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やっぱ見えてる

こんにちは。僕は日本人ではありません。日本語勉強中です。何か間違いや誤りがあるかもしれません。その時はどうかご容赦ください!

これで「芸術の忘却」終わりになるます。読んでくれてありがとございます!

 これまでのどの日と同じように、僕と京子(きょうこ)さんはリビングで本を読み、議論して時間を過ごしていた。これらの瞬間は本当に僕を幸せにし、少しずつ、一歩ずつではあったが、それでも心の傷を癒やしてくれていた。この時間が終わらないでほしいと願った。永遠にここにいられることを切に望みながらも、心の奥底ではそれが不可能であり、遅かれ早かれこの場所を離れなければならないと理解していた。しかし、その「遅かれ早かれ」が今日訪れるとは思いもしなかった。


 インターホンが鳴った。普通のインターホンだった。それまでに何百回と聞いてきたような、そしてこれからも同じだけ聞くのだろうと確信していたようなインターホンだった。何の疑いもなく、僕は椅子から立ち上がってドアを開けに行った。それほどまでにこの家での生活に慣れてしまい、その行動が何か奇妙だったり疑わしかったりするとは思わなかった。しかし幸運なことに、京子さんは警戒心を失っておらず、僕を止めた。


「待って!誰かに見られちゃダメよ!」


「あ!そうだ。すっかり忘れてた。ありがとう。」


「二階に隠れて。降りていいって言わないかぎり絶対に降りないで。」


僕は階段へ向かい、二階へ上がった。その頃には京子さんはすでに玄関までたどり着いて、僕は遠くから鍵が開く音を聞いた。


「こんにちは。黒木(くろき)京子ですね?」


「はい、私です。どなたですか?」


「私は「芸術対策」官です。あなたのご近所の方から、あなたが自宅に特に危険な犯罪者を匿っているとの情報提供がありました。こちらが家宅捜索令状です。入ります。」


 「芸術対策」?しまった!ど、どうやって僕がここにいると知ったんだ?近所の誰か?くそっ!誰でも、僕が京子さんや坂本(さかもと)さんを見つけた時と同じように、家の窓から僕を見ることができる。


 すぐに逃走を決意し、まず最初に本の原稿が保管してある部屋に駆け込んだ。絶対にそれを失いたくなかったので、リュックに押し込み、逃げる方法を探し始めた。階段に戻り、一階で何が起こっているかを一目見た。


 下では、四人の軍服を着た兵士が、違反品がないか家を捜索しているのが僕の視界に入った。しかし、彼らにそれにかかる時間はほとんど必要なかった。リビングのテーブルの上には、数分前に京子さんと読んでいた大きな本の山が置いてあった。それだけで彼女に死刑の命令を下すには十分であり、ましてや二階に保管されているものは言うまでもなかった。


 玄関からは逃げられないと悟り、僕は部屋に戻って窓の外を見て、家の外で何が起こっているかを確認した。すると、家の周囲に五人の兵士が立っており、誰も逃げられないように見張っているのが見えた。


「お前たち二人。二階へ行け!急げ!」


 くそっ!時間はますます少なくなっている。早急に何かを考えなければ。「どうやって逃げる?」このただ一つの考えが今、僕の脳を満たしていた。僕の理性はそれにあまりにも重点を置いていたため、他の全ては頭の中から消え去った。自由な時間も、思考のプロセスに使える余裕もなく、もはや彼女に何が起こるかさえどうでもよくなっていた。今、僕を悩ませていたのは、背中に背負った貴重な原稿だけだった。


 もう一度窓の外を見ると、奇妙な細部に気づいた。奇妙ではあったが、少なくとも何らかの希望を与えてくれるものだった。僕の部屋の窓から見える側に立っていた五人の兵士の中に、他の全員とは異なる一人の兵士がいたのだ。


 目の前の窓を大きく開け、僕は大声で叫んだ。


「僕はここだ!もし僕を救いたいなら、残りの四人を殺せ!」


 自分の口からこんな言葉が出るとは思わなかったが、今の僕は絶望のどん底にあり、何でもする覚悟だった。最も恐ろしいことでも、最も避けたいと願っていたことですらできると思っちゃった。


