七夕の回
7月7日。
朝。
明高荘の玄関前には、大きな笹が立てられていた。りんがご近所さんからもらってきたものだ。
「おおー!」
最初に反応したのはちかだった。
「七夕だ!」
「今年も飾るよ」
さやかが色とりどりの短冊を用意する。
赤。
青。
黄色。
緑。
紫。
「何お願いしようかな」
歩美が言う。
「成績アップ」
華子が答えた。
「即答だね」
午前中。
明高荘の住人たちが次々と短冊を書く。
歩美。
『楽しい高校生活が送れますように』
華子。
『読みたい本を全部読めますように』
「現実的」
歩美が笑う。
純子。
『テストで平均点以上取れますように』
優子。
「まず勉強しなさい」
純子は何も言い返せなかった。
あかり。
『毎日楽しく過ごせますように』
奈緒。
『健康第一』
「おじいちゃんみたい」
あかりが言う。
「大事だから」
午後。
仕事組も帰ってきた。
涼子。
『仕事で失敗しませんように』
初美。
『有給が取りやすくなりますように』
恵子。
『朝スッキリ起きられますように』
「切実だね」
全員がうなずいた。
303号室。
つむぎも短冊を書く。
『朝起きたらお金持ちになっていますように』
「願望が強すぎる」
涼子が言う。
夕方。
最後はちかの番。
みんなが見守る。
「何書くの?」
あかりが聞く。
ちかは真剣な顔で考える。
そして。
『とうもろこしがいっぱい食べられますように』
書き終えた。
静寂。
「ちからしいね」
歩美が笑う。
「大事だから!」
実際、大事だった。
その時。
さやかが笹に短冊を結ぶ。
夜。
みんなで笹を眺める。
風に揺れる短冊。
夏の夜空。
「願い叶うかな」
ちかが聞く。
「叶うといいね」
歩美が答える。
「とうもろこしも?」
「たぶん一番早く叶うと思う」
華子が言った。
みんなが笑う。
その時。
さやかが畑を見る。
「そういえば」
「第二弾のとうもろこし、そろそろ収穫できそう」
「本当!?」
ちかが飛び跳ねる。
どうやら今年の七夕で一番早く叶いそうな願い事は、
ちかの短冊だった。
笹が風に揺れる中、
明高荘の住人たちは少しだけ夜空を見上げた。
それぞれの願いが叶うことを願いながら。




