第11章 おばけを修理するのが近未来版怪談 (時系列-20)
アランは学校帰りの道の途中、死体と目が合った。場所も場所だ、あまり人通りがなく、道幅も車一台分しかない狭い路地で、電信柱の影に持たれるようにそれは死んでいた。
「おぉ……」
死人ではないし、厳密には死体でも無い。それは壊れたロボットだからゴミと言ったほうが正しいかもしれないが、それでも人型であるし、視覚モジュールはアランの方を見ていたのだから、やはり死体と目が合った、というのが正しいと思う。ゴミとは目を合わせられない。
「こりゃひでぇ。もったいないなぁ」
アランはそのロボットの死体をツンツンとつつき、起動しないか試してみるがうんともすんとも言わない。型は新しいタイプのヒト型アンドロイドで、普通に買ったら百万以上はしそうなお宝が無造作に転がっていた。
しかし何故? パーツを売ってもいくらかになりそうだし、その壊れ方からすればなんの知識もない人間にいたずらに破壊されたような印象がある。悪ガキが高級車の窓だけ割って満足しているような感じで、こんなところに転がっているからには当然正規に捨てられたものではないだろう。
「……よし」
アランは袖を少しまくると、そのロボットを担いで家まで運ぶことにした。パーツをばらして売ってお金にするのもいいけど、可能なら修理してみようと思ってのことだ。
遅れたが、彼は工学系学校の学生である。機械への知識は深い。
かなりの重量ではあったがなんとか持って帰って自室の作業台にそのロボットを置いた。型番を調べてそれをPCで検索すると、学生の身ではというか、一般の家庭ですら手が届かないような超高級モデルであったことがわかる。
どうやら人間とコミュニケーションを取ることを主題に開発されたらしく、かなりの関節数を持つハイスペックアンドロイドだ。
頭部は損壊していて人間で言うところの「ハゲ」状態であるが、設定次第で男とも女とも振る舞うことが出来るらしい。身長設定も百六十五から十五センチ前後で設定できるようだ。アランはPCのカタログでとてもかわいらしい女の子のようにカスタマイズされた同型機を見て「ほほぅ……」と頷いている。
俄然気合が入った。完全な修理が無理でもいじってみる価値はあるだろうと彼の好奇心がうずいている。その日は深夜まで壊れたアンドロイドにつきっきりで過ごすことになった。