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男なら一国一城の主を目指さなきゃね  作者: 三度笠
第三部 領主時代 -青年期~成年期-

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第二百二十五話 贅沢な使いみち

7450年6月16日


 数日前からまたダート平原の端っこを切り拓いている。

 屠竜(ドラゴンスレイヤー)を使って魔物を集め、騎士団の訓練を兼ねて殲滅させる。

 その後、開墾のために鼻血を流しながら木を伐採して過ごしていた。


 非常にかったるくて地味な仕事だが月イチで騎士団員たちに多くの戦闘経験を積ませられる上に、将来の農地を増やすことに繋がるのだから仕方がない。


 そんなある日、トールから遂に満足の行くプレス機の設計が出来たと報告があった。


 今までも数台の試作機を作っていたが、最初のは卓上に置けるようなサイズのネジ式プレス機で、次のはそれを大型化したものだった。


 どちらもオースで刃物鋼と呼ばれるそれなりに高価で貴重な硬い金属から作られたもので、例えばゴム底の地下足袋の金具(確実な曲げ工程が必要だ)のような小物からお玉や鍋などの各種調理器具や食器(各種絞り工程)、穴あけが必要な金属製の小さな部品や各種製品を均一な品質で大量生産できる道具としてかなり重宝している。


 大小合わせてたった数台しかないプレス機でも一日で数十から物によっては数百もの数を作れるので大量生産と言っても過言ではないと思う。


 しかし、如何せんスライド部分が小さい上に、ネジ式なのでそもそもスライドのストロークは少ししかないから、加工できる対象も小さな物にならざるを得なかった(家庭用の直径三〇㎝に満たないフライパン程度が精一杯)し、圧力もそう大したものではない。

 卓上の物は数百㎏程度だろうし、大きなタイプでも数tがせいぜいだったのではないかと思う。


 それでも小物を加工するくらいは充分に可能だし、便利なのは確かだった。


 その後、大きなストロークを目指してブラッシュアップを重ねていたのだが、ネジ式だとスライドに取り付けられる治具を大型化しにくかったのだ。


 例えば、ガラス製造を誤魔化す為の一辺三〇~四〇㎝程度の正方形の鉄板を正確に傾く事なく対象に当てられるような物は作れなかった。


 無理を押して作ってはみたものの、治具全体に均一に圧力をかける事は難しく、どうしても傾きが発生してしまう。

 ネジ軸を増やすことで対応させようとしても正確に連動させることは難しいし、何よりハンドルを回す際に別のネジ軸が邪魔になるので、取り外し可能なハンドルを使ったとしても作業効率が非常に低くなってしまう。

 更には、ある一定以上の圧力をかけると鋳鉄製のフレームの方が耐えられずに歪んでしまう。


 それらの問題解決に対し、俺は貴重な魔法金属の使い時かも知れないと考えた。

 オリハルコン、アダマンタイト、ミスリルといった鉱石。

 しかも高純度だと思われるそれを幾つも所有している。


 これらの地球には似たような物すら存在しない金属類の特性を知りたかったが、忙しさにかまけて今までほぼ手を付けていなかった。

 実験が必要だろう。

 なお、温湿度管理など何もしていないのに魔法金属だけ金や白金のように錆び一つ浮いていないので耐食防錆性は非常に高いということだけは判っている。


 オリハルコンやアダマンタイト類よりはミスリルの方が多く所有していたので、まずはミスリルからだ。


 実験用に、幅一㎝強、長さ四〇㎝程度でコピー紙並みの厚さのリボン状にしてみた。


 こんなに薄くて細いのに大工などが使う片手用のハンマーで叩いてもたわむ程度で、ウォーハンマーでぶっ叩いてようやっと折れ曲がる程度だった。

 手近な物で切断出来たのは俺の屠竜(ドラゴンスレイヤー)とミヅチの魔法の曲刀だけという時点で採用が決定した。

 面倒くさかったので手に入れていた他の武具では試してすらいない。


 この時「そういえばトリスの鎧がミスリル製だった筈だが、どうやって加工したのかはともかくとして、サイズ変更のためにガキの奴隷でも鎖を解けたのは魔法の品(マジック・アイテム)だったからだろうか?」と思ったが、そんな事考えても仕方がなさそうなのですぐに頭から追い払う。


