06 識字率と冒険者
貴族社会は階級社会だ。
支配者は力があるだけでは務まらず、頭も良くなければならない。
本を読んだり書類の処理や確認の為に、貴族の識字率は百%を求められる。
逆に、被支配者である平民や農民、下級兵士は知恵がついては困るので、識字率を低く維持しなくてはならない。
売買等の関係で、数字の認識くらいは必要だろうが。
例外として、商人や貴族に仕える者、軍の指揮官クラスがある。
昔の日本の【士農工商】の様に、貴族も含めて基本的に身分の変更は出来ない。
だから『子供だけは立派な学校に行かせたい』と、親が頑張っても平民などが文字を習う事は無理だ。
この決まり事を破って全体的な識字率を上げると、余程の要因がない限り民主主義や社会主義が台頭し、やがて貴族社会である奉献政治は崩壊する。
だから中世設定の物語りでは、これらの設定に注意しないと【子供向けの童話】になってしまう。
近年のファンタジー物語に有りがちな【冒険者】には、ギルドで受け取る依頼書を理解する者がチームに必要である。
ギルドと言う組織である為に、年々変更になるギルド規約も理解できなくてはならない。
よって全員でなくとも、メンバーに一人は文字が読める元貴族や貴族に仕えていた者、軍の指揮官経験者や商人くずれが必要となる。
メンバーに文字が読める者が居なくなった段階で、依頼が受けれなくなって他のチームに吸収されるか、冒険者を廃業せざるを得なくなるだろう。
有りがちな『同じ農村から出てきた者で冒険者チームを作った』などは、実際には有ってはならない。
基本的な単語を記憶するだけでも、数年は学校に通わなくてはならないからだ。
そんな金と暇が有ったら、便利屋扱いの冒険者などに成るだろうか?
既存の冒険者チームに雑用係りとして入ってから、文字を習うのも実質は困難だろう。
現代社会の様に、24時間営業の夜学が存在するとは考えにくいし、当然だが学費も高い。
冒険者チームとしても既存の識字者が居るのに新規に養成する必要は少ない。
国としても先の理由から、識字率を高くしたくはない。
権力者に対立する可能性がある冒険者ギルドや民間機関で、文字を教える事を許す筈がないのだ。
学校が無い場合、身内である母親などが子供に文字を教える事もある。
冒険者を営む親が、冒険者を志す我が子に文字を教える事は有るだろう。
だが、一般の被支配層において子供が労働力なのは、現代の発展途上国と変わらない。
農民や職人などの被支配層は子供に仕事を継がせる前提があるので、文字を教育する暇もメリットも無いのだ。
【職業選択の自由】は、貴族の居る社会には無い。
【冒険者ギルド】は実質的に、『社会落伍者を犯罪者にしない為の組織』である。
その仕事の内容は、軍や私兵、民兵や業者、農民などと重複する内容が多い。
討伐、護衛、採取、力仕事などを破格値で引き受ける便利屋だ。
役に立たない者を養う社会福祉などは奉献政治には無い。
社会に溶け込めず、冒険者にも成れなかった者や冒険者を続けられなかった者は、犯罪者になって処刑される未来しかないのが貴族の支配する社会だ。




