第18章 ペットじゃなくて友達 (時系列-22)
「なぁエルダ、ロームの身体は慣れた?」
移植から数日、自宅のベッドに転がりながら3D漫画を読み終え、暇を持て余したアランがローム・エルダに声をかけた。
「慣れですか。そうですね、僕の持っているCPUと関節の少ないロームの身体は釣り合いませんので、やや思考が余り気味ではありますがそれ以外は良好です。つまり慣れたと言って差し支えありません。余った思考で経済や政治についてのニュース情報を分析したりしているのですが、アランは興味ありますか? 世界経済についてのディスカッションなんてどうでしょう」
エルダはアランの父親がテレビでニュースを見ていると大抵その隣でじっくり座って見ている。そういうことに関心があるのだろうということはアランもわかっていたが。
「いや、オレは全く興味ないぞ。それよりもエルダとは普通に話してたいな、汎用の高性能アンドロイドのAIってどんな感じで会話出来るのかなって」
「そうですか。ううむ、僕は社会についての話題を話したかったのですが。普通といえば……十代といえば、やはりゲームの話題が適しているのでしょうか」
アランはあまりゲームを持っていない。最新機種から一つ前のが一応あるが、ソフトは数本というところだ。
「なんでゲーム? まぁ好きだけどさ。もしかしてエルダ、昔の主人が社会派のゲーマーだったのか?」
「記憶デバイスが無いのでわかりませんが、かすかにゲームで遊んだ記録は残っています」
「あぁそういや記憶デバイスね、いつか取り出さないとな。しかしなるほど、高性能なAIはゲームもうまいんかな? ロームでも遊べるようなのあったっけ。なんかやってみようよ」
アランはゲームが乱雑に置かれたカゴを引っ張り出して二人プレイが可能なタイトルを探す。
「望むところですとも。お、そこにあるのは”ポポ”ではありませんか。人気ですよね、一般的に丸いキャラクターは人気が出るものですが、ここまで丸いキャラクターはあまりいないのです。ところで人気キャラクターの持つ商業的価値をご存知ですか?丸が象徴的な人気キャラクターには……」
経済的な側面は何にもあるものだが、まさかここまで語りたがるとは。アランは遮るように言う。
「おけ! じゃあポポで遊んでみるか。つっても二作目しか持ってないんだよな」
「ふむ。僕はどれもやったことがないのでどれでも同じことですから」