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転生したら白ねこでした。お菓子魔法で異世界の心を癒やします。――もふもふカフェから始まる甘くてやさしい異世界生活――  作者: 明石竜


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第十三章 失われたレシピ

ベルグランドを後にし、私たちは次の国、アルトリアへ向かった。

 アルトリアは、学問と芸術の国として知られている。

「ここなら、お菓子も受け入れられるはずよ」

レイが言う。

しかし、到着早々、意外な事実を知ることになる。

「お菓子の歴史書?」

 図書館の司書が不思議そうに首を傾げる。

「そんなもの、ありませんよ」

「でも、この国は学問の中心地でしょう?」

「確かに。でも、お菓子に関する記録は、ほとんど残っていません。百年前に大火災があって、多くの書物が焼失したんです」

残念だが、仕方ない。

図書館を出ると、レイが提案した。

「なら、現地のお菓子職人を探してみたらどうだ?」

「いいアイデアね」

街を歩き回り、お菓子職人を探す。

しかし、驚いたことに、この国にはお菓子職人がほとんどいなかった。

「パン職人ならいるんですが、お菓子専門の職人は……」

「百年前の大火災で、ギルドが崩壊したそうです」

どこでも同じ答えが返ってくる。

「お菓子文化が、完全に失われている……」

ショックだった。

しかし、諦めるわけにはいかない。

「それなら、私が一から広めるまでよ」

街の中心部に、小さな店を借りた。

「もふもふカフェ・アルトリア支店、開店です」

 初日は、ほとんど客が来なかった。

「お菓子って何?」

「食べられるの?」

人々の反応は冷ややかだった。

「どうしましょう……」

 落ち込んでいると、レイが励ましてくれた。

「焦るな。時間をかければ、わかってくれるさ」

 彼の言葉通り、無料試食を配ることにした。

「どうぞ、食べてみてください」

 最初は警戒していた人々も、一口食べると表情が変わった。

「美味しい!」

「こんなの初めて!」

 口コミで評判が広まり、徐々に客が増えていった。



 一ヶ月後、店は繁盛していた。

 しかし、ある日、不思議な老人が訪ねてきた。

「あなたが、ケットシーのココさんですね」

「はい、そうですが」

「ワシはエドワード。元、お菓子職人です」

「お菓子職人!?」

 思わぬ出会いだった。

「百年前の大火災の時、私はまだ子どもでした。師匠を失い、レシピも焼失しました。

でも、いくつかのレシピは、記憶に残っています」

「教えていただけますか!?」

 エドワードは優しく微笑んだ。

「もちろん。あなたになら、伝えられる」


 彼から、古いレシピを学んだ。

 アルトリア特有のお菓子、地元の材料を使った独特の味。

「これが、この国の伝統菓子『月のタルト』です」

 エドワードが教えてくれたレシピで作ると、不思議な味がした。

甘いけれど、どこか懐かしい。

「美味しい……」

 レイも感動している。

「この味、記憶にある」

「え?」

「子どもの頃、母が作ってくれたような……いや、違うな。でも、どこかで食べたことがある」

 それは、きっと集合的記憶のようなものだ。失われたレシピが、人々の心の奥底に残っている。

 月のタルトを店で販売すると、予想以上の反響があった。

「懐かしい!」

「子どもの頃を思い出す!」

 多くの人が涙を流しながら食べていた。

「エドワードさん、ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ感謝します。失われたと思っていた文化が、あなたによって蘇った」

 エドワードの協力で、他の失われたレシピも復活させた。

「星のクッキー」「虹のマカロン」「光のケーキ」。

 どれも、アルトリアの伝統菓子だった。

「これで、お菓子文化が戻ってきましたね」

「ええ。あなたのおかげです、ココ」

 しかし、エドワードは老齢で、体が弱っていた。


 ある日、彼は病床に伏せた。

「エドワードさん!」

 駆けつけると、彼は穏やかな顔で横たわっていた。

「ココ……来てくれたのですね」

「もちろんです」

「最後に、一つお願いがあります」

「何でも言ってください」

「ワシが死んだら、この国のお菓子文化を守ってください」

「必ず守ります」

 エドワードは微笑んだ。

「ありがとう……これで、安心して眠れます」


 その夜、エドワードは静かに息を引き取った。

 葬儀には、多くの人が集まった。

「エドワードさんのおかげで、私たちはお菓子を取り戻せた」

「彼は英雄だ」

 人々の言葉に、胸が熱くなる。

「エドワードさん、約束は守ります」

 私は、アルトリアにお菓子学校を設立することを決意した。


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