迷宮1階
いざ迷宮へと意気込むネイド達は領主ロイカーに挨拶をしてから向かう事にした。
昨夜、緋波が大剣の確認が終わり、あの鍛冶屋に預けていた大剣を取りに行った。
緋波が大剣の修復具合を確認しネイドに合格点ですと報告、お礼と代金を支払い鍛冶屋を後にする。
これで、鍛冶屋の腕も確認できたので後は魔法薬をどうするかだが…………。
昨日の領主の話しでは流通面で監視があるらしい、最悪ターナに戻り自分達で購入しに行く事も考えておかないといけない。
そんな事を考えながら領主が来るのを部屋で待っている。
余りにも来ないので挨拶を無しで行こうか思い始めた頃に領主が現れた。
「いや~済まない。待たせてしまった、ネイド殿。
いざ迷宮攻略への士気を下げてしまっては申し訳ない」
部屋に入るなり、ネイドを見つけて話しかける領主。
いつものドッシリと構えてた雰囲気は微塵もなく、何かに追われているように焦ってみえた。
領主はネイド達と足早に握手をして部屋を後にする、ネイドは首を傾げながらも挨拶が済んだので迷宮に向かった。
屋敷の使用人に聞いてみたのだがソニア達は戻ってきてはいなかった。
順調に攻略が進んでいるんだろ、怪我があったとはいえ迷宮の半分は攻略していたのだから心配しすぎだったらしい。
昨日、迷宮に行った道を行くネイド達。
洞窟の前で警備をしている人に挨拶をして中にはいる。
洞窟を奥に進み迷宮の扉が見えてきた。レヴィは初めて見る迷宮の扉に興味津々のようなので、勝手に触れないようにと釘をさす。
「わぁ~、扉です。
これが迷宮なんですか?」
「えぇ、扉を開けると飛ばされるから1人で開けないこと」
扉の近くにいたレヴィを気づかい緋波が注意をする。
ネイドは扉を前にして深呼吸をした。
扉を眼前に見据え、ネイドは緋波達を確認する。
全員が頷き扉を開けて中に入るとさっきまでいた洞窟とは違う場所にネイド達はいた。
「久しぶりだね、この感覚。
まずは回りを確認して」
「うむ、近くに敵はいないようじゃ」
「こっちも大丈夫」
迷宮に入りレヴィを守るように囲み辺りを確認する。
足元には若草がはえ、所々に背の高い草がはえている。
3人が慎重に遠くに視線を向けて安堵の息を吐くとネイドだけレヴィに向き直り話しかけた。
「レヴィ、迷宮に入って最初に注意するのは迷宮が1つの広大な部屋になっていないか確認することなんだ」
「1つの部屋?ですか」
「そう。理屈は解らないが、迷宮は上に40階上がるか、地下に40階下がるかなんだけど稀に40階分の魔物が1つの部屋に纏まっている場合がある。
そうなると迷宮の全魔物を相手に戦闘をしなければならないから危険だよ」
「それは嫌です。お兄さん、迷宮はこんなに綺麗な場所なんですか?」
「いろんなタイプが存在するけど、今回は綺麗な方だと思うよ」
ニッコリと笑顔でネイドはレヴィに答える。
周囲の確認が済んだので、次は魔物を警戒しつつ次のフロアーに移動する為の仕掛けを探す。
見渡す限り障害物はなく、良く成長した草が身を隠す役割をしている。
「ネイド様、どうしますか?」
緋波は腰を低くして辺りを警戒する中でネイドに指示を仰ぐ。
「壁が無いから部屋の広さが解らない。
ひとまず前に進もうか」
ネイドの指示を受けて緋波が先頭ですすむ、その後ろにレヴィとネイドとウズメ。
水玉は自由にさせる事にしている。
先頭を行く緋波が歩みを止める。
「レヴィ前を見て、あの草むらの辺りを」
「…………!動きました。」
確かにレヴィの観ている草むらが不自然に揺れている。
気づかれないように緋波とレヴィが草むらに近づく。
