キュウリが採れすぎる回
6月下旬。
朝。
「またある!」
ちかの声が庭から聞こえた。
歩美が窓を開ける。
「どうしたの?」
「キュウリ!」
家庭菜園を見る。
確かに。
昨日収穫したはずなのに、
また大きなキュウリが何本もぶら下がっていた。
「早くない?」
華子が言う。
「キュウリは成長が早いからね」
さやかが答える。
放課後。
みんなで収穫。
一本。
二本。
三本。
四本。
「まだある」
五本。
六本。
「多い!」
あかりが叫ぶ。
「昨日も取ったよね?」
奈緒が聞く。
「取った」
「その前も」
「取った」
全員がキュウリを見つめる。
どう見ても供給過多だった。
その頃。
201号室。
純子が収穫かごを見る。
「キュウリ祭り?」
「違う」
優子が言う。
「キュウリ地獄?」
「それもちょっと違う」
夕方。
弓木家のリビング。
収穫したキュウリが並べられていた。
一本。
二本。
三本。
まだある。
「どうしよう」
歩美が言う。
「食べる」
つむぎが答えた。
「それはそうなんだけど」
あけみは浅漬けを作る。
涼子はサラダにする。
初美は冷やして丸かじり。
恵子は味噌を付けて食べる。
それでも減らない。
「強いなあ」
華子が感心する。
キュウリの生命力だった。
その時。
ちかがひらめいた。
「配ろう!」
「誰に?」
「明高荘のみんな!」
すでに全員持っていた。
数分後。
各部屋の冷蔵庫。
キュウリ。
キュウリ。
またキュウリ。
「どこ開けてもいる」
奈緒が言う。
翌朝。
また収穫。
「増えてる!」
「なんで!?」
あかりが叫ぶ。
キュウリは収穫を続けることで次々に実を付けやすくなる。
「無限じゃない?」
「たぶん有限」
さやかが答えた。
夜。
夕食。
キュウリのサラダ。
キュウリの浅漬け。
キュウリスティック。
「キュウリ率高い」
歩美が言う。
「夏って感じするけどね」
華子が笑う。
その時。
ちかが庭を見た。
「あ」
「どうした?」
「トマトも増えてる」
全員が静かになった。
そして。
さやかが一言。
「次はトマト祭りかな」
誰も否定できなかった。
こうして明高荘は、
しばらくの間キュウリ中心の生活を送ることになったのだった。




