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『EMIRI 4』 ~元カレが帰ってくると~  作者: 亨利(ヘンリー)


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エピローグ

「すっきり片付いてよかったわ」

「村木ときっぱり別れるなんて、今の今まで信じられなかったけど」

「う~ん。でもやっぱり、春樹君の存在のほうが大きくなっちゃってるのよ」

「きっといい人なんだろな」

「ていうか、キッドみたいに強引なとこあるのに、案外あたしに無関心なとこあって、見た目にもカッコいい彼じゃないけど、いつもすごく優しいのよ」

「喧嘩もしないくらい?」

「しないなぁ。颯ちゃんとはよく喧嘩して、すぐ仲直りしてたけど、あたしが我慢してきただけだったような気がするの」

「それその通りだと思う。お前って断り切れない性格だろ。我慢してでも相手の言うとおりにするとこあるもんな」

「あんたもそこを利用してきたんでしょ」

「そう言われればその通りだけど。頼りになる存在って言えば許してくれる?」

「お返しがないと許さないわよ」

 キッドは少し笑って、後部座席のカバンを手に取った。

「はい、これ」

 そう言うと、カバンからラッピングされた紙袋を取り出して、恵美莉に差し出した。

「うん?」

「少し遅くなったけど誕生日プレゼント」

「へえ? 珍しい」

「そういや(お前にプレゼント渡したことなかったな)って思ってさ」

「そうね」

「なんか、村木に遠慮してて、今まで渡せなかったんだ」

「それはあたしもそうよ。あたしみたいのがプレゼント渡してたら、あんたの周りの女が変に思うでしょ」

「そうだったかな?」

「うん。あたしだって気を使ってたわ」

「なんかお互い様だったな」

「あんた誕生日、9月よね。そん時はお返しになんか渡すね」

「・・・・・・それこそ気を使ってないか?」

「うん。気を使うなぁ。あたしたちへンな関係よね」

「俺たち同士のことには遠慮するって、そんな付き合いだったんだな」

「今更、誕生日に会うっていうのもヘンだしね」

「ま。俺へのプレゼントは、誕生日の前後6か月間受け付けてるから大丈夫だよ」

「ふふふん、何よそれwww。1年中じゃない。・・・これ開けるよ」

 恵美莉は紙袋のシールをはがして中を覗いた。

「うん。大したもんじゃないけど、アメリカの恋愛小説でさ、最近読んで結構よかったから」

「あんた、恋愛もの読むの?」

「いや、俺の大学の課題で出たんだよ、これ。恋愛はいっぱいするもんだよって内容だけど」

「ペーパーバック(英字小説)か、英語で読んだの?」

「国際コミュニケーション専攻のお前だったら読めるだろ。小説書く余裕ないって言ってたから、ちょっと気分転換にいいんじゃないかと思って」

「うん。ありがとう。言語学だっけ? 専攻。あんたもちゃんと勉強してるのね」

「ああ、やることいっぱいあるよな。平穏な高校時代が懐かしい」

「ホント毎日大変よね。ちょっとは大人になってるのかな」

「うん、お前、随分大人っぽくなったよ」

「あんたもね。こんな車買っちゃって。あ~あ、春樹君にもこんなの買ってほしいのにな」

「ローンは長いんだぞ」

「でも使いまくるんでしょ。女のために」

「はっきり言って、その為の投資だね」

「ふふふふ、あたしには、コルベット乗せてくれる人いるよ」

「え!? そんな高級車? 愛人か?」

「違うよ、仲のいいバーのオーナーさん」

「怪しいなそれ」

「あたしももう、高校ん時とは違うわけよ」

「やっぱり色々あるんだな」

「よねぇ。あたし美人だもん」

「確かに美人になったよな」

 恵美莉はバッグの中の小さな布袋を開け、ルビーのペンダントを取り出して首にかけた。

「これもある人から貰ったの」

「ええ? お前も結構やるじゃん」

 今度は左手を立てて見せて、

「でも、この指輪は春樹君。これだけはずっと着けてるよ」

「う~ん。案外秘密持ってるな」

「キッドも色々あるんでしょ」

「なんでだよ」

「あんたもカッコいいから」

 キッドは恵美莉に初めてこういう言い方をされたので戸惑った。(昔はこんなこと言い合う仲じゃなかったのに)と。

「努力はしてるよ」

「ふ~ん。例えば今日はどんな努力してたの?」

「え? 今日は村木とドライブして・・・」

「昨日もしてたのに?」

「ああ、話すことがいっぱいあって・・・」

「へえ? 二人だけの大事な話に、女の子を連れていったのかなぁ?」

 キッドは、今日の女子たちとのドライブを、どこかで見られてたのかって考えた。

「後部座席から香水の匂いしてんだもん。誰連れてってたのよ?」

「いや、いやいや。こ、後輩だよ。高校の後輩」

「ふ~ん。以外にも楽しく遊んでたのね」

「そんなことないよ」

「じゃ、そのバイザーにぶら下げたサングラス。あざといよ」

「これは今日眩しかったから・・・」

「何、眩しさに“カコ”つけて、“カッコ”つけてるのよ!」

「う? またおもろい表現。お前、絶対小説書いたほうがいいと思うよ」

「誤魔化すな! 楽しんでたんでしょ!」

「ま、ちょっとだけな」

「用心しないと、そんなことからもバレるんだよ」

「お互い大人になったなぁ」

「色々気をつけとかないとね」

「色々気を・・・色気をつける?」

「バカ。それも書かないわよ」

「・・・・・・恵美莉、俺ちょっと心配なことあるんだ」

「あたしは大丈夫よ」

「お前じゃないよ、村木のほう」

「ああ、大丈夫じゃない? 案外、現地人の彼女いるかもよ」

「・・・なんか知ってる?」

 目が宙を舞い、視線が定まらなくなったキッドに、

「ふふん。男って、空気よどませるの上手だから」

 と、恵美莉は落ち着いて言った。

「・・・くうき?」

「それよ、それ。もう、颯ちゃんの肩持たなくったっていいよ」

「別に肩持ってるわけじゃ」

「はいはい。次行ってみよー!」

「あっさりしてるな。もっとしんみり泣き出すのかと思ってたのに」

「男扱いうまくなったでしょ」

「確かに村木の性格を見抜いて、うまく片付けたよな」


 今回はキッドもうまく利用されたのだが、キッド自身にはそんな自覚などまったくなかった。それに対して恵美莉は、彼にこの上ない感謝の気持ちを抱いている。


「あたしも成長したんだから、高校ん時とは違うって言ったでしょ」

「成長?」

「色んな男も知ってるってこと」

「・・・・・・!」

「・・・・・・?」

「な、恵美莉。一回俺と寝てみないか?」

「キッド、殺されたいんか?(睨)」

「いえ、冗談です」



          おわり

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