オマケ・明高荘・大じゃんけん大会!
ある土曜日の午後。
談話室では歩美がホワイトボードを立てていた。
「みんな、注目ー!」
住人たちが集まる。
華子が腕を組む。
「また何か思いついたのね。」
「その通り!」
歩美は大きく書いた。
**『第一回・明高荘じゃんけん大会』**
真理子が目を輝かせる。
「優勝したら何かあるんですか?」
歩美はニヤリと笑う。
「優勝賞品は……」
袋を取り出す。
「高級プリン十個!」
「おおーっ!」
談話室がどよめく。
ちかは飛び跳ねた。
「プリン!」
つむぎも小さく反応した。
「……プリン。」
華子は苦笑する。
「みんな食べ物には弱いわね。」
りんがルールを説明する。
「一対一でじゃんけんをして、負けた人は応援係になります。」
「シンプルですね。」
有紀が安心したようにうなずく。
「それじゃあ一回戦!」
歩美対真理子。
「最初はグー!」
「じゃんけん!」
歩美はグー。
真理子はチョキ。
「負けたー!」
真理子は笑顔だった。
「応援します!」
「切り替え早い!」
華子がツッコむ。
次はあかり対奈緒。
「じゃんけん!」
二人ともパー。
「あいこ!」
もう一度。
またパー。
さらにもう一度。
またパー。
歩美が笑い始めた。
「息ぴったり!」
奈緒が困った顔になる。
「変えようと思ったんだけど……。」
あかりもうなずく。
「私も。」
五回連続あいこ。
最後は奈緒が勝利した。
二人は笑いながら席に戻った。
続いて、みなみ対初美。
「じゃんけん!」
みなみがチョキ。
初美がパー。
「みなみちゃんの勝ち。」
初美は笑った。
「社会人、敗北です。」
恵子が言う。
「仕事では勝ってるから。」
「何と戦ってるんですか。」
華子がすかさず返す。
その頃。
つむぎはソファでじっとしていた。
歩美が呼ぶ。
「つむぎさん!」
「……。」
「出番ですよ!」
つむぎはゆっくり立ち上がる。
対戦相手はちか。
「負けないよ!」
「うん。」
「じゃんけん!」
ちかはグー。
つむぎはチョキ。
「やったー!」
ちかは大喜び。
つむぎは静かに拍手した。
「おめでとう。」
華子が目を丸くする。
「自分で拍手してる。」
歩美が笑う。
「優しい!」
さやかは家庭菜園の作業を終えて参加した。
相手はしずく。
「お姉ちゃん、勝負!」
「いいよ。」
「じゃんけん!」
二人ともグー。
またグー。
またグー。
歩美が数え始めた。
「六回!」
華子も驚く。
「姉妹ってこんなにそろうの?」
ようやくしずくが勝った。
「ありがとうございました。」
さやかは深々とお辞儀。
「試合じゃなくて武道大会なの?」
準決勝。
歩美対奈緒。
「じゃんけん!」
歩美、チョキ。
奈緒、グー。
「負けたー!」
歩美は床に寝転がった。
「主人公なのに!」
華子は冷静に言う。
「じゃんけんに主人公補正はない。」
決勝戦。
奈緒対みなみ。
談話室は静まり返る。
「最初はグー!」
「じゃんけん!」
奈緒はパー。
みなみはグー。
「奈緒ちゃん優勝!」
拍手が起こる。
歩美は賞品のプリンを手渡した。
「おめでとう!」
奈緒は少し困ったように笑う。
「十個も食べられないから……。」
プリンをみんなに配り始めた。
「歩美先輩、どうぞ。」
「ありがとう!」
「真理子ちゃんも。」
「やったー!」
「あかりさんも。」
「いただきます。」
気が付くと、住人全員にプリンが行き渡った。
最後に奈緒の前には、一個だけ残った。
歩美が笑う。
「優勝したのに、一個しか残ってない!」
奈緒も笑った。
「みんなで食べた方がおいしいですから。」
そのとき、つむぎが静かに言った。
「……私のプリン。」
全員が見る。
つむぎの前だけ空っぽだった。
りんが首をかしげる。
「あれ? 配ってなかった?」
ちかが「あっ!」と声を上げる。
「さっき私、二個食べちゃった!」
談話室が一瞬静まり返る。
つむぎはゆっくり立ち上がり、小さくつぶやいた。
「……プリンが消えた。」
歩美は笑いながら冷蔵庫を開けた。
「大丈夫! 昨日買っておいた予備があるよ!」
箱を開ける。
中には何も入っていなかった。
歩美が固まる。
「……ない。」
華子がゆっくり歩美を見る。
「歩美。」
「な、なに?」
「昨日の夜、『予備だから食べてもいいよね』って言って食べてたの、誰だった?」
歩美は目を泳がせる。
「あ……私だ。」
一秒後。
「**歩美ーーーっ!!**」
談話室いっぱいに笑い声とツッコミが響き渡り、その日一番笑っていたのは、結局プリンを食べ損ねたつむぎ本人だった。




