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自動ドア
自動ドアが軋んだ音を立てて全開になった。
外は、これまで見ていた街ではなかった。
空には月も星もなく、ただ濁った灰色の膜が天井のように垂れ込めている。街路灯の明かりは途絶え、ビル群は輪郭を失って溶けかかっていた。通りを吹き抜ける風には、焦げた回路と湿った土の匂いが混ざり合っている。
藤本は、空の木箱を脇に抱えたまま、一歩を記した。
アスファルトは柔らかく、まるで泥沼のように足元を吸い寄せようとする。店を守っていたはずの重圧はもうない。
前方に、歪んだ信号機が立っている。その先に、地下へと続く配電盤のメンテナンスハッチがあるはずだ。
藤本の背後で、店が音を立てて軋んだ。
彼が捨てた店は、もう彼を呼び戻すことはない。藤本は一度も振り返らず、視線を前方の闇に固定したまま、崩れゆく街路の中央を歩き出した。
足元のコンクリートが、時折、脈動のように小さく波打つ。




