46話 好きになるってどんな気持ち?
「…はは…相変わらずすごい行動力だね。
君の父上だなぁって思うよ、ほんと」
そう言ってカイルは苦笑いすると、不安そうな顔でアイリスに聞く。
「アイリス?…本当に婚約しても大丈夫なのかい?」
「…あの…私、本当に好きな人と結婚がしたいと思って山に籠ってました。
…でも考えてみたら、好きとか恋とか、この歳になってお恥ずかしいことながら、全然よくわかっていなくて…
ただ、カイルのことはとても大切で…カイルに幸せになってほしいと思うし、笑った顔をいつも見ていたい…
私があなたを笑わせている時が私の一番の幸せなのよ。
だから、婚約してカイルのそばにいようとしているのは、…きっと自分のため。
結局私は自分のことばかり考えている自分勝手な酷い人間なんです。…ごめんなさい」
アイリスは自分の気持ちが良くわからなくて、その戸惑いにカイルを付き合わせ、振り回していると反省し、肩をすぼめて小さくなった。
カイルは驚いたような顔をしていたが、やがて優しい微笑みに変わると、そんなアイリスのそばへ来てそっと抱きしめ、穏やかにアイリスに話しかけた。
「アイリス?…君は自分の気持ちに名前がつけられなくて困ってるんだね…
…それは確かに恋じゃない。恋はもっとドキドキしたり切なくなったりするものなんだ。
君のそれはね?…愛っていうんだよ。
それは、僕がアイリスを思う気持ちと同じだ。
恋なんてとっくにすっ飛ばしたその先にある感情。
僕もいつだって君の幸せを願っているし、笑ってくれるのを見るのが僕の幸せだ。
同じ気持ちでいてくれて…ありがとう、アイリス」
「…愛…?…今こうされて、私もカイルを抱きしめ返したいと思っているのも?」
「そうだよ?」
「それは…好きっていうこと?」
「愛は好きの最上級だよ?」
「じゃあ…私好きな人と結婚しようとしてるってこと?」
「そうなんじゃない?」
カイルは微笑んでいる。
「……」
アイリスは試しにカイルを抱きしめ返してみる。最初はそっと。もう少し強く抱きしめたくて、ぎゅっと力を入れる。意外と厚い胸に顔を埋めると、とても温かくて、安らかで優しい気持ちになっていく。
「これが…」
自分のわからなかった気持ちをカイルによって言葉に作り替えられ、アイリスは初めて人を好きになるということを自覚できた。
「私…カイルが好きなんだ…カイル!私、あなたが好きなんだわ‼︎」
カイルは少し体を離して、大きな声で大発見をしたように叫ぶアイリスの顔を覗き込むと、
「…はははっ、雰囲気もへったくれもないな、アイリスは」
と、明るく笑った。そして、そのままアイリスの額に自分のおでこをつけると、
「愛してるよ…アイリス」
と、優しく言った。