 一瞬後、四発の拳銃の音が響いた。全てが計画通りに進んだとは言えないが、少なくとも切に願っていた通りにはなった。


 アドレナリンで満たされた僕の体は、一秒も迷うことなく二階の窓から飛び降りた。全く不快感を感じず、立ち上がって、死体の一つに向かって走り、拳銃を拾い上げた。


「中佐!こいつは裏庭にいます!逃げようとしています!」と二階に上がった兵士の一人の声が僕に届いた。


 彼らが指揮官からどのような返答を得たのかは分からないが、数秒後には同じ兵士の声が聞こえた。


「了解しました。直ちに実行に移...」


 そしてさらに一秒後、彼の声は消え、二度と誰かの耳に届くことはなかい。人の声が消えると同時に、僕の右側から二発の銃声が轟いた。音の発生源の方に振り返ると、先ほど四人の戦友を殺したあの同じ人が立っていた。いや、戦友ではなく、敵と言うべきだろう。


「早く塀を越えろ!」


「分かった。」


 家の周囲にあった柵を乗り越え、僕は救ってくれた者と共にその場所から遠くへ逃げ始めた。しかし、明らかに徒歩でこれをするのは不可能だった。


 数軒走り、近くに「芸術対策」官がいないことを確認すると、僕たちは車の置いてある家の敷地内に駆け込んだ。


「ここで待って。家主から鍵を取ってくる。」


 命令に従い、僕は車のそばに残った。新しい仲間を長く待つ必要はなかった。彼が車の鍵を手に入れるために費やした短い時間の間に、僕は二発の銃声、数人の叫び声、そしてガラスの割れる大きな音を聞いた。


 家から出てきた彼は車を開け、僕を後部座席に乗せ、自分は運転席に座った。エンジンをかけ、僕たちは道路に出て、見覚えのある道を走り出した。まさにその道を通って、僕はこの町にやって来たのだった。


「どうして俺が革命軍の者だと分かった?」


この時、無駄な説明のために余計な労力と時間を費やしたくなかったので、余計な質問を引き起こさないように、僕は嘘をつくことにした。


「顔を見た時、どこかで見たことがあるとすぐに思い出したんだ。」


「ああ、そうか。」


もちろん、それは嘘だった。しかし、簡単に見破られる嘘だった。幸運なことに、僕たちは確かに以前どこかで会ったことがあった。しかし、一年以上前に革命軍にいた人々の顔を一人も覚えていなかった。それらは全て僕の記憶から消去されていた。今の自分にとって最も重要なことは本だ。


 町の出口に近づくと、数百メートル先に検問所が見えた。そこを通らなければ、この町から逃げられない。


「くそっ!間に合わなかった!この野郎ども、もう検問所を設置しやがった。ここから逃げられない。革命軍から救援が来るまで、町の中に隠れるしかない。引き返すぞ。」


 この考えは僕を惹きつけなかった。むしろまったく逆で、とても嫌だった。その理由は、僕にとって誰に捕まるか、革命軍か「芸術対策」か。そんな関係ないからだ。結果は同じだ。僕は本を完成させることができない。だから、頭に浮かんだ唯一の考えはこれだった。


「待って!引き返せない!すぐに何かおかしいと気づかれるぞ!そのまま進め。もし今止まったら、追いかけてくる。そして包囲されるぞ。」


「正気か?向こうはこっちの三倍はいるんだぞ!どうやって対処しろっていうんだ?」


「あんたは彼らと同じ軍服を着ている。何とか考えろ。」


「考えろって?何を考えろっていうんだ?」


「知らないよ。それはあなたの仕事だ!僕は「芸術対策」のスパイじゃないし、出会う人みんなに嘘をついたりしない。」


 僕たちは、検問所にいる軍人たちが僕たちに気づいて全注意をこちらに向けるのに十分な距離まで近づいていた。僕たちが検問所に到着し、武装した兵士たちの前で車を止めるまでに一分もかからなかった。


 車から降りた僕の新しい仲間は、嘘をつき始めた。しかし、彼はあまりにももっともらしく嘘をついたので、一瞬、僕自身も彼を信じ始めてしまった。


「中佐からの命令です。市内中心部のとある地区で革命家の隠れ家が発見されました。中佐はできるだけ多くの兵士を必要としています。」


「我々は誰も町から出すなと命令されています。持ち場を離れるわけにはいきません。」


「今、我々から数キロ離れた場所で、祖国への裏切り者たちとの全面戦闘が行われている!そこには暇の全員が必要だ。君たちも銃声や爆発音を聞いただろう?今この瞬間、そこでは君たちの戦友が、我々の祖国のために戦って死んでいるんだ!君たちはここで何もせずに座っているのか?今日命を捧げたあの勇敢な軍人たちの家族の目を、後でどうやって見るつもりだ?」