 因みに、端っこをちょっとだけ切られたミスリルリボンだが、半分くらいのとこで切って二つに分け、その端の方に二つ穴を開けて持ち手を固定した上で少し整形し、俺とミヅチの食用ナイフにした。

 何しろ砥いでいないので武器にするにしても切れ味自体はあまり良いとは言えないし、砥石を当てても砥石が削れるだけで碌に砥げなかったからね。

 でもそれなりに薄いからステーキを切るくらいは問題ないし、普通に使う分には陶器の皿を傷つける程ではないことがわかったから、有効利用だ有効利用。


 とはいえ、折角なのでミスリルについては色々とテストをしてみた。

 その結果判明した詳しいことは後述するが、とにかくとして魔法金属の強靭さは理解できたので、トールには特性を説明した上で使っても良いと許可を出した。


 冒頭に戻るが、それを受けてトールは改めてプレス機の設計に取り組んでいたのだ。


 彼はネジ式を捨て油圧式を採用した(ネジ自体を完全に捨てた訳ではない。足踏み式兼ハンド操作タイプの油圧ポンプからオイルの入ったシリンダへ繋がる配管の各所で圧力調整の弁代わり、フレームを含む多くの部品の接続については相変わらずネジを採用している)。


 そして、フレームにはミスリルを被せることで解決した。


 通常のフレームに対し、断面をコの字型にしたミスリルのフレームを被せることで、少なくともどんな圧力を掛けても大丈夫なフレームが出来上がったのだ。

 まぁ、ミスリルを加工したのは俺なんだけど。


 加えて、正確な径で作られた油圧用シリンダとピストンヘッド、油圧ポンプやそこから伸びるオイル配管の内張りまでもミスリルで俺が作らざるを得なかった。


 こちらも鉄や銅などの芯材の表面を薄く伸ばしたミスリルで覆うようにした。

 ついでにシリンダの内側やピストンなんかもその表面はミスリルを使っている。


 ミスリルを使っていると言っても、メッキみたいに薄い(当然だがメッキよりはかなり厚い)から実は使ったミスリルの量自体はフレームと合わせてもたかが知れている。

 多分、合計してもタバコの箱一つ分もないんじゃないかな?

 一番使ってるのはネジ山部分な気もするくらいだ。


 何にしてもミスリルを採用した効果はてきめんだった。


 まず、そうそうな事では摩耗しない。


 鋳鉄や刃物鋼、果てはタングステンなどで作ったヤスリでは碌に削れないばかりか、表面を鏡のようにしたミスリルにざらついた表面に加工したミスリル同士をルビーに命じて朝から晩までこすり合わせ続けさせて、よく見れば分かる程度の傷しか出来なかった。

 これは、例えば焼き玉機関などに使用すれば適切に清掃し続けるだけで半永久的に使用可能である事を意味する。


 そして何よりも頑丈。


 ぶっちゃけた話、フレームもスライドも、何もかも中空でも大丈夫そうなくらいだが、プレス機自体にある程度の重量が必要なのは当然なので芯材を入れる必要があったというだけだ。


 ついでに射撃の的にもしてみた。


 紙みたいな厚さ、一㎜、一㎝の三種類を用意し俺の作ったライフル銃で撃ってみたのだ。


 普通の鉄ムクの弾頭だと一〇mの超至近距離で当てると紙みたいな厚さのは楽々貫通し、厚さ一㎜は弾頭がめり込み、厚さ一㎝だと、僅かに凹んだかな?という程度だ。

 なんだか頭にきたので一発だけ鉛弾芯をギルディング・メタルで覆ったフルメタル・ジャケット弾を作って撃ってみたが、凹みが目で見える程度になっただけで貫通はしなかった。

