純血派達による本気の魔法攻撃
「まだだ!」
「………………」
「やめよ、其奴は…………」
「うるさい! 俺に指図できるのは俺だけだ! いけ我が忠実なる僕!」
若い賊は仲間の制止を振り切り再びサソリ型のモンスターをけしかける。
学園ではそれなりの成績を修めている少年。順風満帆の人生に挫折はなかった。
この時までは……。
「やめよ! あれはダークナイトだ!」
ダークナイトと呼ばれた存在は襲い掛かる大サソリを一刀両断。動作は少なく、されどショートソードから繰り出した初撃は装甲の硬い甲殻型をものともしなかった。
「馬鹿な、俺様のモンスターが!」
「もう君は戦力外です、速やかに後退してモンスターと契約し直してください。ゴルディオン公爵家の二五男みたく約無しにはなりたくないでしょ?」
「くそったれ! あんなゴミと一緒にするな!」
戦う意思がないのが分かっていたのだろうか、仲間が退却する間、純血派は警戒するがダークナイトは追撃することはしなかった。ただ不気味にカカシのように立ってこちらの出方を待っているようにも見えた。
「貴方が、最近我が同胞達を襲っている不届き者ですかな? 我らは今の向こう見ずとは違うぞ。彼はレアクラスだがこっちはスーパーレアですからね」
「…………」
「相変わらずだんまりですか。どうです、我らの仲間に加わりませんか? 貴方程の力の持ちは純血以外あり得ないでしょう」
しかし、ダークナイトは答えの代わりに剣の切っ先をこちら側へ向ける。あれだけ硬い物を切断したのに刃こぼれの一つもしていない剣は、まるで妖刀のような妖しい輝きを刀身に滲ましていた。
「それが答えですか。良いでしょう。スーパーレアクラスの力を思い知らせるまで」
リーダーの合図と共に十体ほどのモンスターが敵へ一斉攻撃を仕掛ける。
ダークスライム、ゴーレム、コカトリス、ハーピーなど強力な魔物、全てスーパーレアクラスだ。
しかし、ダークナイトは意図も容易く全て剣で弾き返してくる。無駄な動きは一切ない精錬された剣術の型が、この謎の存在がただ者ではないと告げていた。
「掛かったな!」
賊の一人はその隙に炎魔法を放つ。後続して他の賊達も火水風土の魔法追従。
そう、モンスターによる攻撃は魔法攻撃による集中砲火の布石だった。流石の手練れでもこれは防ぎきれないとリーダーは読む。
純血派は力の限り途切れなく魔法弾を撃ち込んでいく。強力な攻撃に轟音が響き、一面の石畳はめくれ地肌を外に晒した。
「我らに逆らった罰だ。跡形もなく消え去りなさい!」
純血派リーダーは勝ち誇ったようにダークナイトへ告げる。視界が悪い弾幕の中はもう肉片処か灰も残ってないと疑ってなかった。
しかし、視界が晴れてくるとそこには謎の物体がダークナイトを守るように立ちはだかってる。三メートルはある巨体は人の形をとっていたが長く大きな尾が踊っていた。




