第四話 前半:2次試験の先にあるもの 後半:ありがとう、相棒。
これは主人公である青木良平が小説家になる以前の過去を振り返る第1章の最終回である。良平にとってこの過去が最も自分自身が変わっていくきっかけとなると思います。
「試験終了!」という試験監督の終了の合図が出るときには、すでに字数通りの作文を完成させてあって文字は丁寧に楷書であると確認できた。会場を出て小林さんに自信をもって1次試験に挑むことができたことを伝えられた。「明日は2次試験だ。1次試験だって自信もってできたんだ。絶対に合格してるし、2次試験もうまくいくよ。」「母ちゃんと小林さんが応援してくれたから僕は自分をもって試験に挑めました。絶対合格してその期待を裏切らないように全力を尽くします。今日はありがとうございました!」「明日会場で1次試験の合格番号で君の番号あってからでいいよ。俺への感謝は。」なぜかそのときの彼の表情はあまり嬉しそうではなかった。小林さん以外は夕日の輝かしい光に照らされているのになぜか小林さんだけその陰と化したようだった。そこからはどこか彼自身が抱えこむ葛藤や劣等感が伝わってきた。本当に自信がなかったのは僕ではなくて、小林さんだったのだろう。そのときすぐに僕に自信をくれた彼を励ましてあげられなかった。まだ合格したとは決まっていないからだ。すべては明日決まる。運命の日であり、少しオーバーに表現するなら人生の分岐点でもある日だ。明日に備え、今日の日記はここまでにしておくことにした。翌日、1次試験合格番号の読み上げが試験会場にて発表された。「1番、2番・・・」僕は5番だ。ドキドキする。「5番、6番、7番、8番、9番、10番、13番、76番、以上が1次試験合格者10名の番号でした。これより1次試験合格者は2次試験を開始します。合格者以外の方は速やかにお帰りください。」「合格した!」嬉しくてつい声が出てしまった。だが、この選ばれし10名はこれから2次試験があるのだ。決して気を抜かないように覚悟を決めて自分に自信をもって精神的な準備はできた。「試験開始!」開始合図と同時にペンを握り、集中力を効かせて文章を書き始めた。すると、字数が1次試験よりも微妙に増えていたが、特に苦戦することなく制限時間の半分をきるときにはすでに作文を完成させていた。見直しも制限時間内でできた。気づくと試験終了12秒前になった。そのとき、自分の誤字に気づいた。作文中の「自分の憧れの野球選手である長島茂夫•••••」長島の「島」は「嶋」に直した。そして2秒前ギリギリで健二の「夫」が間違っていることに気づき、急いで「雄」に直した。まさに危機一髪だった。誤字があると減点対象だからだ。もしも、1点減点されると僕と募集人員の人が1点差である場合は同点だが、スカウト人員は同点である場合はその時点で試験規則によりギリギリ不合格になってしまうのである。今思うと本当に危なかった。あの後、僕は無事に2次試験に合格し、唯一のそのときの選抜合格者となった。現在は僕は小説家となり、高校を退学した。あの選択に後悔はない。小説家の新人であるライバルは2人いる。僕が合格した3ヶ月後の選抜で見事合格した佐々木篤と僕が合格する3ヶ月前の選抜で合格した伊藤沙耶先輩がいる。同じ2006年合格世代では小説家としての総合的な評価が高いのは伊藤先輩だ。僕にとって一番納得できないのは篤と僕の総合的な評価が同レベルであることだ。僕の方が3ヶ月先に小説家デビューして先輩なのに普通にタメ口だし、いつも伊藤先輩と僕を比較してきて僕を見下してくる。しかし、僕はそんな2人との人間関係なんて眼中になかった。小林さんと共に誰よりも有名な日本一の小説家になるんだ。そう誓ったのは去年の秋だった。あの日は土砂降りで空は雨雲に覆われていて、昼なのに外が暗闇なのは不気味だった。普段は雨で暗いのなんて気にならないのに。母ちゃんが僕の部屋に入ってきた。「良平、小林さんが交通事故にあって危篤状態だって!」その知らせ聞き、僕は色を失った。急いで病院に向かった。そこにはすでに小林さんの家族がいた。「小林翔吾さんは交通事故で頭に強い衝撃を受けました。我々も手を尽くしました。しかし、残念ながら・・・」「そんな・・・」僕は絶望した。もう小説家を目指すことを辞めようとしていた。ある日、小林さんのお兄さんと小林さんの墓参りであった。「翔吾は心配だったんだろうな。君のことが。」「どういう意味ですか?」「翔吾はいつも不安だった。本当に君が小説家を目指してくれてるのかって。俺にLINEしてきたときもあったよ。でも、君は自信をもって試験に挑み、見事合格したよ。翔吾は最期に良平は俺の誇りだって言ったよ。あいつなら絶対に日本一の小説家になれる。死んだ後もずっと応援してるよ。良平の夢を。」「小林さんがそんなことを・・・」僕は少し泣きそうになったが、小林さんの前で弱い姿を見せたくなかった。「僕は小林さんの期待に応えられるように日々、誠心誠意努力し、絶対に日本一の小説家になって見せます。どうか、見ててください。小林さん、ありがとう。」と小林さんへの思いを伝えた。
第2章からは主人公である青木良平が小説家となった後の話を書こうと思います。相棒である小林翔吾の期待に応えられるように良平は日本一の小説家を目指していく。