 その結果、苦心して作成し、改良した俺の銃が大したものではないと言われたように感じてクソムカついてしまい、弾頭ジャケットをミスリル、オリハルコン、アダマンタイトで作ったら厚さ一㎝で一〇〇m離れて撃っても全部キレイに貫通した。ザマァ見ろ。


 それはそうと、ゆっくりと力をかけた場合には壊れにくく、瞬間的な衝撃には弱いことが判った。

 まぁ、それでも鋳鉄や鋼は疎か、タングステンよりも強いことは確かだけど。


 参考までに、アダマンタイトは耐衝撃性が高い割にゆっくりと力を掛けられる事には弱く、オリハルコンは両方に強かった。

 どちらもまともなやり方だと加工や変形すら碌に出来ないね。


 あ、ついでにもう一つ。

 ミスリルの比重はおそらくアルミ程度。アダマンタイトはその倍くらい。そしてオリハルコンは鉄より僅かに重く、銅よりは軽い。

 だが、オリハルコンは人(生き物?)が手に持つと、持っている間はどう考えても半分以下の重量になる。

 秤上の数値で五〇Kgの鉱石があったとして、それを体重七〇kgの者が持って秤に乗っても一二〇kgにはならず、九〇kg強くらいになるのだ。

 勿論持っている者が感じる重さも減少しているとしか思えない。

 だが、丈夫な板に乗せてその板を持つと急に重くなり、それが鍋のような明らかに「道具」と言えるものだと軽くなる。


 これは今まで運ぶときは袋に入れていた為に気が付かなかっただけなのだろうと思われる。

 流石は魔法金属、と言った所だが、なぜそうなるのかなんて、ミヅチにも分からなかった。


 そして、最後の特徴。

 膨張や収縮とは無縁(多分)。


 これを確かめるために、三種の金属で直径が一㎜の金属棒とそれにピッタリ合うパイプを作ってみる。

 ピストンとなる棒を火で炙ったり、シリンダとなるパイプを冷やしたりしてもピストンを動かす抵抗力が変わったようには思えなかった。

 因みにミスリル以外の金属だとどれもこれもパイプに棒を入れることすら難しく、入れたとしても動かすのも一苦労だった。

 ついでに、ミスリルに限っては紙みたいな厚みの板の片側をガンガンに炙りまくっても、反対側を素手で触れるくらいに熱伝導率が低いという事も判った。

 どう頑張っても鍋釜などの調理器具には出来ない。いや、しねぇけどさ。 


 これらの特徴は、ミスリル鋼製のトリスのエルフ鎧が高温に対して耐性を備えていたことと関係があるのかも知れない。


 また、パッキンだが、今回使う予定のオイルは植物性のごま油だ。

 これが合成オイルを使ったとしても普通ならパッキンには天然素材のゴムではなくニトリルゴムなどの合成ゴムが必要だ。


 石油を発見した以上、いつかは作れるようになるのかもしれないが、残念ながらまだ石油精製には手を出していないので接触分解(クラッキング)が出来ないために合成ゴムなどの石油由来の素材は作ることが出来ないから仕方がない。


 これらパッキンが無い事については、油圧シリンダやオイル管、接続具などの表面部分を俺が作ったことでオイルの漏洩については気にしなくても良くなった。

 ガスケットやパッキンみたいな部品は必要ないのだ。

 何せ俺の感覚での話だが、nm(ナノメートル)どころかpm(ピコメートル)のズレもなく部品が作れるし。

 今回のシリンダにしても部品間の隙間は一µm(マイクロメートル)程度の隙間しかない。

 一µmと言ったら〇・〇〇一ミリで、どんなオイルでもその分子はもっと小さいが、この程度ならシリンダやネジ部分の長さを充分に取ればン万気圧単位の高圧でも漏れることはない。

 また、ミスリルを使っていることでそうそう変形もしないであろうからネジ山がバカになることもない。


 鼻血を垂らしてヒィコラ言いながら高精度部品を作った俺が一番の功労者のような気もするが、実際に優秀な人力油圧プレス機が出来たのはトールがちゃんとした設計図を引けたからこそでもある。


 トールにはボーナスとして一〇〇〇万Zをやることにした。

 俺が手を出す必要がなきゃその一〇倍でも良かったけどね。


 何せ、このプレス機が出来たおかげで金属加工や工作が一気に八〇〇~九〇〇年も進歩するのだ。

 その気になってきちんとした金型さえ作れば作成に手間の掛かる剣や槍、銃だってプレス成形……機械式のオイルポンプでもなきゃ流石に大量生産は無理かな?

