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槍の天才

一日目の午後、槍部門の試合が始まった。

戦ではリーチの長い槍はとても重要な役割を持っている。その為、長く大きな槍を自分の一部のように振り回すセンスと筋力が必要となる。

がっちりと体格の良い者の多い中で、一際異彩を放っている人物がいた。

現騎士団長の息子で、キャサリンの兄のルーカスだ。学園の最終学年の十八歳であり、ここ三年は彼が槍部門の最優秀賞に輝いている。赤い髪に赤い目をしている目つきは鋭いが端正な顔の青年で、縦に大きな身体をしているものの横は他より一回り細く、無駄のない肉食獣の様な体つきをしている。

殺気立っているようで、ひたすらウォーミングアップの為に槍を振っている。


ヴィクトリアは彼が快活で社交的なキャサリンの兄とは、顔の雰囲気以外は似てないなとボケッと試合が始まるのを静かに待っていた。キャサリンは後ろで午前の弓術についてヴィクトリアを褒め称えてくれていて、兄に声援を送らなくて良いのかなぁと思ったが、自分も送らないので妹とはそういうものかと沈黙した。


とうとうルーカスの番になった。試合は始まったと思った途端に終わっていた。

恐ろしいほどの速さで踏み込み槍を振るった様子で、対戦相手は一瞬で場外へ吹き飛ばされていた。

大歓声が沸いたが、ルーカスは喜ぶでもなく平然としている。


「凄いな。騎士団長が手前味噌だが、自分の後を継げる才能を持っていると言っていたが、本当に強い。

鍛錬を欠かさず年々着実に強くなってきている様だ」


感心した様に隣に居たアレクが解説してくれる。  

ヴィクトリアはへーっと思った。正直武人がどこまで強いのかなんて彼女には全く分からない。そして去年の細かい事など覚えていない。

アレックスは去年は剣の試合で優勝しただけあり、武術に詳しいらしい。


なんとなくルーカスが試合後にこちらをチラッと見た気がしたが、気のせいだろうか。キャサリンがこちらにいるので見てきたのかもしれない。

キャサリンもシスコンの兄に悩まされているのかと思うと仲間意識が湧いてきた。ヴィクトリアは美しい唇に笑みを浮かべ同士を激励した。


「キャサリン、お互い頑張りましょう」


その言葉を聞きキャサリンは、武術大会にグッドナー伯爵家親類で唯一出る能力のない自分を気遣ってくれているのだと感動し〝はいっ!!!″と返事をした。

自分はヴィクトリアに救われてもう過去の事は気にしていないと思っていたが、少しこの時期は武術を諦めた時の苦しみを思い出してしまい、心の古傷が痛んでいた事を自覚した。

だがヴィクトリアの声を聞き、しぶとく刺さっていたトゲが取れた気分になりキャサリンは柔らかな笑みで笑った。

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