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役立たずスキル【ログインボーナス】で捨てられた令嬢が、本当の幸せをつかむまで【コミックス3巻5月発売】  作者: 碧井ウタ
続編

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01:結婚式の準備

ちょっと長くなったので、2つに分けました。

本日は2話の更新になります。

 ジョアンナとヴィンセントがイレゴから戻ってから、しばらく経ったある日のこと。


 ジョアンナの調合室には、器用にナイフを使って薬の材料を刻むヴィンセントの姿があった。


「ジョアンナ、このくらいの大きさで大丈夫かな?」


 隣で作業していたジョアンナは、彼の手元を覗き込んだ。

 乾燥させた植物の根はどれもほぼ同じ大きさで、これから作るポーションに使うのにぴったりだ。


「はい! ちょうどいい大きさです!」

「よかった。ここに置いてあるのは、全部切っていいの?」

「はい。お願いします!」


 慣れた手つきでナイフを使うヴィンセントを見つめながら、ジョアンナは思う。


 ──【剣聖】のスキルを持っているからかしら。やっぱり、ヴィンセント様は刃物の扱いがとても上手いわ。


 見事な彼の手の動きに、ジョアンナはしばし見とれていた。



 ここ最近のヴィンセントは父のケルヴィンから、領地に関する仕事を教わっている。

 慣れない執務を学びながら忙しくしている彼だが、短い時間でも空いた時間ができると、こうしてジョアンナの調合室に顔を見せる。


 そして、今日のように素材を切ったり、骨や角などの固い素材をすり潰したり、様々な作業を手伝っているのだ。


 スキルキャンディを食べることで【錬金術】のスキルを授かってから、ジョアンナはポーションや薬作りに夢中になっていた。

 一人で作れるポーションや薬も増え、最近ではリネハンの騎士たちが使うポーションを作ることも増えている。


 魔の森にいる魔物から、いつもリネハンを守ってくれる騎士たち。

 そんな彼らの役に立てていることに、ジョアンナはやりがいを感じていた。



 イレゴから戻ってから、二人は結婚に向けて動き始めた。


 式には、お互いの親戚や友人など多くの人を招待する。

 招待状の準備や、式場の飾り付けの打ち合わせなど、やることが多くて大忙しだ。


 ジョアンナは自分の結婚式の準備をするのは二度目になるわけだが、最初の時との違いをひしひしと感じていた。


 前回は当時の婚約者であったフィリップに相談しても、彼は生返事で「任せるよ」「それは素敵だね」と言うばかり。

 二人で参加する予定だった打ち合わせの日にフィリップが急な仕事で出かけてしまい、一人で対応することもしばしばだった。


 しかし、ヴィンセントはどんなに忙しくても、打ち合わせがある日には時間を作って、一緒に参加してくれる。

 それがジョアンナには嬉しかった。



 二人の結婚式は、屋敷から一番近い街にあるリネハンの大聖堂で挙げることになった。


 婚約時の取り決めでは、一年の婚約期間を経て結婚することになっていたが、今は八月の終わりである。

 どんなに大急ぎで準備を進めても、十月に結婚式を行うのは難しい。


 少し時期をずらして十二月などにできればよかったのだが、リネハン辺境伯領は北に位置している。

 冬は厳しい寒さと深い雪に覆われてしまうので、招待客がリネハンへ来ることができない。


 そのため、二人の結婚式は来年の春に挙げることになった。




 今日は結婚式の飾りつけに使う花を選ぶために、二人で街に来ていた。


「来年の春の結婚式ですと、こちらの花はいかがでしょうか」


 そう言って二人の前にいくつもの花を並べたのは、この花屋の店主の男性だ。

 セリーナの紹介で訪れたこの店は、驚くほど多くの種類の花を扱っている。


 国内の花が季節に関係なく手に入るだけでなく、この国には生息していない他国の花も多く取り揃えている。


 うっとりした表情で美しい香りを味わっていたジョアンナは、自分に向けられた視線に気がついた。

 顔を上げると、ヴィンセントが自分を見つめている。


 その瞳がなんだか甘い色を帯びていて、頬に熱が集まる。


「綺麗だね」

「はい。こんなに種類があると、どれにするか迷ってしまいますね」


 目の前に並べられた沢山の花をひとつずつ手に取りながら、寄り添って話し合う。

 二人の表情はどちらも柔らかく、幸せに満ちている。



 二人は自分の好きな色の花をひとつずつ選び、それを組み合わせてもらうことにした。


 ジョアンナの担当は白。

 ヴィンセントの担当は水色だ。


 二人は思い思いの花を手に取っていく。


「うーん……」


 二つの白い花を見つめながら、ジョアンナは声をもらした。


「その二つで迷っているの?」

「ええ。この大きい花も素敵なのですが、こっちの小さな花も可愛くて……」


 両手に花を持ち、真剣な顔で悩んでいる。

 そんなジョアンナをしばらく優しい目で見つめていたヴィンセントは、ふっと小さく微笑んだ。


 ――右の方かな?


 ジョアンナの表情を注意深く見ていると、右手の花を見ている時の方が瞳が輝いている。

 ヴィンセントは彼女が右手に持っている花を指さした。


「こっちの大きい花は、真っ白な花びらが美しくて香りも上品でいいね」

「はい。本当にいい香りで……この香りが式場に広がったら素敵ですよね……」


 二つの花で迷っていたジョアンナだったが、右手に持っていた大きな白い花にすることにした。

 ヴィンセントはジョアンナが選んだ花に合わせて、小ぶりで可愛らしい水色の花を選んだ。


「その二つを……こんな風に組み合わせて飾られると素敵ですよ」


 花屋の店主は、二人の選んだ花を目の前で組み合わせていく。

 大きな白い花の周りを包むように、水色の花が束ねられていき──あっという間に可愛らしい花束が出来上がった。


「わっ! 可愛い!」

「可愛らしいね。他の花を足して、もう少し華やかにできますか?」

「そうですね……全体にこの花を散らして……こんな感じにしてはいかがでしょうか?」


 店主は小さな青い花を手に取ると、バランスを見ながら足していく。鮮やかな青が足されることで、花束はぐっと華やいだ印象になる。


 その様子を見ていたジョアンナは、瞳を輝かせた。


「わー、所々に散りばめられた青い花がアクセントになっていて、素敵ですね」

「うん。いいね。ジョアンナ、これでお願いしようか?」

「はい!」


 顔を見合わせて微笑みあう二人の姿は幸せそのものだ。

 そんな二人を見て、向かいに座っていた店主は柔らかい笑みをこぼした。

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