 まぁ、鏃などちょっとした小物程度の金具なら過去に作ったプレス機でもガンガン作れるし、いいか。


 それはそうと、次に控えている旋盤だのボール盤だのも俺が部品を作る羽目になるのだろうか?

 いや、あっちの方は流石にプレス機程の強度は必要ないし、超精密で強靭な油圧シリンダやネジもいらない筈だからそれはないか。

 そもそも丸ノコを完成させている時点で両方とも機械的にはほぼ完成していると言えるしな。


 ……旋盤のバイト(刃)やボール盤のビット(ドリル)は魔法金属で作った方が絶対に良い物が出来るし長持ちするのは間違いがない。


 ま、今回作ったのと比べりゃ小物だし、それくらいいっか。

 




・・・・・・・・・




7450年6月18日


 デーバス王国の東部戦線。


 先日迎撃戦が行われた戦場で、再び迎撃戦が展開されていた。

 今回は予めレーンの魔法で陣地構築が行われており、それを守るデーバス軍においては完全に鉄砲隊の独擅場となっている。


 カンビット王国軍も偵察を行っていたため、この平地でデーバス王国軍が何かしている事は判っていたが、前回の戦いから僅か三日でこれほどに重厚な要塞を築いているとまでは気付けなかった。

 森を抜け、要塞の如く防備を固めたデーバス軍の陣地を遠目にした時、彼らはかなり慌てた。


 陣地は上空から見ると東に向かって少し先細りになった台形をしており、その台形の各角からは斜め外に向かって数mの壁が突き出している格好だ。

 陣地を囲む壁の高さは全て五m程もある。


 しかしながら、よく観察してみると、壁自体は垂直に切り立った格好ではなく、外側に急斜面を備えている。

 そのため、はしごなどがあれば通常の城壁を登るよりかなり容易く越えられそうだ。

 まして、壁は土でできている。

 その気になれば足場だって簡単に掘れるだろう。

 ちょっと頑張れば特別な道具などなくても登れそうに見える。


 通常、要塞など砦の壁を魔法で構築する場合、二通りの作り方がある。


 一つは魔術師を大量動員して本格的に石造りで仕上げる方法である。


 だがこちらは熟練の魔術師(元素魔法のレベルが四や五)でもそう簡単には行かない。

 何せ、土ではなく石を出す場合、その量は土を出す場合の十分の一程度の体積になってしまうからだ。

 これで出せるのは軟性質の凝灰岩程度で、土よりはマシだがかなり脆い。

 花崗岩程度の硬度を目指すなら百分の一くらいの体積にまで落ち込んでしまう。

 (つまり、地魔法がレベル九のアルなら一度に一万立方mの花崗岩を出せる)


 地魔法のレベルが五の魔術師でも三立方mの凝灰岩を出すのに元素魔法で五、整形の無魔法で五、固定場所調整で三の合計一三ポイントもMPを食われるのだ。

 強度の高い花崗岩なら筆頭宮廷魔術師クラスのレベル六でも一度に出せるのは一・三立方m程度であり、これではとてもやってられない。


 時間さえ掛けられるのなら一番頑丈に作れるが、小さな砦でも相当に時間も人手もかかる。


 例を挙げるなら外辺が一〇mに壁の厚み一m、高さ三mの本当に小さな砦を作るとしても魔術師が一人だけなら二八回も魔法を使わねばならず、睡眠時間を省いて作り続けても丸一日では終わらない。

