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第9章 怒りを持つサイボーグ (時系列-8)


 俺は誰だ?


 体が言うことを聞かない。かろうじて視覚からの情報は受け取ることが出来る。ただ重力を感じない。でも浮いているわけじゃない。


 自分が今上を向いているのか、下を向いているのか、吊るされているのかがわからない。でも目線の先に小さな電気がついているから、恐らく仰向けの状態にあるのだろう。


 しかしどうにも体が動かない。いや、多分動いているはずだ。指先程度は。布をこする音は聞こえている。目線を下げても自分の体が縛り付けられているようなことはない。


 ただ動かない。どうしても動けない。自分の体じゃないような気がしてきた。


「やぁ、起きたようだね」


 見たことのない白衣の男に声をかけられる。ひどく腹が立つ……ような。


「おっと、感情が触れているな。……覚えているのか?」


「いえ、そんなはずはないと思います。彼元来の性格とか性質によるものでは?」


 後ろから声が聞こえる。まだ他に誰かいるらしい。声からして女だ。視界の隅に二人目の白衣が見えた。


「まぁ起動したのだし……深層部分に何が有るとしてもある程度は目を瞑るしか無いか。さて、どうだね、気分は。僕はデッカー。博士とでも呼んでくれればいい。君を生んだことになるかな、一応」


 その白衣の男は満足そうに言った。


「ボディサイバネティクスのロックを解除します」


 白衣の後ろにいる女がそう言うと自分の体がしっかり動くようになるのだが、やはり感覚がおかしい。俺は重力の感覚を覚えているし、衣服が肌に触れている状態の覚えもある。なのにそういった事全てを感じられなくなっていた。


「俺は……どうなってる……」


「まぁ戸惑うだろう。君は人類初の……なんだろうな? とにかく新しい存在だよ。身体は全て機械。僅かに人間のベースが残っているが、身体の九割を機械化した新人類、あー、ホモ・サイバネティクスなんてどうだろうな」


「サイボーグで良いのでは?」


 サイバネティクス? 俺の記憶の中には確かに残っているワード。身体の一部に適応したり、埋め込んだりする機械の事だ。義手や義足という分野で始まったものを発展させて、かつての携帯電話なんかの端末と合流した新しい技術の形がサイバネティクス。


 自分の視界に直接データを表示させたり、連動する機械を意識だけで操作可能になったりと、一言で言えば「便利な機械の総称」だ。だが人間への適応率には限界がある。四肢と臓器を人体が耐えられるラインを最大値でサイバネティクスに適応しても六割前後と言ったところだろう。俺の九割とはどういうことだ。


 なんの疑問にも答えられること無く、白衣の男は話を進めていった。


「君の名前は……ジョンにしよう。わかりやすい。さてジョン、リハビリと勉強を始めようか。君にはこれからたくさんの仕事があるからね」


 あぁどうしてか腹が立つような気がする。でも従わなきゃならない……俺は白衣の二人に付いていった。

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