#12方舟
偵察機の中にあったデータ。
それが示していた場所…それは、テッラアリダと呼ばれる山の頂だった。
「テッラアリダ?」
リアナは語る。
「シエラたちも、両親から聞いたことあるはず。
昔、大洪水があって…当時の人たちは、空飛ぶ方舟に乗って助かったって話。水が引いた時、最初に着陸した場所がそのテッラアリダよ。」
「行ったことはないですが…今でも方舟がそこにあると言われています。」
「太古の方舟…もしかしてそれも、旧文明の遺産かもしれない!」
シエラ達鉄戦車隊とカイトはそこに向かうことにした。
山頂に到達した一行が目にしたのは、巨大な戦艦だった。
カイトはそれに見覚えがあった。
「スフィア・ギアだ…」
「スフィア・ギア?」
シエラが問う。
「俺達旧人類が乗ってきた宇宙船の一部だ。人々の居住するハビタット・スフィアと、このスフィア・ギアがドッキングして一つの宇宙船として運用されていた。」
「でもよ、それならそのハビタット・スフィアとやらはどこにあるんだ?」
サイモンはそのことが疑問のようだ。
「真相とやらはこの中にあるやもしれんな」
ルークの一言を聞いて、一同は中へと入ることにした。
DX-Mのホバーで上昇し、甲板に着地する。
意外にもハッチは開いていた。
つまり、誰かが先にここに訪れた…若しくはここにまだいるということだ。
サイモンが先頭・シエラとルークを左右に、真中にカイトという陣形で進む。
「そこまで警戒しなくても…」
「相手の人数が私たちより多いかもしれないんですよ?警戒して損はないです!」
「"石橋は叩いて渡れ"というからな…」
「何だそれ?ルーク、ここは橋じゃないぞ」
「"ことわざ"だ。サイモン、お前はもっと書を読むべきだ」
廊下を歩いた先にあったのは、艦橋だった。
彼らが入ってきたハッチは緊急脱出用のものだったようだ。
「そうか…この艦のコンピュータの中に空白の千年の答えがあるかもしれない」
ソフィアを起動し、周囲を解析する。
『間違いありません。これはスフィアシップの戦艦部分:スフィア・ギア。そしてここはそのブリッジです』
「起動することはできるか?」
『デバイスをかざしてください。』
カイトは辺りを見渡す。
舵輪のような形状の装置にリーダーがある。
そこに腕のデバイスをかざす。
空中に、文字が投影される。
[License Activation…success.
Kite Drachen…Position: Mechanic.]
スフィア・ギアの整備士の中でも、エネルギー伝達系統を整備する人員にのみ与えられた権限。
それがエンジンの操作権だ。カイトもその一員だった。
表示されたダイアグラムが反応炉の起動とエネルギー伝達を示す。
徐々に周囲の機器に光が灯っていく。
シエラたちは固唾を飲んでいた。
「すげぇ…」
「千年も野ざらしだったのに!」
ソフィアが解説する
『宇宙を航行できる艦ですから…耐久性は高く設計されています』
「宇宙?」
「この星の外のことだよ。俺達は、そこを旅して来た。ソフィア、何か手がかりになるデータはあるか?」
『更新日時を確認します』
しばらくして周囲に映像が投影される。
ブリッジ内部が巨大なスクリーンとなった。
最初に映し出されたのは、軍服の男性と緑髪で長耳、つまりシエラ達と同じ特徴を持つ女性。
「アンドリュー艦長!」
軍服の男性はこの艦の艦長にして司令官のアンドリューだった。彼は、カイトのような軍人でない人物にも分け隔てなく接する人物だった。
アンドリューが話す。
「モリー女史、もう少し待ってもらえないだろうか…」
モリーと呼ばれた女性は、声を荒げた。
「いつまで虐げられるのです!?私たちはただ…普通の人と同じ権利がほしいだけなのに!こちらにはこの艦もあるのですから、こうなったら武力に訴えて…」
「待ってください!」
今度はアンドリューが叫ぶ。
「内々で争っていては、再び滅びに近づいてしまう…今度こそ説得してみせますから…」
その声にカイトの知る艦長の威厳はなく、自身の意思に意思を持てないようだった。
シエラが驚く。
「耳の短い人々と私達の先祖は争っていたのですか!?」
ルークは冷静に答える。
「そもそも我々とカイト殿は異なる祖を持っていたようだな。」
場面は変わり、オペレーターたちが忙しなく動き回っている。機器類は警告を発し、緊迫した雰囲気が伝わってくる。
「艦長、だめです!ハビタット・スフィアと連絡が取れません!」
「結局このような結果を辿るのか!」
アンドリューがデスクを叩く
ブリッジの窓から見える景色は曇天。心なしかセレネが普段より大きく見える。
「依然としてハビタット・スフィアは接近状態です!」
「避難民の搭載はまだか!?」
ブリッジに船員の一人が走り込んでくる。
「避難民の搭載、完了しました!」
「よし!離陸開始!」
水面に波紋が広がり、駆動音を響かせる。
避難民を載せたスフィア・ギアは離陸した。
「まさか、セレネはハビタット・スフィアなのか!?」
「ご名答。」
その問いに答えたのはシエラでもルークでも、ましてやサイモンでもなかった。
「誰だ!?」
振り向くと、通路の壁に寄りかかり腕組みをする人物がいた。黒い衣服を纏い、顔に付けた仮面までも黒。銀色を帯びた長髪だけが浮いて見える。
「庭師、とでも呼ぶといい。」
仮面に仕込まれたボイスチェンジャーで加工されたその声は、漆黒のHVからの通信と同一のものだった。




