してできないのかなってことよ。体をちょちょいと弄るとかさ。あとは悪魔的なパワーを分け与えたりとか」
【……んー、できるよん。例えば――】
そうリムルが言った瞬間、紘の頭の周辺に紫色の電流がバリッと走った。次の瞬間には、何と紘の髪の毛が銀色に変わっていた。しかも背中まで伸びるロングヘアーになっている。
【――例えば、こういうことん?】
「そうそう、そういうことよ。何だ、本当にできるのね」
乃子がリムルに言葉を返したあとに、珍しく優理香が口を開いて言った。
「それなら、紘さんに女子の制服を着せてあげましょうよ。このまま男物の制服では、何だか可哀想ですし。ね?」
優理香のそのいきなりの台詞に、紘はすぐに目を開けて自身の言葉で抗議をした。
「いやいや、そんなことしなくていいですって! そもそも、いろいろ弄れるのは僕の体だけで、服装なんて弄れないでしょう!? 悪魔といえどもさすがに!」
ちょっと紘! それはフラグよ!
【できるよん「】マジかよ!?」
ほらぁ! やっぱりフラグじゃないの! 主人公の鑑だけど!
というか、リムルの言葉と紘の言葉が混じってややこしいわね。……この今だけだから、まあいっか。さすがに何度も何度も、こんなことにはならないでしょうし。
【制服を女の子用にすればいいのん?「】いや、しなくていい! しなくていいから!」
「私からぜひお願いします!」
【分かったのん。やるのん「】優理香さん!? そんなキャラだったっけ!?」
紘が驚いたリアクションを取っていると、再び彼の体――今度は文字通り全身に、紫色の電流が走った。すると、本当に紘の制服が男物から女物にクラスチェンジした。ネクタイがリボンに、ズボンがスカートに、スポーツソックスがニーハイソックスにチェンジしている。
「わああああぁぁぁぁ!! うわああああぁぁぁぁ!!」
「喚かないの! 女でしょ!」
乃子は即座にそうツッコミを入れる。
「心はまだ男だよ! てか何でパンツまで女の子用になってるんだよ! あとブラジャーもついてる感じがするし!」
【それはあーしからのおまけなのん。ありがたく受け取ってほしいのん】
「グッジョブですリムルさん! あーいいです! とてもいいですよ!」
優理香がおかしなテンションになっている。ほんとにキャラ変わってない?




