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転生したら白ねこでした。お菓子魔法で異世界の心を癒やします。――もふもふカフェから始まる甘くてやさしい異世界生活――  作者: 明石竜


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第二十一章 弟子たちの巣立ち

 南の大陸への旅立ちを前に、私はもう一度、王都に戻った。

 旅立ちの前に、どうしても伝えておきたいことがあった。

 もふもふカフェの厨房に弟子たちを集める。リリア、グレン、ノエルの三人。

 入学当初は何もできなかった三人が、今では立派なお菓子職人になっていた。

「改めて、今日はちゃんと話がしたくて集まってもらいました」

三人が姿勢を正す。

「私、南の大陸へ旅に出ます。どのくらいかかるかは、まだわからない。半年かもしれないし、数年になるかもしれない」

「知ってます」とリリアが言う。

「師匠がそわそわしてるの、ずっと気づいてました」

「気づいてたの?」

「当然です。ずっと一緒にいましたから」

 グレンも頷く。

「俺たちのことは、心配しなくていいですよ。ちゃんとやれます」

 ノエルが微笑む。

「師匠から教わったことは、全部、覚えています」

 胸が熱くなった。

「正式に言います。今日から、三人は正式に独立したお菓子職人です。もふもふカフェは、三人に任せます」

「師匠……」

「リリア、あなたはデコレーションの才能が突出している。あなたにしか作れないケーキを、これからも追求してください」

「はい!」

「グレン、あなたの力強い仕事は、大量生産が必要な場面でこそ輝く。でも、一つ一つへの愛情は忘れないでください」

「わかりました」

「ノエル、魔法とお菓子の融合は、あなたが世界で一番進んでいる。その研究を、学院で未来の職人たちに伝えてください」

「必ず」

 三人が一斉に頭を下げた。

「師匠、ありがとうございました。本当に、ありがとうございました」

 こちらこそ、ありがとう。

 あなたたちに出会えたから、私はここまで来られた。

 その夜、店の二階で最後の食事をした。

 私が作った料理ではなく、リリアが腕を振るった。

「師匠に最後の一品を作らせてください」

 運ばれてきたのは、見慣れない形のケーキだった。

 四層になっていて、それぞれの層に違う色が使われている。

「下の層は師匠が最初に教えてくれたクッキーの味、二層目は師匠と初めて作ったタルト、三層目は旅から持ち帰った月光の果実の味、そして一番上は……」

リリアが照れながら続ける。

「私が考えた、新しい味です。師匠から受け継いだ技術と、私自身のアイデアを合わせた」

「食べていいですか?」

「もちろん」

 一口食べた瞬間、涙が出た。

 美味しかった。

 本当に美味しかった。

「リリア、これ……」

「どうですか?」

「完璧です。私より上手いかもしれない」

「そんなことないです!」

でも、本当だった。

リリアは、私の技術を受け継ぎ、さらにそれを超えようとしていた。

「よかった。あなたたちに伝えられた」

「師匠が教えてくれたから、私たちは今があります」

「あなたたちが頑張ったから、今があるの。それを忘れないで」


 翌朝、早朝の旅立ちだった。

 三人が見送りに来てくれた。

 エリザベート嬢と王女も来てくれていた。

「ココ、また旅に出るのね」

 エリザベート嬢が苦笑する。

「あなたって、本当に落ち着きがないのね」

「褒め言葉として受け取ります」

「もちろんそのつもりよ。行ってらっしゃい。でも、ちゃんと帰ってくること」

「はい」

 王女が、小さな包みを差し出した。

「旅のお守りよ。ココが私を救ってくれた時に使った月光の果実の種。南の大陸で育つかもしれない」

「ありがとうございます、殿下」

「あなたが行くと、世界が変わる。それが好きよ、私」

「いってらっしゃいませ、師匠」

 三人が一斉に頭を下げた。

「必ず帰ってきてください」

「待ってます」

「ただいまって帰ります。絶対に」

 馬車が動き出す。

 窓から手を振ると、三人も手を振り返す。

 エリザベート嬢と王女も振り返してくれる。

 その姿が小さくなっていく。

「いい仲間たちだな」

 レイが言う。

「ええ。自慢の仲間たちです」

新しい道が、前に続いている。


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