第二章 23 種神紘、女になる
――しばらくして。
『……うーん、やっぱり見当たりませんねー』
ある程度場所を変えつつ何度も辺りを見回してみるが、紘の姿は見つけられなかった。
「おーい紘おおおおおぉぉぉぉぉっ!! どこにいるのよおおおおおぉぉぉぉぉ―――っ!!」
乃子は大きく息を吸い込み、精一杯の声量で彼を呼んだ。
しかし返事は来ない。無論、向こうからやって来ることもなかった。もう! あたしのラヴコールを無視するなんて、いけないダーリンなんだからぁ!
「ちっ、どこにいるのよあいつ……」
乃子がぼやくように言う。
――すると、その瞬間。
「――うわぁああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――ッ!?」
どこからともかく、誰かの悲鳴というか叫び声が聞こえてきた。声室は高めなので、おそらく女性だろう。
だが、一体誰だ? レミアたち三人が、こんな素人のような慌てた叫び声を上げるはずもない。紘は男だからたぶん違うと思うし、一般生徒の誰かだろうか? 一般生徒が何かに巻き込まれでもしたのだろうか?
と、乃子がそんなふうに考えていると――。
「僕の体がああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――ッ!? 種神家長男の体があああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――ッ!?」
…………僕? …………種神家長男?
What!?
「……もしかして、紘なの……?」
『もしかしなくてもそうですよ! 行きましょうこっちです!』
冥狐に先導され、声がした方へと向かう。
種神家長男で僕の体が、ということは、あの声の主は紘ということで間違いない。だがその声は、どう聞いても女子のそれにしか聞こえなかった。どう考えても矛盾している。
「どうなってるの……?」
内心で首を傾げながら、急いでボードを走らせた。
それなりに進み、それから校舎の角を左に曲がると、地面に立っている紘の後姿が視界に入った。ボードが近くに止まっており、バックパックも背負っているが、シューターからは両手を離していた。手を離れたシューターは、ぶらんと地面付近に垂れ下がっている。
「紘! どうしたのよ!?」
乃子は彼に声を掛けながら、すぐにそばまでボードを進ませる。ボードを止めて地面に飛び降り、そのまま手が届きそうなくらいまで近づく。
「……どうしたの、叫び声なんか上げて?」
「ぼ、僕……――」
かすかに震えたような声で、紘が口を開いた。
「………………」
しかし、肝心の次の言葉が紡がれない。
「もう、何なのよ?」
じれったくなって、乃子は彼の正面側に回り込んだ。
それと同時に、紘がようやく再び口を開いて言った。
「――僕……女になったみたいだ…………」
…………えっ?




