第二章 12 カレピヌ
「悪魔を退治する方法。それは意外に単純なのですわ。――ところで広院乃子、あなたはカレピヌはお好きかしら? もちろん知っていますわよね?」
「カレピヌ? ……嫌いじゃないけど?」
カレピヌとは、世界的に有名な白くて甘い飲み物のことである。原液を水で薄めて飲むタイプが主流だが、すでに薄められた状態のお手軽タイプのものも存在する。また、炭酸水で薄めたソーダタイプもあったり、原液はかき氷のシロップに使われたりなど、とても派生が広いことでも有名である。ちなみにあたしは、ちょっと濃いめに作った、甘すぎるくらいのものが好きだったりする。
「そのカレピヌが何なのよ。悪魔退治と関係あ……まさか!」
まさか! まさか! いやそんなはずは!
「悪魔退治の方法、それは―――」
レミアが、言う。
「――そのカレピヌをぶっかける……もとい浴びせ掛けることよ!」
ほんとにそうだったあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――っ!!
「へ、へぇー、そうなんだ。本当に、た、単純なのね」
内心で興奮しすぎて、あたしは不自然にも言葉が詰まってしまう。
だがそれも仕方のないことなのよ! だって、白いねばねばしたものをぶっかけるのよ! ぶっかけるんですよ奥さん! そんなの全人類の夢でしょう!?
――あ、そうだ! いいことを思いついたわ! ……ふへへ。
(冥狐、出てくる悪魔は全て女の子にしましょう! 人型の美少女悪魔にしましょう!)
『うわぁ、発想が中学生男子みたいですよ乃子さん』
(どう思われようと構わないわ! あたしは全読者が望んでいることを実行するだけよ! なんたってあたしはストーリテラーなんだから!)
『……まあ私も、嫌いではないんですけどね。――はい、変更しておきました』
ああー楽しみになってきた。テンション上がってきちゃうわー。
「どうしましたの広院乃子? 口元が変な笑い方をしておりますわよ?」
「! な、何でもないわよ。話を続けて」
乃子は慌てて口元を手で隠しながら言う。レミアはわずかに眉をひそめたが、特に気にするようなこともなく、話を再開した。
「この機械の中にはね、ぶっかけるために調整されたカレピヌが入っているの。それで、肝心のカレピヌを飛ばすための装備なのですけれど……」
レミアは大型の機械類の前から右に移動し、その近くの小型の装備が置かれてる場所で再度立ち止まった。それからアメリカのホームセンターに売られているライフル銃のごとく、壁に掛けられたあるものを手に取る。
それは、初めてここに来た時にも思った、未来的でSF的な形をした銃のようなものだった。銀色を基調にしたその銃のフォルムは、現実で言うところのアサルトライフルに一番近い感じである。
レミアはこちらにその銃を見せながら、説明するように口を開く。
「これはCS‐04。悪魔退治のための、今現在最もスタンダードなシューターですわ。わたくしたちはこれを使って悪魔退治をするのです」
「いまいちどんな感じか掴めないんだけど、水鉄砲みたいに発射するってことでいいの?」
「その認識で構いませんわ。とはいえ、実際に見てもらった方が早いでしょう」
レミアはそう言って身を屈め、何やら準備をし始めた。初めに、メカニカルなリュックサック――もといバックパックを背負い、固定用の腰ベルトをカチリとつける。それから、これまたメカメカしいホースのようなものを、バックパックの右側下部に装着し、そしてその反対側を今度はCS‐04銃の下部に装着した。
レミアがCS‐04――シューターを両手で持ってこちらを向く。
「これが、しっかりと装備をした時の状態ですわ。背中のバックパックには、発射用カレピヌが超効率貯蔵でストックされていまして、それをホースでシューターへ装填、そしてシューターで高速弾として射出するという流れになっているのですわ」
「へぇー、格好いいじゃない」
「それでは実際に撃って見せましょうか。こちらへ来てくださる?」
レミアの言葉に従って、乃子と紘は彼女のそばへと移動した。レミアは近くにあった窓を全開にすると、外に向かってシューターを構えた。……が。
「……わたくしの可愛らしい身長では、高さが足りませんわね」
おそらく、窓の外の木か何かを狙おうとしたのだろうが、レミアの身長では外の目標物を上から下へ狙うことはできそうになかった。
というのも、この教室は校舎の三階にあるため、地上に生えている木を狙うには下へ見下ろすようにする必要があるのだが、レミアの七歳児の身長では顔がやっと窓の位置にくるので精一杯で、とても下へ狙うなんてことはできそうになかったからである。
「広院乃子、あなたが代わりに撃ってみなさい」
考えた末に、レミアはそう言ってシューターを乃子に差し出してくる。
「え? いいの?」
シューターを受け取りながらも、乃子は驚いたように聞き返す。




