第20章 世界を変えるエルダ (時系列-29)
「ねぇねぇジェス」
ちょんちょんと小さな前足で座っているジェスの腰を叩いたのはローム・エルダだ。次の授業までの準備時間でひょこひょこと一人で教室内を歩いていたエルダ。最近はこうして一人で歩き回っては他のロームと話したりアランやその友達の間を行ったり来たりしている。
だがエルダには他のロームでは物足りないのだろう、人間と話すことのほうが多い。
「どうしたの?エルダくん」
ジェスがエルダを抱えあげて膝上に乗せた。
「お聞きしたいのですが、僕はかっこいいですか?それとも可愛いですか?」
短い手をひょいひょい動かしながらそう尋ねたローム。こんなロームだ、可愛いに決まっている。
「え?んー、可愛いかな」
ジェスは頑張って動かしているロームの手を取ってそう言うと、エルダが動きを止める。
「そうですかぁ……うぅむ」
エルダはなんだか落ち込んでいるようだ、とジェスは認識して質問を返す。
「かっこいいほうがいいの?」
「はい。ロームとして定着した僕は架空生物としてのブート時にオスを選択しています。ですが皆さんとお話すると僕は一様に可愛いと言われてしまうのですが、オスを選んだ僕としてはかっこいいの方が嬉しいのです。なのでかっこいいと言われたいのです。ジェスは女の子ですから、オスの僕をかっこいいものとして扱ってくれませんか?」
ジェスはおかしく思いながらエルダを撫でた。
「いいよぉ。エルダくんはかっこいいねぇ」
子供に付き合うようにジェスがそう言うとエルダは顔となる部分のユニットを少し上げる。どや、という擬音がつきそうだ。
「ふふふん」
「(可愛い……)」
エルダは世界とはこうして変えていくものだ、なんて大きな事を思いながらしっぽユニットをパタパタ動かして喜んだ。