父と母の馴れ初め(7)
学校が始まったこともあり、更新が不定期&遅れています。申し訳ありません。
出来るだけ更新できるように頑張ります!
ゆっくりと馬車の扉が開く。
途端に二人の女性が馬車に駆け寄ってきた。べドフォード公爵家の使用人の方だということは服装から分かったけれど、様子がなんだかおかしい。
お二人とも満面の笑みを浮かべて何かを楽しみにしているような。
固まっているうちに侍女服をきた女性が扉に張り付いた。
「アーサー様!どうでした、か……」
「サラ固まってないで!アンナ様はどんな方、なの
…………」
わたくしと目が合った瞬間、お二人とも固まってしまわれた。気まずくて公子様の膝から降りようとするけれど、がっちり腕が回っていて降りることは出来なかった。
真っ赤になりながら挨拶をする。
「は、初めまして。アンナ・ラルッツェと申します……。」
それでもお二人は硬直したままで、顔から火が出そうだった。
わたくしも初めは断ったのです!恐れ多いと、申し訳ないからと、大丈夫だからと!でも、公子様が…………
「ようやく私のものになったんだ。離したくない。」
公子様が私を抱えたまま馬車を降りる。
こう言うから!
顔に両手を当てて隠した。もうお二人共唖然呆然といった顔でわたくし達を見つめていた。
公子様はわたくしを抱えたまま馬車に乗り込んだ後、ぐずぐずと泣き続ける私の背をずっと摩ってくださった。そうしてわたくしは落ち着いた頃にようやくその姿勢を理解して、反対側に公子様の従者の方もいるということもあり、恥ずかしすぎて降りようとしたが先程の台詞をそのまま言われ、降りるに降りれなくなったのだった。
使用人の皆さんの視線を痛いほどに感じながら邸宅の中に入る。ラルッツェ家とは比べ物にならないほどに大きかったが、想像よりも派手ではなく、落ち着いた雰囲気にほっとした。
ここで豪華すぎる品々を見れば緊張で気絶する自信がある。
「アーサー?」
女性の声がした。 それまで足を止めなかった公子様が初めて足を止め、ゆっくり私を下ろす。公子様にかけて頂いた外着がずり落ちないように押さえながら振り返ると、いかにも上品でく位の高い貴婦人がいらっしゃった。
まさか……
はっとして膝を折った。
「母上。彼女がアンナ・ラルッツェ嬢です。」
「アンナ・ラルッツェです。お目にかかれて光栄でございます。べドフォード公爵夫人。」
「……。」
沈黙がはしった。
歓迎されていないのかもしれない。わたくしは男爵家の生まれだし、こんなはしたない服を着ていて、肌も髪も手入れが行き届いていなくて……
公子様は求婚してくださったけれど、もしかしたら………………
どくどくと心臓の音が耳に響いている。ドレスの裾を掴む指が震えた。
「良い子ではありませんか。でかしましたね。アーサー。」
「そうでしょう。」
驚いて顔を上げる。公爵夫人は微笑んでいた。先程までの圧力さえ感じてしまうような雰囲気とは打って変わり、自分の子供を見つめるような温かい眼差しが向けられていた。
体の緊張が解けて、ふらっと体が傾ぐ。
「! アン……」
公子様の手がわたくしの体に回る前に公爵夫人が抱きとめた。ぶわっと汗が吹き出る思いだった。
「もっ、申し訳ございません!!公爵夫人……!」
「いいのですよ。そんなに怯えなくても。」
すぐに離れようとすると、逆にそのまま抱きしめられた。淑やかで柔らかい香りに包み込まれる。
「あなたのことはアーサーから聞いていますからね。今更性格を疑いはしないわ。それに、私の姿を見ただけで公爵夫人だと判断出来るその知性。姿勢の美しさ。あなたは立派よ。大丈夫。」
収まったはずの涙がまた溢れ出す。どうしてべドフォード公爵家の皆様はこんなにもお優しい方々でいっぱいなのかしら。今まで、こんなにわたくしに愛をくれた人は、誰一人としていなかったのに。
「まぁまぁ痩せてるわね。あの糞女、ろくに食事を与えなかったのね。大丈夫よ。ここではたっぷり食べられますからね。」
「く、くそ……?」
「ああ、いいのよそこは。真似してはいけません。」
ぐいぐいと腕を引っ張られ、メイドの皆さんに囲まれる。公子様と離れることになんだか不安を感じて振り返ると目が合った。
公子様は幸せそうな笑顔を浮かべてわたくしを見つめていた。危険がないことも、ここには優しい人達しかいないことも分かっているけれど、心細くなってしまう。
「一度浴槽に使ってしまいましょう。その後に軽く髪と肌と爪の手入れをしましょうね。ドレスも、大変お似合いでいらっしゃいますが、アンナ様のお好みのものに変えましょう。」
お風呂……。
さすがに、ついてきてはくれないわよね……。
出会ってまだ一日も経っていないのに、わたくしを救ってくれた公子様は、わたくしの中でとても大切で、離れたがい存在になっていた。
「まぁ!もう坊っちゃまと離れるのが寂しくなったのですか?」
私の周りにいたメイドさんの一人がそういった。かっと顔が赤くなったのが分かった。
「え、いやその……」
「そ、そうなのか?アンナ嬢。」
公子様が詰め寄ってこられる。正直に頷くと、公子様は真っ赤になって、そして一瞬停止して、目線をそろっと下にやって……いやだめだやめろというように首を振り、遠くを見つめ、何かを想像するような顔をしたと思えばもっともっと顔の赤みは増してゆき……
バタンッ
倒れた。
「こっ公子様っ!?」
「クリス、後片付けを。」
「かしこまりました。」
「全く、嫌ですねぇ、これだから男の子は……」
「どこを想像したんだか……」
「あっあの!公子様は大丈」
「「「だいじょーぶ!!」」」
公爵家の女性の皆様は満面の笑みで頷き、わたくしを引っ張っていってしまいました。




