文化祭準備で居残りの回
9月下旬。
文化祭まであと一週間。
放課後。
美術科棟。
まだ帰る生徒は少ない。
教室のあちこちで制作が続いていた。
歩美もその一人だった。
「終わらない……」
キャンバスを見つめる。
作品はかなり完成に近い。
しかし、
細かい部分が気になってしまう。
「歩美、それ今日で三回目」
華子が言った。
「でも気になる」
「分かるけど」
華子も自分の作品を描いている。
大蔵海岸の夕景。
空の色を何度も塗り重ねていた。
その頃。
あかり。
「疲れたー!」
机に突っ伏す。
「まだ一時間しか経ってない」
奈緒が言う。
「十分長い!」
文化祭まで一週間。
みんな少し疲れ始めていた。
夕方。
窓の外が赤く染まる。
「きれい」
歩美が窓を見る。
明石海峡大橋も遠くに見えた。
「スケッチしたくなるね」
華子が言う。
「今は無理」
締切が近かった。
午後六時。
先生が教室へ入ってくる。
「まだ残ってるのか」
「はい」
「無理するなよ」
そう言いながらも、
先生は作品を見て回る。
歩美の絵の前で立ち止まった。
「家庭菜園か」
「はい」
「今年らしくていいな」
少し照れくさかった。
放課後七時。
ようやく作業終了。
「終わったー!」
あかりが叫ぶ。
「まだ完成じゃないでしょ」
奈緒が言う。
「今日は終わった!」
それは間違っていなかった。
帰り道。
歩美たちは暗くなった校門を出る。
「お腹空いた」
「私も」
「ラーメン食べたい」
あかりは元気だった。
明高荘到着。
談話室。
さやかがいた。
「おかえり」
「ただいま」
「遅かったね」
「文化祭準備」
歩美が答える。
すると、
テーブルの上に大きな皿が置かれる。
「差し入れ」
さやか特製の野菜たっぷり焼きそばだった。
「やったー!」
あかりが真っ先に反応する。
「食べ物には早い」
奈緒が呆れる。
収穫した大葉も入っている。
「おいしい」
「疲れた後だから余計に」
華子も笑う。
その様子を見て、
さやかも満足そうだった。
文化祭まであと一週間。
作品も展示準備も佳境に入る。
そして歩美たちは、
まだ知らなかった。
文化祭前日に、
もっと大変なことが待っていることを。




