後悔先に立たず
やれやれ……。僕の力があっても序盤で退場かい?情けないね君は……。まあいいよ。一度死んだような人間のほうが使い勝手いいからね。
僕が知っている中で、世界は今が一番面白く動いている。あの時よりもね。
君には僕の復活のために生きてもらうよ。この世界を支配しようとするあの偏屈な子供も、僕と君が一緒になればもはや敵ではない。
さあもっとあがき、泥をすすり、僕にふさわしい下僕となりたまえ。
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「ん……ん~………」
『ハ!ようやく起きた!』
目を覚ましたが、まだ頭が真っ白だ。寝ぼけているともいえる。思わずあくびをしてしまう。
『ちょっと待っててね!ごはん持ってくるから!』
「ああ、うん。ありがとう」
イヴリーンは部屋から出てご飯を取りに行った。カレンダーを眺める。
あれから三日も経ったのか。重要なミッションだというのにいきなり序盤にやられる羽目になるとは思わなかったよ。
あ、イヴリーンにミッションがどうなったのか聞いてなかったな。けど特に変化がないということは成功したというのだろうか?ミッション失敗したことはないけど。
『お待たせ!朝カレーよ!』
「ありがとイヴリーン。お、美味そうだな!早速いただきます!」
いきなりカレーに食いついた。やはりカレーはおいしいな。この世界のカレーは赤めだけどうまそうなのは変わりない。というか、ハヤシライスではないかこれ……?味的にも。
「ところであのミッションはどうなったんだ?」
『ブルースカイとの交渉は決裂、対立は決定的となったわ』
「ありゃ……」
予想はしていたけど、もしかしたら……とちょっとは期待もしていた。が、残念な結果に終わったようだ。
『一応、EUNは中華国から撤退させたわ。最低限の目標は達成したことになるわね』
「そうか、それならよかったよ」
及第点といったところか。何もなかったとか最悪な結果だけは何とか回避できたな。
『けれど今回のミッションでついに死者も出てきたわ』
「死者!?」
仲間が、同士が死んだ……。俺にその言葉が重くのしかかってきた。
今までのミッションは重症者こそ出しても、みんな生きて帰ってきた。誰もが欠けることもなく。みんな夢や希望を抱えて、戦場の中で生き残ってきた。
そう、これが戦争だ。同じ、分かりあえるはずの人間がお互いに傷つけあい、殺しあう。
「そうか……俺がみんなの足を引っ張ったからな」
『あんたのせいじゃないわよ。敵だって生き残るのに必死だったってだけ。こうなることは分かりきっていたことじゃないの』
「そうだよな……」
真っ先に俺が役に立たなかったことで自分自身を責めようとしたが、イヴリーンからそんなことやっても過ぎたことはどうしようもないと一喝された。
確かにその通りだ。俺がすべきことは過去の失敗を悔やむのではなく、次回に生かすことだ。ミッション中にもアルマちゃんからも同じようなことを言われたしな。
『【自爆魔】と呼ばれるあいつ……初見キラーとして有名らしいわよ。セシル君たちも、あるいはそれ以上のものも……例えばミランダとかね。【自爆魔】にやられたそうよ』
そうか。あのミランダですら【自爆魔】の餌食になったのか。おそらく訓練かなんかで戦ったのだろうが、そりゃ、あんな奇抜な戦術なんてめったに見かけないからな。それはしょうがないのかもしれない。
「あれ?セシルたちは?」
『今ミッションに行ってるわ』
「ミッション……」
『本部がいま日本に侵攻中だから、場合によっては天も出撃してもらう……かもしれないってことよ』
「今出撃しなくて大丈夫!?」
『落ち着きなさい!仮に出撃しても本調子じゃないあんたが出てきても基本足手まといになるだけよ!』
「う……」
イヴリーンの言うとおりだ。一日たてば調子は戻るかもしれないけど、今行ったってみんなの足を引っ張るだけだ。調子を整えることが優先だ。しかし、場合によるとのことなので、もしかしたら出撃するのかもしれない。
『ったく!EUNの連中は天が眠っている間に日本に攻め込もうとするんだもの!せこいったらありゃしないわ!』
「でもそれは有効な戦術になるからな。玄人(?)一人増えるよりも、素人が出るかどうかの状況で攻めたほうがいいに決まっている」
『それと、これを見て天』
イヴリーンが俺にタブレットを見せる。
「!!!」
思わず言葉にならない声を出し、目を見開いてしまった。そこに大きな生物が映し出されたが、この生物は……
『これって、天の夢に出てきたMMというやつじゃないの?』
