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転生したら白ねこでした。お菓子魔法で異世界の心を癒やします。――もふもふカフェから始まる甘くてやさしい異世界生活――  作者: 明石竜


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第十六章 東の大陸・サクラノクニ

東の大陸に上陸すると、そこはこれまで訪れたどの国とも全く異なる世界だった。

建物は木と紙でできており、屋根が反り返っている。人々は着物に似た衣装を身につけ、言葉も聞いたことがないものだった。

「どこかで聞いたことがある気がする……」

私の前世の記憶が揺れた。

これは日本の建築様式に似ている。いや、正確には日本とは違うが、どこか通じるものがある。

「ここは?」

通りかかった人に声をかけようとすると、相手が驚いた顔をして後ずさった。

「あ、ごめんなさい、怖がらせて……」

そこへ、一人の若い女性が近づいてきた。桜色の着物、黒い長髪、穏やかな目。

「旅の方ですか。ここは、サクラノクニのミハラという港町です」

不思議なことに、言葉が通じた。

「あなた、この国の言葉を話せるんですか?」

私は一瞬だけ考えてから、首を振る。


「正確には……最初から、聞き取れてはいたみたいです。ただ――」


少し言葉を選ぶ。


「最近になって、意味や仕組みが、はっきり理解できるようになっただけで」


「へえ」


レイが、感心したように息を漏らす。


「なんだか、便利な体質だな」

「あなたは?」

「私はハナと申します。この町で、和菓子……いえ、餡菓子の店を営んでおります」

「和菓子……!」

思わず興奮した声が出る。

前世の記憶で知っている、あの和菓子に似たものが、この世界にも存在するのか。

「見せてもらえますか?」

ハナに案内されて、小さな店に入る。

そこには、美しい菓子が並んでいた。

練り切り、羊羹、大福、どら焼き……と全く同じではないが、非常によく似た菓子たちが、芸術品のように飾られている。

「綺麗……」

「ありがとうございます。でも、最近は売れなくて困っているんです」

「なぜですか?」

「新しいお菓子が入ってきまして。どこかの国から伝わった、焼き菓子というものです。若い人たちは、みんなそちらに流れてしまって」

悲しそうな顔のハナを見て、私は考えた。

「焼き菓子は私が広めたものかもしれません。でも、あなたの餡菓子も、素晴らしい文化です。どちらかが優れているわけじゃない」

「そう言っていただけると、嬉しいですが……」

「一緒に、新しいお菓子を作りましょう。東西の技術を合わせた、この世界にしかないお菓子を」

ハナは目を輝かせた。

「本当ですか?」

「ぜひ」

こうして、私とハナの共同研究が始まった。

ハナは餡の使い手として卓越した技術を持っていた。豆を煮て、丁寧に裏ごしして作る餡は、滑らかで繊細な甘さだった。

「この技術、本当に素晴らしい」

「ありがとうございます。師匠から受け継いだものです」

「お菓子には、その国の文化が詰まっているんですね」

「そう思います。私たちの餡菓子は、四季を表現します。春は桜、夏は緑、秋は紅葉、冬は雪」

私は感動した。

それは、私がこれまで意識していなかった視点だった。

「お菓子は、自然を映す鏡でもあるんですね」

「はい。食べる人に、季節を感じてほしいのです」

一週間後、最初のコラボレーション菓子が完成した。

名前は「東西夢の菓子」。

外側は焼き菓子の技術で作ったサクサクの生地、内側にはハナの餡をたっぷり包んだもの。さらに、お菓子魔法で彩りを加え、見た目も美しく仕上げた。

「食べてみてください」

店先で試食を配ると、反響は予想以上だった。

「こんな菓子、今まで食べたことない!」

「サクサクとしっとりが一緒になってる!」

「綺麗! 食べるのがもったいないくらい」

特に若い人たちの評判が良く、ハナの店に再び行列ができるようになった。

「ココさん、本当にありがとうございます」

「ハナさんの技術があったからこそです」

レイが横で笑っている。

「二人とも、いい仕事したな」

この国での滞在中、私はサクラノクニの食文化をさらに学んだ。

季節ごとに菓子を変えるという発想、自然の形を菓子に取り入れる美意識、そして、菓子に込める心の深さ。

「私のお菓子魔法は、まだまだ未完成だった」

気づきを得るたびに、私のお菓子は進化していく。

サクラノクニに二ヶ月滞在した後、私たちは次の目的地へ向かうことにした。

「ハナさん、またいつか来ます」

「待っています。今度は、春の桜の季節に来てください」

「はい、必ず」


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