表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/5

05 依頼受理

 リバルの、ここは広場だろうか、噴水が目立つ場所に僕達は立っていた。人々の往来は都会の喧騒にも似た賑わいを見せ、僕らのような騎士、魔術師、僧侶、武闘家。あれは侍か、とにかく色んな人間がいる。キマイラに乗ったテイマーに見惚れていると、きさくに手を振ってくれた。


 ここでは魔法を行使しても物珍しい光景ではないのだろう。僕らの転移を特に気にする者もなく、人々は通り過ぎていく。


 少し歩くと、商店街と思しき場所に出た。大小様々な店が立ち並び、武器だとか薬だとか食料だとかを売っている。いずれも見知った品で、思わず笑みがこぼれた。そうそう、この怪しげな薬をがぶ飲みして戦いに出向いたものだ。ポーションを売っていた露店で商品を見分していると、店主に声をかけられた。


「あんたら見ない顔だね。旅の人かい?」

「そうだね。リバルに来たのは初めてだ」

「だったら集会所に寄っていくことを進めるよ。どうせ金持ってないんだろ?」

「冷やかしですまない。そこではクエストとか受けられるのかな」

「ああ、最近は特に依頼が多いな。王国騎士様が次々辞めていくから、その分しわ寄せが来てる。うちからも討伐依頼を出してるから、受けてくれると助かるわ」

「その、王国騎士が辞めていくっていうのはどういうことだい」


 さあてなあ、と店主は本当に何も知らないといった様子で両手を上げる。


 ――自国民でさえ知り得ない事情。きな臭いな、と呟くと、


「キョウスケ、それよりクエストだ。集会所に行くぞ」


 ニナは爛々と輝く瞳で集会所の方を見ていた。通りを過ぎた先にそびえ立つ一際大きな建造物、それが集会所のようだ。彼女は戦いたくてうずうずしているのだろう、火力お化けの本性を抑えられずにいる。


 仕方ないな、と僕らは集会所に向かう。人混みをかき分け、何とか辿り着いたその場所はいかにもといった風情で、木造りの内装に丸テーブルと丸太の椅子がいくつも並び、ボードには依頼書がこれでもかと貼られている。そこからお望みのクエストを選んだ者達は、依頼書を持って受付に向かう。二階はそのまま酒場になっていて、賑やかな声が絶えない。


 先程のポーション店の依頼書もあった。薬草を栽培している農場を荒らすモンスターを排除してくれというもの。まずはこれでいいか、とニナに訊くが、


「いや、もっと大物がいい。これとかどうだ」


 その依頼書に、僕は顔をしかめる。ドラゴン討伐。ハルメノスの、Cから始まりSSSを頂点とするクエストの中でもSにランクインする高難度。周囲にいた冒険者と思しき者達からも、流石にそれはと苦言を呈される。


「余程腕に自信があるのかは知らないが、嬢ちゃん、それはやめといた方がいい」


 丸ハゲの大男が言う。


「リバルの僻地に君臨する巨竜。一応討伐対象ではあるが、誰も手を付けたがらない。そんなことも知らないってことは、リバルに来たばかりなんだろう。だったらますますだ、命知らずもいいとこだぜ」

「でも被害が出てんだろ?じゃあ討伐のお題目はあるわけだ」


 大男は呆れたように首を振る。


「兄ちゃん、この子止めてやれよ。仲間なんだろ?」

「生憎と、僕の言葉で止まるようならそもそもこの場にいないんだ」


 そうかい、まあ生きて帰るのが一番だ。そう言って大男は別の依頼書を持って受付に向かった。クエスト失敗も視野に入れろ、ということらしい。


 既に巨竜討伐クエストの依頼書を手に持っていたニナは、そのまま受付に向かう。僕も彼女の後ろにつき、受付の女性の言葉を待つ。


「はい、クエスト受付ですね。こちら、は――失礼ですが、所属ギルドはどちらになりますでしょうか?」


 ギルド。そういえば僕達は二人揃って根無し草、ギルドというものにとんと縁が無かった。援助で加わったギルドはいくつかあるが、そのいずれも既に抜けている。素直にそう伝えると、女性は続けて問う。


「お名前を伺っても?」

「オレはニナ。こっちはキョウスケ」

「――お二人とも冒険者としての功績が確認できませんので、残念ながらこちらのクエストは受理致しかねます。無名の冒険者がSランク以上のクエストを希望される場合、最低でもAランククエストを十回はこなして頂かないと」


 至極当然の話といえばそうである。だが記録がないとはどういうことだろう。僕らがこのゲームを始めた時からそうだが、装備は普段ハルメノスをプレイしている時と同じものだった。その辺り、テスターとして配慮されているものと思っていたが、Sランク以上はまだプレイできないよう設定してあるのだろうか。


 順当にAランクをこなしてもいいが、この調子だとそれだけでテスト期間が終了してしまう。巨竜には挑めないということか。


 ニナを見やると、向こうもこちらを見つめていて、何やら意地の悪い笑みを浮かべている。次いで僕の杖に向き直り、顎をくいっと持ち上げる。一体何のつもり――そういうことか。


 だがそれは、ちょっとあくどい方法だ。確かに原作でも出来得る裏技ではあったが、大抵それを試した輩は後で痛い目を見る。レベルに見合わないクエストを受けたい者が試す策はしかし、このVR世界でも通用するのだろうか。


 失敗したらAランク行くからなと念を押し、僕は杖の先を、魔眼を内包した球体を女性に向ける。


「『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』」


 途端に女性の表情が弛み、目はとろんと虚ろになる。それからしばらく無言になった後、元のきりりとした顔に戻った。


「申し訳ございません、こちらの確認不足でした。巨竜討伐依頼、確かに受理致しました。いってらっしゃいませ、御武運を」


 上手く行ったな、と囁くニナ。これっきりにしてほしいものだ。


 集会所を出る際、例の大男に声をかけられた。どうやら始終を見ていたらしい。


「悪戯は結構だが、死ぬぜ、あんたら」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