「……多分」
間違いない、恐らくこいつはMMだろう。夢の中に出てきたモンスターではないが、なんというか、似ている。
巨大なネズミがエルクやドローンを次々と破壊していく。前歯だけでなく、爪やブレスで攻撃していく。与えられた傷も煙を上げ、輝きながら再生されていく。
やがてエルクは全滅し、ネズミは前歯で大破したエルクを削る。エルクは無残にも削りつくされ、そして脱出しそこなったのだろうか、コクピットも削り、むき出しになったアルファを捕食している。
「うわ……」
『いつ見ても気分悪いわね……』
この捕食シーン……エ〇ァとか、進撃〇巨人を思い出してしまった。捕食シーンで映像は終わっている。
「こ…こんなものが……」
『いずれ私たちもあいつらと戦う羽目になるのかしら……』
「【ムーワード】とかいうエルメル側の国が開発したものだしな。きっと戦うことになると思うよ」
『私、あんな不気味な獣に食われたくないわ!』
「俺もだよ。食い殺されるとか最悪だよ。しかもあの様子じゃ、ひと思いというよりかは、少しずつ捕食していくスタイルだろうし……」
捕食シーンは少ししか映っていなかったが、あの衝撃映像は脳裏に焼き付いてしまった。
そのネズミは脚から少しずつ食べていた。あれは相当苦しみながら食われているということだろう。
あのグロテスクなシーンを見てしまい、体に力が入らなくなってしまった。こんなシーンを見せるんならグロ注意くらい言ってほしかったよ。
「ところでみんな大丈夫なの?」
『あんたじゃないんだから大丈夫でしょう。それに、亡命者部隊も力を貸してくれているしね』
そうか、ディートリンデさんたちも戦ってくれたのか、よかった。俺がほっと胸をなでおろしたときに、アルマちゃんと彰吾君が部屋に入ってきた。
「失礼します、天さん。具合はいかがですか?」
「うん、なんともないよ。どうしたの?」
「よかったです」
『何かあったの?』
「いや、君が長い間、寝込んで起きないから心配したんだけど、やっと起きて安心したから見舞いに来たんだ」
「それと何かあれば、ソフィさんから連絡が入るかと思います」
『連絡?』
「一応天君にはなるべく出撃することがないように遂行しているけど、何かあったときとかに念のためにってことで……」
「俺は特に何もないので大丈夫ですよ。本来の力を出し切るかわかんないけど」
『情勢は?』
「今のところ、順調に作戦は遂行されています。流石に数機は大破により、離脱をしていますが、相手もそれ以上に損害を与えています」
『ちなみに誰が一番活躍してる?まさかとは思うけど、レオンとかじゃないわよね!』
「ご安心ください、イヴリーンさん!セシル君が一番ですよ!もう10機近くまで撃破しました」
ご、ご安心ください???
「ご安心くださいって……」
流石に彰吾君も引っかかったらしい。俺と彰吾君は苦笑する。
よかった、俺の聞き間違いかと思った。彰吾君は絶対まともな人だ。
『うん流石ね!天もこのくらい活躍できるようにもっと精進しなさい!』
「はいはい」
「セシル君凄いよね。ヴァリアントであってもあのような洗練された動きはほれぼれするよ」
「ですよね。俺も一番目標にしている奴ですよ」
ヴァリアントだけじゃない。MMのこともあるし、これからも戦死者が増えるだろう。
俺も今後、セシルたちと肩を並べるくらいでないとな。
Pipi!
「!どうなさいました?」
アルマちゃんのタブレットから通信が入った。ソフィアさんからだ。
《天さんの容態はどうでしょうか?》
「特に異変はありません」
『本当に大丈夫なの天?』
「ああ、こうして難なく動かせるよ」
ジャンプしたり魔法陣を展開したり、特に問題がないことをアピールする。
《そうですか。申し訳ありませんが、ちょっと厄介なことになりまして、本当は天さんを休ませたいのですが、至急、出撃できないでしょうか?》
「はい、できますけど……」
『できるの?なら……でも何かあったの?』
《受けていただきますか!ありがとうございます。詳しい内容はあとで説明します。出撃準備よろしくお願いします。大丈夫です。そこまで負担になることはないかと。それと彰吾さんも初出撃していただきます》
「え!?俺も!?」
「そこまで負担にならないようなら大丈夫と思いますよ」
「そう…だね。この時のために俺はここに志願したんだ。やるさ」
『お!その意気よ!頑張って彰吾!』
俺たちは出撃口に向かう。そして彰吾君にとっても初ミッションだ。ここでは俺が先輩だから、死なないようにフォローせねば!




