48話 賭けの行方
アイリスが父とバタバタしている頃、カイルは日暮れ近くになり、もうすぐ狼になりそうだな、と思っていた。
変わる前にベッドのそばへ服を置いておこうと準備していた時…
———目の前が瞬間的に真っ白になる
「…⁉︎ここは‼︎」
見渡す限りの白の世界。
見覚えのある場所だった…
(…お久しぶりね?)
そう言いながら、すうっと美しい銀色の狼が現れた。
「フーラ!」
(覚えていてくれたのね、よかった)
「当たり前だ…なんでまた僕をここに?
3年後じゃなかったのか?」
カイルは怪訝な顔で聞いた。
(そうね、あなたがあの子に想われなければそうだったわね…はぁ…本当にとっても残念だわ)
「……」
(2人相思相愛になったら諦めてあげる約束だったでしょ?だから、契約解除に来たのよ?)
「それは…つまり普通の人間に戻してくれるのか?君の番にならなくていいということなんだな⁉︎」
カイルは目を輝かせて晴れやかな表情になる。
(…なんだかちょっと傷つくわね…
でも、そういうことよ。仕方ないから諦めるわ。 無理に番にしてあなたが悲しむのは嫌だもの)
「……ありがとう。戦争を終わらせてくれたのに、何も返してあげられなくて…ごめん」
カイルはそう言って申し訳なさそうな顔をした。
(ふふっ、賭けに負けたんだから仕方ないわ。
でもあなたが死んで魂になったら迎えに来ちゃおうかしら…その時は私のものになってね?)
「死んでからのことまで僕にはわからないよ…」
カイルは苦笑いして言った。
(それもそうね。じゃあ私がまだあなたを好きだったら迎えに来るから、その時また話しましょ?)
「…ははは、任せるよ」
死んだ後のことまでわかるはずのないカイルは、約束はせずに言葉を濁して笑った。
(わかったわ。今日からあなたはもう夜精霊に変わることはないから安心して?それじゃあ、また魂になったら…ね?さようなら…お幸せに)
次の瞬間、カイルは自室に戻っていた。
その後日が沈んでも、もう狼には変わらず、本当に普通の人間に戻れたことをカイルは心から喜んだ。
しかし、あの戦争を終わらせてくれた精霊フーラへの感謝は忘れたくなくて、あの美しい銀色の狼のことをずっと憶えていようと心に誓った。