 勿論、整形の魔法に慣れていないと集中時間も相応に食われるので元素魔法や無魔法のレベルを満たしていてもこんなことが出来る者はそうそういない。


 加えて、それで出来るのは真四角に囲まれただけの一辺が八mという、本当に小さな土地なので、そのままだととても使い物にはならない。

 色々な面を考慮すると最低でも二人で三日は欲しい。

 そうでないと階段を作ったり城壁上に盾のある胸壁を作る事すらままならないからだ。

 内部の建造物はともかく、出入り口だって必要だろう。


 ついでに、凝灰岩の場合、厚さ一m程度だとスタッグライノの体当たり一発で崩されてしまうし、数十人が攻城用の丸太で体当りしたらヒビくらいは簡単に入る。

 丸太の先をもっと硬い石や金属などで補強した猫と呼ばれる攻城兵器などを使えば数分程度で壊されてしまう。


 従って石造りの建物や壁を作るのは建設に長い時間を掛けても良い、城など本格的な要塞の建築に限られる。


 もう一つはこの方法より簡易で、壁の強度を下げて土壁にすることだ。


 これなら地魔法のレベルが五の魔術師でもそれなりの量が出せる。

 同時に整形も難しくなる(元素を出すとほぼ同時に整形し続けないとすぐに視界外になってしまう)が出す量を少な目にしてやれば解決は可能である。

 

 尤も、どちらの方法を取るにしても、元素魔法のレベルが五もあるような者は宮廷魔術師か、一流かそれに近い冒険者くらいしかいない。

 しかも魔法を使っている間、魔術師は完全に無防備になる。

 整形の魔術に慣れていたとしても一分間程度は何も出来ないのだ。

 そこが戦場ならクロスボウ狙撃や弓矢での面制圧、はたまた騎兵突撃の良い的にしかならない。


 これらのことから、恐らくデーバス王国軍は複数の宮廷魔術師クラスの人物を投入したとカンビット王国軍は判断した。


 カンビット王国軍にしてみれば、数日前の雪辱戦だった。

 聞いたこともないような魔道具を使われたらしいが、それが装備されていると確認されているのは僅か一部隊の騎兵だけであり、しかもその騎兵は一度だけしか使わなかったという。

 どちらかというと、轟音に驚いて腰を抜かしてしまったところを勢いに任せて襲われたという認識であり、一度知ってしまえばもう驚かされるような事もあるまいと高をくくっていた。


 加えて、あの要塞。

 建設にはデーバス王国の頂点に近い魔術師が最低でも数人は投入されていなければおかしい。

 敵に強力な魔道具ありとて、それ程の要人が前線に集っているなどこんな機会はなかなかない。


 援軍も要請し、今こそデーバスを骨抜きにする良い機会である。


 その判断自体は別におかしくはない。

 現時点ではまだ鉄砲について、本当の知識などないのだから。


「撃てっ!」


 命令と同時にアレクが振り下ろした小さな旗。

 その動きに合わせて城壁上から数十もの鉄砲が放たれた。

 要塞に向かって突撃していたカンビットの騎士たちは次々と絶叫の尾を引いて絶命する。


 すぐに風魔法が使える者の魔術によって気流が起こされ、視界を遮るように大量に発生していた濃い射撃の煙は払われる。


「てぇっ!」


 アレク隊の射撃が終わると別の指揮官が彼の指揮する鉄砲隊に命じる。

 こちらも小さな旗を合図にしていた。


 彼らは出来るだけ目標が重ならないよう、射撃先について細かく担当割を行っていた。


 こうして数度射撃を行うだけで、面白いようにカンビット兵はその屍を要塞の前に晒していく。


「今のが二度目の突撃ですが、これだけの被害を出したのですから、先方もそろそろ別の事を考えるかもしれません」


 ダンテス五百人長がアレクに言った。

 が、内心ではまた突撃をしてくるだろうと踏んでいた。


 何しろ、要塞の真東、つまり攻撃側から見て真正面には幅一〇m近い出入り口のようなアーチ状の口が開いており、木樽を二つ重ねて城門の代わりとしているように見せているのだ。

