第二章 22 まだR‐17・5だから
すでに重症(おそらく)な状態で、最初のように勢いよく飛べないのでは、追いかけっこになるはずもない。もはやただの動く的になっていた。
乃子はシューターを撃つ。
「ぐひぃ……! まだいけりゅう……!」
さらに撃つ。
「あ……へ……。やっぴゃりダメかみょ……」
まだ撃つ。
「うくっ……んひぃ……! あー……ああーっ……!」
もうほとんど喘ぎ声なんですけど。ただの喘ぎ声なんですけど。
「こ、これ一般向けライトノベルよね? R‐18超えちゃってないこれ?」
『ま、まだR‐17・5だから大丈夫ですよ。白い液体をかけられて喘いでるだけですし」
ロリ悪魔は度重なるシューターの放水を浴び、全身がカレピヌでぐちゃぐちゃのぬちょぬちょになっていた。追いかけるように撃つという射撃の方向的に、特に背面の方が前面よりも大変なことになっている。
彼女は手足をだらんと垂らした格好で、限りなくのろのろとした速度だったが、今もなお空中を飛んでいた。もはや気力だけで生き延びて飛んでいるかのような状態である。
しかし再度乃子による、無情なまでの攻撃が行われる。カレピヌはロリ悪魔の細い腰にどばどばと命中し、その白く汚れた部分をさらに増量させた。
「んほぉおおおっ……! おごぉおおおおっ……!」
喘ぎ声を超えた叫びを見せ、ついにロリ悪魔はゆっくりと降下・墜落をし始めた。ゆらゆらと落下していくその下には、まるで最後の舞台だとでも言うかのように、学校の屋上が存在していた。
どさりと倒れ込むようにして、学校の屋上に彼女は墜落する。体を横向きにして、くの字に曲げた姿勢をしながら、荒い呼吸を何度も繰り返していた。
「いよっと!」
乃子は掛け声とともに、ボードを屋上で停止させた。そしてボードから降りると、徒歩でロリ悪魔のもとへ向かっていく。
彼女のそばまで歩みを進め、乃子はその白にまみれた彼女の姿を見下ろした。
「……あーっ……! ふぅ……ひぃ……! ……んぉおお……!」
「……最期に、何か言うことはあるかしら」
乃子は絶えず喘いでいるロリ悪魔に対して、優しくもはっきりとそう言う。
「……はや……く、おわ……ら……せて……。お……ねが……い…………」
彼女は途切れ途切れの掠れた声を絞り出して、そう懇願するように乃子に言った。
「……分かったわ」
乃子は頷くと、少しロリ悪魔から距離を取った。それから何も言わずにシューターを構え、一切躊躇わずに右手でそのトリガーを引き絞った。
頭のてっぺんから足のつま先までカレピヌがかかるように、シューターを幾度となく左右に動かす。彼女の体はさらに白く汚れて白く染まり、彼女の体から垂れ落ちたカレピヌによって、屋上の床にも白く汚れた部分が広がっていた。
「……あああああっ! ……あああああっ……あああああああああっ!」
ロリ悪魔の一際大きな喘ぎ声を聞き、乃子はシューターを撃つ手を止めた。
そして数瞬後――。
「あああああああああああああああああああああぁぁぁっっっ――――――――――ッ!!」
今までで一番大きな叫び声を上げ、ロリ悪魔はビクンッと痙攣すると。
その体を、眩しさを感じるほどの光に変化させた。
そしてその光は、瞬く間に無数の粒子のように分裂し。
その粒子たちは吹かれた風に混ざるように、空中に溶けて消えていった。
――彼女の姿、形、存在は、もうどこにもなくなっていた。
「ふぅ……」
あたしはロリ子ちゃんの消えた場所を見つめながら、一つ息をついた。
「悪魔退治完了っと。なかなか楽しかったわよ」
だがすぐに、乃子はくるりとその場所に背を向ける。そして格好つけるように、後ろを向いたまま彼女に対して言葉を続けた。
「ありがとうロリ子ちゃん。また来世で会いましょう」
それからスタスタと、ボードに向かって歩き出す。もう心残りはないかというように、振り返ることは一度もなかった。乃子はボードに飛び乗ると、高度を上げて辺りをきょろきょろと見回した。
「さてと、紘はどこかしら紘は」
乃子が捜しているのは、一応この物語の主人公・種神紘である。彼には悪魔退治が始まる前に、あることを仕掛けておいた。そろそろ仕掛けが効果を発動している頃合いだろう。
「とりあえず、紘さんが担当している10時の方向に移動しながら探しましょうよ」
「そうね、そうしましょうか。……えーっと、基地があそこら辺にあって、10時の方向だから……」
『あっちですよ』
冥狐が乃子よりも先に、目指している方向を指差した。
「……よし行きましょう」
乃子はそう言いながら、上げかけていた左手をそっと下ろした。冥狐に気づかれないように、そっと。
『何してるんです? 行きましょうよ』
「分かってるって」
乃子はボードを傾けると、紘を探すために再度空中を進み始めた。