そっと草むらのなかを見ると狼の様な魔物が2匹、寝ている。
緋波はレヴィに静かに先制攻撃を指示する。
「おや?主様よどうやら殺るようじゃな」
「そうだね。緋波さんが判断したのなら大丈夫だよ」
レヴィは静かにレイピアを抜くと一番近い魔狼の首を狙い鋭い突きをみせる。
確かな感触を得てレヴィはもう一度、狙いをつけて攻撃をした。
最初の攻撃で目を覚ました2匹の魔狼、攻撃を受けた1匹は虫の息。
レヴィの2撃目が胴体を貫いたところで、もう1匹が大きく距離をとってレヴィを睨み付ける。
サラサラと崩れる魔狼を無視してレヴィはもう1匹の魔狼の攻撃に備える。
「ナイス!レヴィ。その調子」
「はっはい!頑張ります」
魔狼を正面に見据えてレヴィはレイピアを構える。
それに反応したのか魔狼が真っ直ぐに突っ込んできた。
口を大きく開けて鋭い牙を見せる、レヴィは慌てて魔狼を突く。
レヴィのレイピアは簡単に魔狼の牙に受け止められた。
恐怖にかられてレヴィはレイピアを乱暴に魔狼の口から抜ことするも、離さなかった。
「ヒッ!う~~ん~ 離しなさい~」
力いっぱいに引くレヴィ。
逆にレヴィからレイピアをもぎ取ろうとする魔狼、一進一退の攻防は緋波の横からの攻撃であっさりと終わった。
「恐怖に負けたら死ぬよ」
「…………はぃ」
緋波の忠告に意気消沈するレヴィをネイドは後ろから見ていた。
「何か声をかけんのか?」
「大丈夫。レヴィは強い子だよ」
横から聞こえたウズメの声に自信を持ってネイドは答えた。
初の戦闘で疲れ気味のレヴィを水玉が気遣いつつ、先に進む。
ひたすらに真っ直ぐに進み、部屋の壁を確認する。
「広い。予想以上かも」
「緋波さん出発地点からの距離は?」
「約250メートル。その間に戦闘回数は4回」
「ウズメ、アレを見た?」
「いいや、見ておらん。
こっちは外れじゃな」
「そう、少し休憩にしよう。
レヴィは座って休んでていいよ」
ホッとした表情でレヴィは地面に腰を落とした。
横に水玉がいたので護衛を頼んで緋波の近くに行く。
「緋波さんどう?」
「そうですね、狼や兎の魔物だけのようです。
レヴィの相手には十分かと」
「そっか。その辺の魔物は押さえてあるから、新種を見たら教えてね。
それとレヴィは予定通りに鍛えよう」
「でわ、さっさと次の部屋に行く為の仕掛けを探すかの」
これで休憩は終わりとばかりにウズメが宣言をするとレヴィを立ち上がらせて、壁際にそって歩く。
割りと直ぐに魔物が3匹いたので、緋波が2匹レヴィが1匹を受け持ち倒した。
まだまだ、ぎこちなさは残るもののレヴィは魔物に対応ができているとネイドは判断をした。
「だいぶ慣れたようだね。
この分だと次に行ってもいいかな?」
「大丈夫だと思われます、ネイド様」
ゆっくりと壁際を進みながら目的の物が見つかるまで歩き続ける。
緋波から許可もでたので、次に進みたいと思っているとウズメが左の方で浮いている光る玉を見つけた。
「おっ!あれじゃな、主様よ近くに行こうでわないか」
いそいそと玉に近づくウズメとレヴィ。
「わぁ!何ですかコレ。可愛いです」
レヴィは目の前に浮かぶ光る玉を見つめる。
「それはじゃな、次の部屋に行く為の物じゃ」
ネイドはレヴィに見ててねと言って、光る玉を右手に掴み魔力を少し籠める。
すると光る玉が割れたので手を離すと地下に向かう階段が現れた。
「これで次に行けるようになる」
「すごいです。こんな仕掛けなんですね」
感心しているレヴィに、階段を降りることを告げてネイド達は下に向かって歩いていった。