「...」


「確かに彼の言う通りだぞ!仲間たちが命を危険にさらしているのに、何もせずにいるわけにはいかない!」


「しかし、我々には別の命...」


「よし!決まった!君たち三人は俺の車に乗れ。俺はさらに二人と一緒に君たちの車に乗って、道案内をする。」


 三人の兵士が、僕がここまで乗ってきた車に乗り込んだ。僕は仲間の合図を待っていた。それを長く待つ必要はなかった。車が動き始めて数秒後、僕が隠れている車の前を走っていた車の中から二発の銃声が聞こえた。


「何だ?何の音だ?聞こえたか?」


「誰が撃った?どこから撃った?」


 すでに手榴弾を用意していた僕は、安全ピンを抜き、それらを車のトランクに自分を置き換えるように残した。そしてトランクを少し開けて、飛び降りた。この数瞬で出せた速度はそれほど高くなかったおかげで、間もなく爆破するであろう車から難なく離れることができた。立ち上がると、僕は爆発現場から急いで離れ、全力で走り出した。


 足が地面に八回触れた後、ようやく背後の方で爆発が起こった。爆発点から十分に離れていたにもかかわらず、衝撃波は依然として僕に届いて地面に倒した。


 僕と、そして僕の頭が我に返り、めまいが収まるまでには数分を要した。ようやく立ち上がることができると、僕の隣には車が止まっていた。ハンドルを握っているのは、まだ名前も知らないが、既に二度も僕の命を救ってくれている人だった。


「やっと気がついたか?さあ早く乗れ、時間がない。」


「分かった、分かった。」


 車の前部ドアを開けると、数分前にそこに座っていた兵士の一人から出た大きな血の海が見えた。少しも迷わず、すぐにドアを閉め、後部座席に座った。


「ハハ。なんだそれは?お前、血が怖いのか?」


「そういう問題じゃない。汚れたくないだけだ。」


「なんて繊細なんだ。思い出させてやろうか。お前がついさっき、三人の軍人が乗った車を爆破したってことを?」


「お願いだからそれはやめてくれ。」


「ハハ。よし、さっさと行こう。それにしても、いい作戦だったな!感謝を待ってるぞ。」


「感謝だって?爆発で死にかけたんだ。破片が一つも当たらなかったのは運が良かっただけだ。」


 薄情な返事をしたが、それでも僕は確かに彼に感謝していた。彼がたった三十秒で考えた作戦は、まさに彼が説明した通りに成功したのだ。


「ヒロ。手榴弾を持て。」


「手榴弾?どうして?」


「余計な質問はするな。言う通りにしろ。トランクに潜り込め。今座っているシートの背もたれを倒せば入れる。そこに入ったら、俺の合図を待て。それは二発か三発の銃声だ。それを聞いたら、手榴弾をトランクに投げ入れ、そこから飛び出して、できるだけ速く走れ。俺がトランクを開けてやるから、逃げられる。」


 今全てが終わった。ようやくこの町から逃げ出せた時、彼の作戦がどれほどうまくいったかを思うと、少し怖くさえなった。しかし、その恐怖はすぐに消えた。なぜなら、僕の計画はまだ実現していないからだ。もし僕の理解が正しければ、僕たちは今、革命軍の基地の一つに向かっている。そこでは、僕の顔を見るなり捕まえられ、すぐに刑務所に入れられるだろう。それは明らかに避けなければならない。つまり、「選択」と呼ばれる贅沢は今の僕に許されない。今後の展開の選択肢はただ一つしかない。


 数時間運転した後、ようやく僕の計画を実行する機会が訪れた。


「ガソリンが切れそうだ。給油しなきゃ。」


 数分後、僕たちの車はガソリンスタンドの隣に停まった。ドアを開けて外に出ようとしたその時、突然大声が聞こえた。


「何をしようとしてるんだ?!」


「え?」


「お前は何かをする前に、たまには考えるってことをするのか?車の中に座って待って。できれば身を隠せ。誰にも見られないように。お前の顔はこの国の全国民に知られている。これまでにないほど、お前は指名手配されている。もしお前を見られたら、我々の努力は全て無駄になる。」


 受け取った命令に逆らう意味はなく、僕は車の中に座り続けた。平野(ひらの)くん――新しい仲間の名前を名乗った人間が給油している間、僕は後部座席にじっと横たわっていた。彼が給油を終え、代金を払いに行った時、僕は前部座席に乗り移り、見えないように身を屈めて待ち始めた。