 これが嫌らしいところで、攻撃側からしてみれば城門の工事が間に合わずにあり合せの材料でバリケードを築いているようにしか見えず、格好の突入口のように思えるのだ。


 実はその樽の隙間からは多数の鉄砲が筒先を覗かせており、敵兵が近くまで辿り着いたらレーンがグラウンドスモークとサイレンスの魔術を使った上で射撃を行っていた。

 時折閃光を発するものの、発砲音どころか射撃煙すら上がらないので脆そうな入り口は取り付いてしまいさえすれば簡単に突破できそうに見える。


「そうだな……」


 弾を込め直している部下から少し離れた場所で、アレクはカンビット軍に視線を送りつつ返事をした。


「見ろ。流石にもうこれが弓のようなものだと気付いたと見える」


 アレクの視線の先ではカンビット軍が突撃部隊を再編しているような動きをしていた。

 どうやら大盾兵を中心に今度は歩兵の割合を高めているようだ。


 アレクに視線を戻した五百人長は、何度も押し寄せてくる多数の敵に全く恐れた様子を見せないどころか自信たっぷりな様子で薄笑いを浮かべている彼を伝説の英雄、カイ・ライザーの再来ではないかとすら考えた。


 カイ・ライザーは二〇〇年以上前、建国頃の英雄であり、冒険者出身ながら二代目の白凰騎士団長としてダート平原以南の平定や、当時は蛮族が支配していた東部地域の征服を成し遂げたデーバス王国きっての大英雄である。

 デーバス王国は自ら建国七〇〇年の歴史があると言っているが、そこは突っ込んではいけないし、カイ・ライザー自身も当時のダンテス公爵の落胤だと嘯いていたのだが、そこも拘ってはいけない。


 

■魔法金属が出てきたので参考までに。


(※数字はHV、ビッカース硬さです)

 11000前後 ダイヤモンド(前後と言いつつ範囲が広い7140~15300くらい)

 3430    純タングステン

 2350    炭化ケイ素(SiC、セラミックス)

 2300    サファイア

 2300    サファイアガラス

 1900前後  超硬合金(1700~2050くらい)

 1650    サーメット

 1103    石英(水晶)

 722    SKH56(高速度工具鋼鋼材、ハイス)

 615    SUS440C(マルテンサイト系ステンレス)

 512    SKT6(合金工具鋼鋼材)

 375    SUS630(析出硬化系ステンレス)

 350前後  SCM822(クロムモリブデン鋼、クロモリ鋼)(302~415くらい)

 280前後  チタン合金(64合金)(240~320くらい)

 187    SUS304(オーステナイト系ステンレス)

 183    SUS430(フェライト系ステンレス、18クロムステンレス)

 170前後  鋳鉄(160~180くらい)

 155前後  アルミ合金(7000系、超々ジュラルミン)

 130前後  チタン合金

 110    純鉄

 75前後   青銅

 75前後   アルミ合金

 60前後   マグネシウム合金

 50     プラチナ(純プラチナ)

 46     純マグネシウム

 25     銀

 20     金

 3.9    鉛


 10000   純ミスリル

 15000   純アダマンタイト

 25000   純オリハルコン


※但し上記は硬度の表ですので靭性や引張強度はまた別ですが、魔法金属はどれもかなり高いと思って間違いないです。

オリハルコンで銃身内部を作ったら、銃身寿命はアルが作る鉄ムクの弾丸なら1億発以上はあります。

また、ミスリルと組み合わせられるのであれば銃身加熱もしないので何発でも弾丸が続く限り射撃可能です。(銃身寿命が8000~10000発程度と言われているM60軽機関銃で連続射撃700発くらいで銃身が輝くほどに赤熱化し、1000発くらいで溶けます。射撃自体は続けられますが弾がどこに飛ぶかはわかりません)


純オリハルコンの厚さ5cmの装甲板で、300mの距離から放たれた現用戦車の徹甲弾が貫通できるかどうかくらいとでも思ってください(今考えた)。

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