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役立たずスキル【ログインボーナス】で捨てられた令嬢が、本当の幸せをつかむまで【コミックス3巻5月発売】  作者: 碧井ウタ
続編

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04:連続ログイン:1300日目

 柔らかな日差しがカーテン越しに室内を照らし、朝の訪れを知らせる。

 少しずつ明るくなっていく部屋の中で目覚めたジョアンナは、寝ぼけた目を軽く擦りながら起き上がった。


 毎朝の日課である【ログインボーナス】の画面を開き、いつものように[ログイン]を押そうとしてハッとする。


「危ない! 今日は押してはダメな日だったわ」


 ほっとしたように息を吐きながら、胸を撫でおろす。


 ジョアンナのスキルの【ログインボーナス】は、毎日一度だけ[ログイン]のボタンを押すことができる。


 ボタンを押した日数は「連続ログイン:◯日目」という形で記録されていて、その数に応じて様々な特典がもらえたりするのだ。


 そして、今日は連続ログインの1300日目の日だ。

 これまでと同じなら、スキルに変化が起こる可能性が高い。


 そのため、王都にあるスキル研究所から、調査のために研究者のフレッドがやってくる。

 今日は、彼の目の前で[ログイン]を押す約束になっているのだ。


 部屋では侍女たちが音を立てずに動き回り、朝の準備を整えていた。

 ジョアンナがベッドから出ると、柔らかな笑顔を浮かべた侍女のコリンナがやってきた。


「ジョアンナ様、おはようございます」

「おはよう」


 侍女たちと挨拶を交わしながらソファーに移動すると、グラスが目の前にそっと置かれる。

 よく冷えたグラスに入っているのは、緑色のジュース。


 このジュースに使われているのは、最近隣国で流行り始めている果物だ。

 鮮やかな緑色の果肉は甘酸っぱくてさっぱりした味で、最近のジョアンナのお気に入りだ。


 軽めの朝食を摂り、ドレスを選んで身支度を整えると、あっという間に時間になった。




「ジョアンナ、おはよう」

「ヴィンセント様、おはようございます」


 今日の調査には、ヴィンセントも同席してくれることになっていた。


「今日のドレスも素敵だね。よく似合っているよ」

「あ、ありがとうございます」


 ヴィンセントの言葉にジョアンナの顔には熱が集まった。


 最近の彼は甘い笑顔でこんなことをよく言う。

 そのたびにジョアンナの胸はとくりと跳ねて、落ち着かない気持ちになってしまう。


「いこうか」


 エスコートのために差し出された腕にそっと手を乗せて、ジョアンナは歩き出した。



 調査のために用意した部屋に入ると、フレッドが真剣な表情で書類を読んでいた。

 ドアが開いた気配に気がついた彼は、すぐに立ち上がり、丁寧に挨拶をする。


 メガネをかけていて、細身なフレッド。

 彼はジョアンナがスキルを授かった時に受けた調査で、最後まで担当をしてくれた人でもある。


 ヴィンセントと並んで向かいの席に腰掛けると、フレッドは待ちきれない様子で声を上げた。


「それではっ」


 そのタイミングで、お茶をテーブルに置いたコリンナが軽い咳払いをした。


「あっ! すみません。気持ちがはやってしまって……」


 小さな笑い声に包まれる部屋で、軽くお茶を飲み談笑した後……調査は始まった。




 ペンを手に持ち、記録を取る準備を整えたフレッド。

 彼はメガネを一度持ち上げると、ジョアンナの正面の空間を真剣な眼差しで見つめている。


 そのあまりの気迫に、ジョアンナの肩に力が入った。


「大丈夫」


 隣のヴィンセントがジョアンナだけに聞こえるくらいの小さな声で、そっと囁いた。

 思わず顔を上げれば、いつもの優しい瞳が見える。


 ふっと肩の力が抜けたジョアンナは、【ログインボーナス】の画面を開いた。


 目の前に現れた、透明な板。

 画面と呼ばれるこの板は、ジョアンナ以外には見ることも触れることもできないものだ。


 もちろんフレッドやヴィンセントにも画面が見えないので、彼らは画面があると教えた場所と、ジョアンナの顔を交互に見つめている。


 ジョアンナはこれまでと同じように、画面が見えない彼らにもなるべく伝わることを意識しながら説明を始めた。


「画面を出しました。これから、[ログイン]のボタンを押します」


 そう言ってから、右手の人差し指で[ログイン]を押したジョアンナ。


────────────────────

 ログインチケットを1枚手に入れました

 コインを10枚手に入れました

────────────────────


 目の前には、見慣れたいつもの画面が見える。

 一日、一回。[ログイン]と書かれたボタンを押すと出てくる画面だ。


 それを[×]で閉じると、予想していた通りいつもと違う画面が出てきた。


────────────────────

 連続ログイン 1300日達成!