 数分後、平野くんは車に戻り、運転席に座ろうとしてドアを開けた。しかし、彼は全く予想していなかったものを目にした。


「え...?」


 その後銃声が響いた。これが、僕が生涯で最後に放つ銃声となった。平野くんの無機質な手から車の鍵を取り、僕はドアを閉めてエンジンをかけた。


 この銃声は、一年以上前に放ったあの銃声とは完全に異なっていた。前回、僕は自分が何をしているのか理解も認識もせずに引き金を引いた。あれはむしろ僕ではなく、僕の本能だった。あの指の動きに、自分の考えや感情を込めてはいなかった。しかし、今回は全て自分の意志と願望で行った。どんな状況であっても、革命軍にも「芸術対策」にも捕まってはいけないと理解していた。だから、これが唯一の選択肢だった。他に選びようがなかった。


 しかし、こう言っても自分の行動を弁解しようとしているわけではない。自分の行動が悪であることは認識している。しかし、自分自身のためにやったのではない。自分の命を救うためにやったのではない。すぐに遅かれ早かれ見つかるだろうし、それはもう変えられないと分かっていた。これまでに数え切れないほどの悪いことをしてきた。許しを請うことなどできない。しかし、それに対して謝罪するつもりもない。誰に対しても。僕の行動は全て、ただ一つの目標のためだった。今リュックの中にある本を完成させること。それだけが、この国の住民を恐ろしい呪い――文化を知らないということから救うことができる。そんな呪いは人類に起こり得る最も恐ろしいことだ。だから、決意に満ち、全ての覚悟を決めて、僕は最後の旅へと出発した。


 あまり時間が残されていないと分かっていた。遅かれ早かれ、僕は見つかるだろうし、どこかに永遠に隠れられるわけがない。それは不可能だ。だから、最優先事項は本を書き上げることだ。それ以外は後回しだ。車を運転しながら、僕はただそれだけを考えていた。


 道中、いくつかの小さな村を通り過ぎ、ようやく自分が見つかりにくいであろう十分に大きな町を見つけた。そこに着いた時には、外は真夜中だった。月と車のヘッドライトの光だけが地面に跡を残し、僕の道を照らしていた。誰も起こさないように事前にエンジンを切り、車を降りて、適当な隠れ家を探しに歩き始めた。


 三十分の捜索の末、ようやく興味深い場所が目に留まった。一目見ただけで、そこはここ数年誰も住んでいない廃屋だと分かった。敷地内の草は生い茂り、家の外観は、あと五年は持つかどうか確かな希望を与えなかった。


 自分の行動によって誰かが傷ついたり、京子さんと同じような運命をたどったりしてほしくなかったので、わざと廃屋を探していた。十以上の町を調べても、現代でそんなものを見つけられるとは思っていなかったが、今日は運が僕の味方だった。だって、このような贈り物をしてくれた。


「探偵」というジャンルの本をたくさん読んでいたので、鍵はヘアピンのような細長いものでも開けられることを知っていた。残念ながらヘアピンはなかったが、車に戻って何か役立つものがないか見てみることにした。グローブボックスを開けると、小さな折りたたみナイフを見つけた。それを手に取り、先ほど見つけた家へ急いだ。鍵の開け方について、決して多くはないが持っていた知識と月の光のおかげで、一時間の苦闘と試行錯誤の末、ようやくドアの鍵は開き、中に入ることができた。


 肉体的にも精神的にもとても疲れ切っていたので、まず最初に眠ることにした。それに、こんな暗闇では何も書けないし、もし明かりをつければ、不要な疑いを招くだけだ。ベッドで眠る前に、念のため、この家が本当に空いているのか、本当に誰も住んでいないのかを確認した。満足のいく答えを得てから二階の見覚えのある部屋に上がり、眠りについた。


 永遠に眠っていたかのような感覚で目を覚まし、部屋のカーテンを少し開けると、大きな明るい太陽の光がたちまち部屋を照らした。リュックから全ての筆記用具と原稿を取り出し、僕は本の続きを書き始めた。


 書いている間、僕は自分の感情、感覚、思いを込めた。そうすることで、全ての読者が、僕の人生の各時期に僕が感じていたことを感じ取れるようにするために。


 書きながら、その過程に完全に没頭していると、これまでの人生で出会った全ての人々を思い出した。一人ひとりに感謝していた。敵だった人や僕を裏切った人たちでさえも。彼らなしでは、今の自分にはなれなかった。そうして、ついに僕の祖父の番になった時、おそらく彼がなぜ革命軍を創設したのかを理解できたかもしれない。


