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リリアンというわたし


 「リリー!お帰りなさい………!怪我しなかった!?」


 家の中に入ると、ガウンを肩にかけたお母様がパタパタとはしり寄ってきた。


 「はい。お母様。」


 念のためお医者様に見てもらった方がいいんじゃないのか、と、お母様と同じく来ていたライお兄様が話しかけてくれていたけど、私は首を振ってオリビアのほうを向いた。


 「オリビア、私、今日は疲れたからもう寝るわ。」


 「え………はい、かしこまりました。」


 オリビアの返事を聞いて、お母様たちに頭を下げてから自分の部屋に向かった。お母様達が困惑しているのはわかっていたけれど、それを気にする余裕はなかった。












 「お嬢様?どうなされたのですか?やっぱりお怪我でもされたのですか?」


 部屋に閉じ籠った私をオリビアが心配して声をかけてくれた。力のない声で変事をする。


 「入って………」


 「はい………。」


 入ってきたオリビア窓近くの椅子に座ってぼーっとする私を見て眉をひそめたのが見えた。そしてティーセットをのせたトレーを近くのテーブルにおく。


 「暖かい紅茶を持ってきました。」


 コトンと静かな音をたてておかれたカップを見つめて、口を開いた。


 「私ね………自分のこと、過信しすぎていたみたい。」


 「………。」  


 一度話し出すと止まらなかった。溜め込んでいたことが次々と溢れだしてくる。


 「魔術もうまくできなかったし、剣術だって、私今日自分より少し年上くらいの男の子に負けたの。ほんきでやって、負けたの。」


 オリビアにはそう。いつも何でも話してしまうの。話していると涙まで出てきてしまった。オリビアが困るから泣きたくなかったのに。

 オリビアが私の足元に膝まずいて、私の手を握った。


 「私はオーブリーだから、魔法なんか簡単にできると思ってた。でもできなかった。すごく落ち込んだわ。そしたらカイお兄様が剣術を教えてくれた。ベドフォード家の娘なんだから、きっとすぐできるようになると思った。でも、結局剣術もちょっとすごい止まり。じゃあ、私は何ができるの?刺繍?編み物?作法?ダンス、音楽、学問、できることは全部やってきたわ………!!でも、でもそんなこと、誰だってできるでしょう………!?わたしは、私にしか出来ないことを出来るようにならなくちゃいけないの!

………………………っ簡単だと思ってたのよ、私。きっと、何だってすぐできる。みんなに迷惑かけないように、生きていくことなんて簡単だと思ってたの。………でも出来なかった。

今、わたし私が恥ずかしいの。オリビアもそう思うでしょう?何にも出来ないくせに、自信満々でやって、結局負けて終わり。そのくせ、どうして出来ないのって、私が何でもできる前提で言うの。ほんと、本当私って………………。」



 ほほを大粒の涙が伝う。ぼろぼろ ぼろぼろ止まってくれない。

オリビアがそんなわたしをしっかり見つめて子供をしかるような口調でいった。


 「お嬢様、確かにお嬢様はご自分を過信しすぎていらっしゃいますよ。どうしてご自分があれもこれも出来るようにならなきゃいけないと思っているんですか?」


 ビクッとして初めてオリビアと目を合わせた。

 それは………皇太子様と婚約しないために………………。


 「どうせ皇太子様と婚約したくないから~とか言うんでしょう?お嬢様はいつも生ぬるいんですよ、考え方が!」


 !?


 急にオリビアが微妙に真剣さを失い始めた。

ビックリして声を出せないわたしを置き去りにして、オリビアは続ける。


 「大体ですねえ、お嬢様ができることなんて皇太子様も出来るんですよ。」




 うっっ!!



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