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3人と一匹での生活に慣れて他の人にどうやって話しかければいいか分からない…何日目?
さまよい続けること…どれくらい?
なるようにしかならないし個人的には何日かかろうと気にしないが、たまに落ち込むエルフがいる。
「ミヤコ、ごめんなさい。今日もまた人の居る所に着きません」
「ん?またなのね。そんなのはどうでもいいのよ。何か重要な目的があるわけじゃないんだし」
「でも、私が道案内したせいですし…」
「ふふっ。わたしが進む方向を決めても結果は変わらないわよ。もちろんタローが決めてもね」
「そうだよな。むしろ俺なら美味い木の実を追い求めちゃうなぁ」
「…タローに任せたら駄目ね。何処に行くかわからないわ」
「そうかもしれません」
日々信用が落ちている気がするが、そもそも分からないことや知らないことだらけなんだから仕方ないと思う。
俺は悪くない。たぶん。
「声を落として止まってください」
「どうしたの?」
「声が…たぶんこちらの方から聞こえました」
「誰かいるのか!」
「!、タロー様。静かに」
「何かまずいの?」
「盗賊だったらどうするのですか」
「街とか村とかまでの道を聞く」
「兵士だったらどうするのよ?」
「街とか村とかまでの道を聞く」
「聞き違いだったらどうされるのですか」
「街とか村とかまでの道を聞けない」
「何よそれ」
声を上げたので魔物が寄ってきた。
囲いを作り狩りを始める。
「ハァ、魔物がいるので人は接触してこないと思われます」
「もういつも通りでいいわね」
「あれ?俺が変なの?」
「タロー様と一緒に居ると感覚がおかしくなりますが、基本的には魔物には先制して攻撃を当てたいです」
「囲いを作ったほうが楽なのに?」
「タローが特殊なのよ」
「そうなのか。あれ?前にも聞いたかなぁ?」
「たぶん言ったわよ。これでいいじゃんって思ってるから覚えてられないのよ」
「それは…そうかも知れない」
豚面のオークや素早いウルフが襲ってくる。
「こいつらってさ、これだけの体の大きさを維持するのにどれだけ食べ物が必要なんだろ?」
「どうなのかしらね?ゴブリンとコン蔵以外はわたし達より大きいものね」
「コン蔵って魔物だった?」
「コン蔵は…どうなんでしょう?魔物にも動物にもフォックス種がいるので判別は出来ません」
「わたしも魔物と動物の区別は曖昧よ。食べられるのが動物って判断してるわ」
「あとは、逃げるのが動物で襲ってくるのが魔物ですね」
「あぁ、体のなかに瘴気があるかないかの違いってことか」
「そうだと思うわよ」
「タロー様が居たら全部食べることができる…魔物は存在しない?」
「全然合ってないわね。ナナゴは混乱しているのね」
「!、状態異常の魔法を使われているのか」
「そんなの聞いたことないわよ。タローは常時混乱しているのね」
「タロー様!ミヤコが変です!まともです!」
「なんてことだ!ナナゴ!変な魔力の動きが無いか気をつけてくれ!」
「あー!もうっ!タロー、瘴気抜いて!肉焼くわよ!肉を食って落ち着いてよ!」
囲いの中から群がる魔物を狩っていく。
すぐに瘴気を抜いて焼いていく。
焼けた肉から食べていく。
肉の消費量よりも供給量の方が上回り、熾烈な戦いへと移行していく。
「やっぱりトイレがあると便利だなぁ」
「今更?わたしはずーっと便利だと気づいてたわよ。それだって囲いでの安全地帯があるから作れるのだもの。タローには感謝してるわ」
「私だって感謝しています。なんなら祈りも捧げています」
「感謝はありがたいけど、祈りって?」