 「連続ログイン達成プレゼント」が届きました!


 ① [チャージ]と[コイン購入]が解放されました

 ② [ガチャ]で手に入るアイテムが増えました

────────────────────


「[チャージ]と[コイン購入]というものが解放されたようです。あと、[ガチャ]で手に入るアイテムが増えました」


 ジョアンナは目の前に用意された紙に、ささっと画面の内容を書いていく。


 その様子を興味深そうに、ヴィンセントとフレッドが覗き込んだ。

 フレッドの方は、我慢できない様子で軽く腰を浮かせている。


 待ちきれない様子のフレッドが視界に入ったジョアンナは、先に書き終えた紙を彼に渡すことにした。

 フレッドは子供のような笑顔を浮かべてそれを受け取り、食い入るように読み始めた。


 ジョアンナはもう一枚同じものを書いて、ヴィンセントに手渡した。


 それを二人で読んでいると、向かいの席からぶつぶつ呟くフレッドの声が聞こえてくる。


 調査でフレッドと顔を合わせる中でわかったことなのだが、彼は考え事をする時に独り言を言う癖があるらしい。

 声の大きさは集中の度合いを表していて、今のように大きな声で独り言を言っている時の彼は、周囲の音が何も聞こえないほど集中している。


 今もヴィンセントが声をかけているが、フレッドの耳にその声は届いていないようだ。


 これは長そうだ、と思いお茶に手を伸ばすと、同じタイミングでヴィンセントもお茶に手を伸ばした。

 思わず顔を見合わせた二人は小さく微笑み合った。




 フレッドが思考の海から抜け出してきたところで、メニュー画面の確認だ。


 これまでと同じように、メニュー画面に[チャージ]と[コイン購入]の二つのボタンが増えている。


「まずは[チャージ]の説明を見てみます」


 このメニュー画面にある全てのボタンの右上には、「?」と書かれた黒くて丸い小さなボタンがある。

 これを押すと、そのボタンの説明画面が表示されるのだ。


 ジョアンナは[チャージ]の右上にある[?]を押して、説明画面に目を通していく。


────────────────────

 ■チャージ

 画面にお金を投入すると、チャージすることができます

 ※ 1日にチャージできる金額に上限はありません


 ■使い方

 ① [チャージ]を押します

 ② 画面の案内に従い、お金を投入します

 ※ チャージしたお金は、いかなる理由があろうとも返金できませんのでご注意ください

 ※ お釣りは出ませんので、ご注意ください(投入したお金は全てチャージされます)

────────────────────


 どうやら、[チャージ]を押してお金を入れれば、その金額がどこかに保管されるようだ。

 そして、お金を保管すること自体を「チャージ」というらしい。


「まるで銀行のようだね」

「この[チャージ]も【空間魔法】の類いでしょうか?」


 ヴィンセントとフレッドは真剣な顔で話し合っている。


 春頃に行われたジョアンナのスキルの再調査で、何名もの研究者がリネハンの屋敷にやってきた。


 研究者たちの話では、[ガチャ]などで手に入るアイテムを保管している[アイテムボックス]は、【空間魔法】の一種である可能性が高いそうだ。


 今回の[チャージ]もお金という物をどこかに保管するものなので、【空間魔法】である可能性が高い。


 そんな話をしながら、三人はしばらく顔を見合わせるのだった。

日常回が続いていたのでヤキモキしている方もいらっしゃったと思いますが、久しぶりのスキル回です。

新しいボタンが解放されました!

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― 新着の感想 ―
廃課金への道が…?
ひゃーここでお預けですか〜先が気になります〜! コイン購入とか何〜!
やった! 続編が本格的に続編になってきたwww 番外やおまけ風が続いたので、期待!!
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