 これはただの推測に過ぎない。それ以上でもない。おそらく推測ですらなく、ただそうであってほしいと願っているだけだ。愛する祖父に対する僕の意見が決して悪くなりませんように。おじいちゃんが僕を守るために革命軍を創設したのだと思った。なぜなら、あの人たちが僕のためにしてくれたことは、「芸術対策」から僕の命を守り、保護してくれることだったからだ。そう、佐藤(さとう)将軍は革命について全く異なる考えを持っており、僕は彼と決して合意することはないだろう。しかし、それでも将軍は僕を守ってくれた。


 太陽が部屋を照らしている間中、僕は書き続けた。そして唯一光の根源が地平線の彼方に沈み、月がゆっくりとその場所を変え始めた時、ようやく自分が貪っていることに気づいた。しかし、欲しいなのは食べ物ではない。書くことに渇いていた。書きたい、書き続けたい、止まることなく、ペンを通してインクに、インクを通して紙に自分の考えを伝えたい。紙に自分を全て知ってもらい、今の自分が感じている全ての感情を感じ取ってほしかった。この短い時間に書いた物では物足りなかった。全く不十分だった。いくら書いても満足できないと気がした。


 しかし今、その機会を奪われていた。僕は完全な暗闇と静寂の中にいた。明かりをつければすぐに見つかると分かっていたが、火山のマグマのように表面に噴出し、その進路上の全てを焼き尽くさんとするこの願望には抗えなかった。


 魔が差したような願望に従い、健全な理性を完全に捨て去って、僕は明かりのスイッチに近づき、創作を続ける機会を得ようとした。しかし、ボタンを押しても、何も起こらなかった。もう一度押し、もう一度、そしてまた数十回押したが、何の変化もなかった。


 当然だ。この家には何年も誰も住んでいない。ここで電気が使えるはずだなどという考えが、どうして頭に浮かんだのだろう?しかし、それでも諦めなかった。ほんのわずかな可能性にすがろうと、家の中の全てのスイッチを入れに行った。一階と二階の全ての部屋で。しかし、結果は変わらなかった。


 おそらく、この状況では他の誰なら絶望して諦めるだろう。しかし、僕だけは違った。僕は今、どうしても本を書き続けたかった。


 まだ夕方で、夜ではなかった。近隣の家々にはまだ明かりが灯っていて話し声が聞こえた。こんな状況で家から出るのは、地球上で最も危険な行動だった。しかし、それでも運を試してみることにした。


 誰にも気づかれないことを願いながら車まで行ってトランクを開け、探していた物を見つけた。その他にもたくさんの不要な物があったが、その中に僕の渇きを癒してくれる物が一つしかいなかった。それは懐中電灯だった。それを手に取り、家へ急いだ。道中、数人とすれ違ったが、こんな薄暗い照明で彼らが僕の顔を識別できたとは思えない。

 

 家に近づき、近くに誰もいないことを確認してから中に入った。二階に上がり、さっき車から取った電灯や即席の材料でランプのように見える小さな台を組み立て、その光を机に向け、紙を走らせ続けた。充足感を求めて、一行ごとにそれがますます遠くになっていくように感じられながら。


 今、時間が止まって、二度と動かなくなってほしかった。何十年、何百年、何千年も書き続けたいと思った。ペンと紙を一瞬たりとも離したくなかった。永遠にそれらと共にありたいと思った。それらを守り、そして代わりにそれらが僕を守ってほしかった。


 そうして一日が過ぎた。もしかすると二日か、あるいは二十日か。僕は時間の感覚を完全に失っていた。しかし今回は、内側から溢れ出る幸せな感情のためだった。以前は、人生の中である瞬間が幸せだと思っていた。例えば、紀美子(きみき)と、(まこと)と、坂本さんと、京子さんと過ごした時間や、絵を描いたり本を書いたりした時間。しかし、間違っていた。もし死後、いつが一番幸せだったかと尋ねられたら、迷うことなく、この瞬間だと答えるだろう。まさにこの瞬間、僕の心は、体験しうる全ての感情の中で最も特別で美しい色彩と色合いで満たされている。


 時間を完全に忘れていたため、僕の幸せな瞬間は、僕の体内時計によれば、下からの大きなノックと轟音によって中断されるまで、ほんの数分しか続かなかった。


 まだ伝えきれていない感情や想いがたくさんある。それらを読者さんと共有したいと思う。しかし、おそらくそれは永遠に叶わないだろう。僕はやつらが二階へ上がる階段を上る足音の一つ一つを聞いていた。三人だった。おそらく、「芸術対策」官たちが僕を捕
