「それはタローさ「肉が焦げるわ!目を離さないで!」スミマセン」
夜を迎えても魔物の襲撃はやってくる。
囲いが破られることがなさそうなので3人と1匹でしっかり睡眠を取り、起きてからまた狩りを始める。
太陽が真上に来たあたりで漸く新たな魔物が姿を現さなくなり、肉との戦いに専念できるようになった。
「なくならないねぇ」
「残していきますか?」
「食べてくわよ。泣きそうな顔でそんな事聞かないでよ」
「飲み物いる?」
「はい!お願いします!」
「水がなくなってきたわ」
「俺もだなぁ。汲みに行ってくるよ」
「ちょっと遠いとこよね」
「まぁ、日が暮れる前には戻ってくるよ」
「わかりました。残りを片付けて待ってます」
「まだまだ量があるけど…」
鍋と水の袋を持って出発した。
日が暮れたら面倒なのでせかせかと移動する。
途中で魔物に見つかっても走って逃げて進んでいく。
無事に水場に着いてその場で沸騰させた。
「しつこいなぁ」
お湯を沸かしている間に途中で撒いたはずの魔物が現れた。
「やっぱり逃げ切るのは無理なのかなぁ」
1人で食べきるには量が多いので、倒したあとに消そうとした。
「クゥン」モグモグ
「何処にいたの?まぁいっか。どうせ消しちゃうから好きなだけ食べな」
コン蔵の影の薄さに驚いたが、やる事は変わらないので放っておいた。
「沸騰したから鍋ごと水につけて冷やすか」ジュゥゥ
冷めたら袋に水を移す。
「全部の袋となると、もう1回だな」
また、鍋に水を汲み火にかけた。
「クゥゥン」ヒュオッ、パァァァン、ゴキィ
「どうした!?」
コン蔵の方を見るとオークの顔が向いてはいけない方を向いて倒れ込むところだった。
「怪我は?無いみたいだな。コン蔵がやったのか?」
「キュゥゥン」
「あぁ、囲いを作ろうか」
安全地帯を作り水を確保していく。
「コン蔵、そのオークどうしたんだ?」
「クゥ」ブォンッ
「速いな。その尻尾で?」
「クゥ」ブォンッ
「あってるのか?」
「クゥ」ビョォンッ
「合ってるっぽいな」
「クゥ」モグモグ
よく分からなかったがたぶんコン蔵がやったのだろうということにした。
「あー、魔物が集まってきたなぁ。オークにウルフか。ボアとか熊っぽいやつとかしばらく見てないなぁ」
沸騰させた水を冷ましていると魔物が現れた。
「あれ?コン蔵、いつの間に外に出たんだ?」
「クッ」ヒュオッ、ゴキッ、タッ、ブンッ、ゴキッ、タタッ、ーーーーーー
「ふへぇー、やっぱり尻尾だったか。あの小ささで圧倒的に速く更に一撃も重いのかぁ。フォックス種って恐いなぁ」
魔物を駆逐し終え、コン蔵がオークを引き摺ってきた。
「水の袋がいっぱいになったら戻るよ」
必死に口の中に肉を詰め込むように食べ始めた。
「フォックス種ってかぁわいいなぁ」
チラチラと盗み見ながら作業を続けていく。
「うーん。終わっちゃったな。コン蔵は…もういいのか?」
「クゥン」
「じゃあ、残りは消しちゃおうか。囲いも消して、と」
帰り道は散歩のようなものだった。
コン蔵が足取り軽く前を歩き、魔物が出れば尻尾で一撃。
順調に暗くなる前に戻ることができた。
「戻ったよ。あれから魔物は…だいぶ来てたのかぁ」
「そうなのよ。じゃあ、瘴気を抜いちゃって」
「あいよ。明日には移動しようか」
「えっ、食べきらないのですか?」
「ここに戻った時に思い出したんだけどさ、人の声が聞こえたんじゃなかった?」
「忘れてました。探さないといけませんね」
「そうね。わたしとしたことが食欲に支配されていたわ」
「じゃあ、明日の早いうちに出発するよ」
そうこうしているうちに夜を迎えた。




