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転生したら白ねこでした。お菓子魔法で異世界の心を癒やします。――もふもふカフェから始まる甘くてやさしい異世界生活――  作者: 明石竜


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第五章 甘い陰謀

御用達の称号を得て、もふもふカフェはますます繁盛した。

注文が殺到し、弟子たちは嬉しい悲鳴を上げている。

「師匠、もっと人手が必要かもしれません」

グレンが提案する。

「そうね。もう二、三人、雇いましょうか」

順調な日々。しかし、その裏で暗い影が動いていた。

「ココ様、大変です!」

ある朝、店に来ると、メイが慌てた様子で報告してきた。

「材料庫が荒らされています!」

駆けつけると、確かに材料庫はめちゃくちゃだった。小麦粉は撒き散らされ、砂糖は水浸し。使い物にならない。

「誰がこんなことを……」

窓が割られており、そこから侵入したらしい。

「衛兵に通報しましょう」

エリザベート嬢が言う。

調査の結果、犯人は見つからなかった。しかし、一週間後、また同じことが起きた。

「これは嫌がらせね」

エリザベート嬢が断言する。

「誰かが、あなたの店を潰そうとしている」

「でも、誰が……」

心当たりは一つしかない。アラン。

しかし、証拠はない。

三度目の事件が起きた時、私は決意した。

「今夜、張り込みをします」

「危ないわよ、ココ」

「でも、犯人を捕まえないと、これが続きます」

夜、店に隠れて待機する。

真夜中過ぎ、物音がした。

窓から人影が侵入してくる。

「そこまでよ!」

灯りをつける。

しかし、そこにいたのはアランではなく、見知らぬ男だった。

「誰だ、お前は!」

男は慌てて逃げようとする。

「待ちなさい!」

追いかけようとしたその時、別の人影が現れた。

「やめなさい」

その声は、アランだった。

「アランさん!?」

「この男は、俺が雇った探偵です」

「探偵?」

「実は、俺の店も同じような被害に遭っていたのです。材料が盗まれたり、嫌がらせを受けたり」

意外な事実だった。

「犯人を探すために、探偵を雇って調査していました。そして、今夜、ついに……」

アランが指差す先に、もう一人の人影があった。

それは、王城の騎士団長、ダリウスだった。

「ダリウス卿!」

「認めよう」

ダリウスは、観念したように話し始めた。

「俺がお前たちの店を狙った。お菓子などという軟弱なものが流行るのが許せなかった」

「なぜそこまで……」

「戦士は強くあるべきだ。甘いものに溺れ、心が弱くなることを、俺は恐れていた」

彼の言葉には、ある種の信念があった。間違っているが、本気だった。

「ダリウス卿、お菓子は人を弱くしません」

私が言う。

「むしろ、疲れた心を癒し、明日への力を与えてくれます。戦う人にこそ、必要なものです」

「戯言を!」

「戯言ではありません。試してみてください」

私はポケットから、小さなクッキーを取り出した。

「これを食べて、それでもお菓子が不要だと思うなら、店を閉めます」

ダリウスは躊躇した。しかし、最終的にクッキーを受け取り、口に運んだ。

その瞬間、彼の表情が変わった。

「これは……」

「美味しいでしょう?」

「……認めたくはないが、確かに、心が軽くなる」

彼は複雑な表情で私を見た。

「……俺の考えは、間違っていたのか」

「間違っていたというより、視野が狭かったのです。強さには、色々な形がある」


「……一つ、言っておく」

 店を出る前、アランが足を止めた。

「お前を疑わせるような空気を作ったのは、

 俺の態度のせいでもある」

 視線を合わせないまま、続ける。

「だが……嫌がらせの件は、俺も被害者だった」

 短く、息を吐いた。

「それだけは、信じてくれ」

 

 その言葉が嘘でないことは、

 彼の表情を見れば、十分に伝わってきた。


 その後、ダリウスは、そのまま衛兵に連行された。


騎士団長という立場でありながら、

民間人の店に対する破壊工作を指示した罪は重い。


後日、正式な裁定が下された。


爵位は剥奪こそ免れたものの、

騎士団長の職は解かれ、謹慎と減俸、

そして王都での一定期間の公的奉仕が命じられた。


「当然の処分ね」


エリザベート嬢は、そう言って静かに頷いた。



それからしばらくして。


朝の仕込みをしていると、

見慣れた鎧姿が、店の前で立ち止まっているのが見えた。

……いや、正確には“元”騎士団長だ。

「入っても、よいだろうか」

以前の威圧感はなく、

どこか居心地の悪そうな顔をしている。

「どうぞ」

彼は無言で席に座り、

おすすめされたクッキーを一枚、口に運んだ。

「……甘すぎる」

そう言ってから、一拍置いて続ける。

「だが……悪くない」

それが、彼の初めての来店だった。

そして、最後でもなかった。


その後、彼はもふもふカフェの常連客になった。

「甘すぎるのは駄目だが、適度な甘さなら悪くない」

そうして、彼なりの妥協点を見つけたらしい。

この事件をきっかけに、アランとの関係も改善した。

「ココ、認めよう」

彼が店を訪ねてきた。

「あなたのお菓子には、俺にないものがある。技術だけでなく、心が込められている」

「アランさんのお菓子も素晴らしいです。伝統と技術の結晶」

お互いの良さを認め合う。

「一緒に、お菓子文化を広めませんか」

私が提案する。

「……いいだろう。ライバルとしてではなく、同志として」

こうして、二つの店は協力関係を築くことになった。


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