 俺の背後でドアが開き、俺の小さな「旅」が終わりを告げたことを意味していた。後ろを振り返ると、俺は、背後に立っていた三人のうち、少なくとも一人の顔を見たいと願った。しかし、その願いは叶わなかった。三つの顔全てが、黒いマジックで塗りつぶされ、黒く消されていた。これはただ一つを意味していた――もう誰も俺を助けられない、誰も俺を救えないということだ。


「捕まえろ!」


 俺は聞き覚えのある声を聞いた。その声はあまりにも聞き覚えがあり、俺の目からは数滴の涙が流れ落ちた。俺のことを永遠に変えた声。


 二人の兵士が俺に駆け寄り、手錠をかけた。同時に、不要な行動を取らないように、拳銃を頭に当てていた。手錠をかけ終えると、「芸術対」官は俺を椅子から起こし、連れて行こうとした。座っていた場所から部屋の出口のドアまで歩くのに費やしたほんの数秒間の間に、俺は思いついた考えを信じてみることにした。いや、正確に言うと、他に選択肢はなかった。この国には、もう俺が信頼できる人は一人もいなかった。だから、幸運にもここに居合わせたその人に、運を頼ってみることにした。


 俺が、細くて壊れやすい紙の上に自分の感情をほとばしらせていたまさにその時に部屋に入ってきた三人目の兵士の横を通り過ぎる際、俺は彼の耳にそうささやいた。


「机の上にあるのは僕の本だ。あげる。」


「何をぶつぶつ言ってるんだ?早くしろ!」


 二人の兵士が俺を部屋から連れ出し、階下へ連れて行った。その間部屋に残った「芸術対策」官は机に近づき、散らばって置かれていたノートの束を手に取った。だがあまり余裕がなかった。手錠のまま俺が通っていた高級兵士が部屋に残った人に声をかけた。


「そこで何をぐずぐずしてるんだ?やつを捕まえた。もうここに用はない!」


「了解しました、中佐。すぐに降ります!」


 俺は囚人輸送専用の特別な軍用車に乗せられ、地下の独房が待つ首都へと連行された。


 俺はそこで数日間過ごすことになった。前回刑務所に入れられた時よりも長く。しかし、前回が俺にとって真の試練だったにもかかわらず、今回は二つのこと――「信念」と「希望」が、静寂、孤独、不安に対処する助けとなった。


 ついに、俺は自分以外の誰かが発する最初の音を聞いた時が来た。完全武装した七人の兵士が俺を連れに来た。彼らは俺を外に連れ出した。そこでは俺が来たときと同じ車が待っていた。俺の顔には包帯が巻かれており、何も見えなかった。そのため、俺は全ての音に耳を傾け、一つひとつを大切にした。


 やがて車は止まった。同じ七人の兵士が俺を外に連れ出し、階段を上らせた。最後の一段を上り終えると、俺の顔から包帯が外された。そして俺は、下に立っていた俺の方に顔を向けた大勢の人々を目の前にした。政府はこれを「見せしめの処刑」と呼び、国家を統治する党に反抗する者が二度と出ないようにした。処刑方法は斬首になった。


 全てが終わり、俺の中の全ての感情が、豪雨の中の小さな焚き火が消え去るのように、なくなる前に俺は目の前に立つ群衆の中に、何か、あるいは誰かを必死に目で探していた。斧が自分の役目を果たす半秒前、俺は探していたものを見つけて安堵に満ちた最後の言葉を口にした。


「やっぱ見えてる。」

これで僕の一本目小説は幕を閉じます。読んでくれた皆さんに心から感謝します。ありがとうございました!

本当は最初に11話にしたかったので最後まで迷ってしまいました。でも11話は必要ないと決意したのでここで終わりになります。

最初から最後まで読んでくれた方にもう一度感謝します。

僕の小説は気に入ったらそれほどの喜びはないです。読者さんから本当に感想を聞きたいです。それは悪いか良いかどうでもいいです。ただ僕の小説を読んだ人間から意見を聞きたいだけです。よろしくお願いします。

来週新しい連載小説はさすがに無理です。でも短編小説の方はありかもしれません。約束できないですが来週に間に合わなかった場合5月10日に絶対投稿します。だからこの小説が気になったらぜひよんでください。名前は「運命が存在しない証拠」になると思います。よろしくお願いします。

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