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初恋しましたが気づきませんでした!(2)


 「じゃあ、おやすみオリビア。」


 「はい………お休みなさいませ。」


 お嬢様がベッドのなかで手をふってくれている。

 遠慮がちにそれに返すと、お嬢様が安心して目を閉じた。

 それを確認してからそーっとドアを閉める。


 「………………。」


 ドアに手をついたまましばらく硬直する。

 あたりはもうしんと静まり返っていて、遠くに見えるお坊ちゃまたちの部屋の電気も消えていた。

 普段なら、この暗さが恐くてお嬢様のかわいさで気をまぎらわせながらさっさと帰るところだけど、今日は違う。

 考えているのはもちろん、さっきのお嬢様の発言。

 

 レイヴァンに会えなくなることが嫌

 レイヴァンにもっと会いたい

 レイヴァンをいつも探してしまう


 思い出して改めて真っ青になった。


 

 どうしよう………。お、お嬢様が………………



 「は、はつこ………………。」


 口にしたら気絶しそうになり、頭を振ってからよろよろと歩きだす。

 焦るがあまり自分の部屋とはまったく違う方向へと歩いていっているが、それに気づかないくらいに動揺していた。

 

 小さい頃から一緒にいたあのお嬢様が、可愛い声で私の名前を呼んでスカートの裾を引っ張っていたあのお嬢様が、勉学も魔術も剣術も作法も何でも出来て、使用人にもお優しくて精霊にも愛される、ほんとうにほんとうにほんとうにほんとうにお美しくて可愛らしいあのお嬢様が、


 はあっと息を飲んで口元に手を当てる。



 「レイヴァンに、………恋心を………………っ」


 悲しみとも嬉しさともとれない思いが胸のなかに沸き上がる。


 お嬢様が初恋をなされたことはとても嬉しいけど、

 それ以上にお嬢様が私たちから離れていってしまうことが悲しい。


 だって、お嬢様に惚れない男なんてこの世にいるわけないんですもの………………っ!


 きっと、お嬢様があの思いをお伝えになった時なんか、レイヴァンは卒倒するぐらい喜んで、そこ美しさに目が眩んで、お嬢様を、お、お嬢様を………


 家に監禁してしまうんだわきっと………!!!


 そもそもレイヴァンってどんな方!?


 お嬢様が、とんでもない美形で、髪と目の色は夜の薔薇のような色で、クララ様と同じくらいの年齢だと思う、とおっしゃっていたけれど、とてつもない童顔で実は60のおじいさまだったりしたら………。


 「そもそも剣術大会に顔を隠して出場することからして怪しいわ………!最初からお嬢様に近づく目的だったんじゃ………。」


 想像して青くなるが、はっと考え直す。


 「………いえ、お嬢様が恋したお相手ですもの。絶対そんな人じゃありませんわね。」


 壁にもたれながら拳を握り混んだ。


 そう。お嬢様は人を見る才もある。一見親切そうな人でも、実は詐欺師だったというのを見抜いたこともあります。そんなお嬢様が悪い男にひっかかる、あまつさえ恋をするだなんてありえない!

 お嬢様が恋までするということは、それほどまでにレイヴァンは清く正しく誠実な男性だったということよね。


 そうなのであれば、主の恋路を応援するのが仕える者としての使命………!


 お嬢様、私オリビア、精一杯恋成就のために尽力させていただきます!!

 



 と誓い顔をあげた瞬間、



 「まあ、リリーが初恋?」



 「おっ奥………………!?」


 ガウンを肩にかけているということは、お嬢様の様子を見にこられたのでしょう、驚いた顔をしている奥様が立っておられました。






 「どうぞ。」


 「奥様、そんなことは」


 「いいのよ。」


 奥様の部屋に連れてこられ、衝撃でぼーっとしてる間に、奥様にお茶を淹れさせてしまった。

 あわてて頭をさげる。


 「申し訳ございません。」


 奥様はもちろんとてもとても優しい方だから、いいんですってば、と言ってから身をのりだしてきた。


 「あなたがそんな風になるってことは、本当にリリーが初恋したのね?」


 楽しそうです。


 これが旦那様じゃなくてよかった、と息をつく。旦那様だったら間違いなく卒倒しているはず。

 奥様はお嬢様が社交界へでて男性と交流することを比較的推奨しているから、きっとこのお話もすごく嬉しいことなんだろう。


 「………はい。恐らく。相手はレイヴァン、という方で………」


 「レイヴァン?どんな人なのかしら。」


 お嬢様はレイヴァンのことは私以外にお話にならなかった。

 レイヴァンが剣術大会や路地裏の乱闘で出会ったような人だから、みんなに言うと心配しそう、と言っていたのだ。

 だから奥様はレイヴァンについてはなにも知らない。

 私が言ってもいいのだろうか、とも思うけれど、これ以上はとても抱え込みきれないし、お嬢様がレイヴァンとの関係によって危害を加えられることがあってはならない。

 奥様は普段ほんわかしていらっしゃるけど、実はかなりの食わせ者。事業もいくつか展開なさるすごい方だから、奥様にさえ言っておけば、お嬢様が危険な目に遭うことはないはず。

 と決意し、口を開いた。








 

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