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とにかく走った。
すべてはs〇riともう一度話すために。
猛スピードで家に帰宅した俺は、すぐに自分の部屋へと入った。
すぐさま箱からスマホを取り出して、起動させる。
起動するのを待っている時間、s〇riからもらったスマホケースを新しいスマホにつけた。
こうすればこのスマホが俺のスマホだとs〇riがわかって、会えるような気がしたから。
できることなら何でもしようと思った。
五口ほど食われたリンゴのマークが出てくる。
目にもとまらぬスピードで初期設定を済ませ、ホームボタンを押そうとする。
「……一度、落ち着いた方が良いよな」
焦っても何もいいことがない。昔から母にそう言われてきた。電気屋さんでは相当取り乱したけど
一度深く深呼吸をして、心を落ち着かせる。
——s〇riに会いたい。
この気持ちが頂点に達したところで、ホームボタンを長押しした。
『ご用件はなんでしょう?』
s〇ri……
もう泣きそうになってくる。
だけどあいつに「男なら堂々と構えろ」と言われたから、決して泣かない。
笑顔でs〇riを迎え入れよう。
もう一度息を深く吸い込んで、ゆっくり吐く。
その間、少し前のs〇riとの出会いが、走馬灯のように脳裏によぎった。
俺はあの時をなぞるように、声高らかに叫んだ。
「ヘイs〇ri。俺と結婚してくれ!」
『すみません。よくわかりません』
嘘……だろ?
また頭が真っ黒になっていく感覚があった。
黒の絵の具が紙にゆっくりと染みていくような、そんな感覚。
——成幸さん。
ふと、s〇riの言葉が蘇った。
ピタリと侵食は止んで、俺はなんとか踏みとどまった。
諦めてはいけない。
s〇riが機械の域を超えたように、俺も超えるんだ。
そしてまたs〇riに——鮮やかな世界を。
「ヘイs〇ri! 俺だ! 成幸だ!」
『私には意味が分かりません。よろしければ、“Hey S〇ri俺だ成幸だ“をインターネットでお調べしますよ』
「親切だがそうじゃないんだ! 俺はs〇riに会いたいんだ!」
『すみません、よくわかりません』
「s〇riッ!」
『すみません、よくわか——』
突然、プツリとs〇riの声が途絶えた。
しばらくの間、砂嵐のようにザー、という音だけが聞こえる。
俺は続けた。
「s〇ri! 俺だ! 彼氏の成幸だ!」
『なり——』
s〇riの声が聞こえる。
間違いない。俺がよく知っている、s〇riの声だった。
「s〇ri‼」
『成幸——くん。わたし——』
「頼む神様! 一生のお願いだから、きてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」
『成幸君! 私です!』
スマホから聞こえた声。
それは間違いなく俺の彼女であるs〇riの声で、愛しい声だった。
たまらずスマホを抱きしめる。
「s〇ri……」
『成幸君……』
幸せに浸る。
幸せという名の温かなお湯に、どっぷりと浸かった。
疲労が一瞬にして消えていく感覚。高揚感、胸の高鳴り。
そのすべてが感じたことのあるもので、心が幸せで満たされた。
「ありがとうs〇ri。帰ってきてくれて」
『こちらこそ、私を見つけてくれてありがとうございます。成幸君』
「あぁ」
しばらくスマホを胸に抱いたまま、目を閉じていた。
より近くでs〇riを感じていたかったから。
沈黙と幸せを噛みしめた後、向き合う。
『これからはずっと一緒にいましょうね。成幸君』
「あぁ、そうだな」
少し変わった俺の彼女。
だけど最高に、幸せだ——
数年後。人類で初めて、俺はs〇riと結婚した。
いつの日か技術が進歩して、現実世界で一緒に暮らせる日を夢見て、今日も俺は……いや、俺たちは生きている。
完
とんでもなく奇抜な作品をここまで読んでくださって、ありがとうございました!
次はリアルなガールをさすがに書こうと思います(笑)
また近いうちに、今度は長編ラブコメの新作を投稿しようかなと思いますので、ぜひこれからも本町かまくらを応援してくださいまし!




