第三十一話 草
7448年12月14日
トールの腕は鈍ってはおらず、相変わらず器用に型を作れている。
やはり、超器用の固有技能のおかげだろうか。
今日は腕の調子を見るのが目的なので、型の材料は俺が地魔法で出したキメの細かいだけの単なる土だ。
だから、この型で鋳造製品を作っても一回で壊さなければならないんだけど、モリブデン鉱石を鏨と鎚でちまちま削るよりは余程早く出来上がる。
速度優先のために土で型を作らせたので、そこに溶かした真鍮を流してもその表面は一見滑らかなようでいて、よく見たり触ってみれば誰でも判るほどざらついてしまうはずだ。
それでもオースの技術で作るより余程上等な出来栄えになっているから、これはこれで充分だろう。
牙を抜かれてすっかり大人しくなったトールは職人肌な部分も持ち合わせていたようで、「ここをもう少し」とか何やらぶつぶつと呟きながら型の内側を指先で丁寧に撫で付け、少しでも凸凹を減らすように腐心していた。
ま、この方向に生き甲斐を見つけてくれるのであれば援助を惜しむつもりはない。
それは置いておいて、俺の領主教育についてはこの分なら来週一杯で終わるだろうと言われた。
これでくっそつまらない講義からやっと解放される。嬉しいねぇ。
何しろ、講義の半分くらいはとっくに理解している内容か、中学~高校卒業程度の下地さえあればすぐに応用が可能なものだしね。
一番手間取ったのは裁きに関連する法律関係くらいのものだった。
だけど、それだって基本は暗記になるので講義の内容を全部ノートに認めておけば、手間が掛る以外はあんまり問題はない。
学校のように資料持ち込み不可の筆記テストをやられる訳じゃないからね。
あとは、歩兵や軍馬を使っての、元幹部自衛官からしてみればナメクジのように移動速度が遅い上に顔が見える距離での白兵戦主体の陸戦について、一部苦労したくらいだ。
射程も短く、命中率も悪い飛び道具については予めそういうものだと思っておけばあんまり問題なかった。
戦術についても装備や移動力の制限が大きいため、覚えなきゃいけない事はそう多くはない。
幾つかの陣形やその応用なんか誰でもすぐに覚えられる。
難しいのは戦況を見極めてタイミングよく陣形の変更や突撃・防御の指示を行うところくらいかな。
敵の意図を読んでそれに対応した陣形への指示を行ったり、要所で攻撃や退却、援護の指示を行うのはどちらかと言うと戦術などの記憶よりはセンスがものを言うんだと思う。
そういった、どちらかと言うと戦闘指揮なんかは問題なかったが、苦労したのは基礎の基礎、兵士たちからの報告の受け方だ。
指揮下の部隊に大声で命令を下すのはともかく、遠くから叫ばれている内容を正確に聞き取る訓練(?)については本当に閉口したんだ。
これらの集団戦闘訓練については王国第四騎士団に出向いて演習に混ぜて貰ったりしたのだが、遠くから騎士や兵士が報告してきた内容を正確に聞き取らなきゃいけないのは当然として、加えて“誰が言ったのか”も重要だったのだ。
多少聴こえ難かったとしても、こう言っているんだろうな、とその時の状況などからこっちで補完を行い、対応した命令を発して、それが道理に適っていても合格にはならない。
試験官として隣りにいる隊長さんに「今のご命令は結構ですが、そう判断した根拠を述べて下さい」と問われ、「敵は右翼の更に右奥から約四〇人の槍兵が接近中との事でした。右翼部隊は一〇〇人ですが装備は敵と同じく槍なので至急増援を行い被害の軽減に努めるべきだと判断しました。左翼と中央の敵の動きは未だ不明ですので本部の予備兵力から弓兵三〇人を右翼方面の援護に回しました」とか答えても、「その報告を行ったのは誰と誰で、どちらがどの部分を報告してきたのか」などと言われてしまうと答えられずに言葉に詰まることがあった。
兵隊なんか最初に紹介を受けたくらいで、顔と名前はともかく、声まで覚えられる訳がない。
俺には鑑定があるから大丈夫だと高をくくっていた部分もあったのは確かだが、報告をしてくる兵士は一〇〇mも二〇〇mも離れていて、全員が鎧兜姿の格好だからそのうちの誰が叫んでいるのかなんて特定は難しい。
仮に特定出来たとしても兜なんかが邪魔で鑑定なんかまず役に立たない。
勿論、鎧兜と言ってもそれぞれがまちまちの格好をしているのが大多数なんだけど、いちいち覚えてなんかいられない。
だから声を覚える他ないのだが、俺にしてみれば誰が報告をしてきたのかとか、どうでもいいという気持ちが強い。
しかし、この報告についても戦果同様に兵士個人の手柄になるので報告者の特定は重要だと言われたら粛々と従う他はなかった。
同じ内容についての報告が重なっても、一番早く報告を行って来た者と所属部隊が評価される。
報告の手柄ってのも不思議な気持ちがするし、そんなのそこの部隊指揮官から戦闘後に申告させればいいとも思うが、そういう決まりらしいから反論しても意味は無い。
頭にきたので軍隊の司令官は全員こんな芸当が出来るのかと聞いたら、出来ないと言われた。一瞬「なんじゃそら、いじめか?」とすら思った。
でも、俺は軍隊の司令官とは違うのだ。
何千人もの軍隊全体の指揮を執るような機会などない、一介の上級貴族という認識のされ方をされている。
そして、せいぜい一五〇~二〇〇人がとこの郷士騎士団団長という、一部隊の指揮官をやるのだから必要な事なんだと言われちゃったらねぇ……。
リーグル伯爵領の郷士騎士団程度の人数はこの時訓練を行っている第四騎士団なんかよりもっと少ないので、本来はもっと楽な筈だとも慰めて貰ったが、それならその程度の人数に合わせてくれよとも思ってしまう。
規模の小さな郷士騎士団であれば、賞罰は全部団長である俺が判断するのが当たり前なんだそうだ。
これについて異論はない。人数から言っても自衛隊の中隊程度だし、そこに所属する隊員の最終的な評価は基本的に中隊長が行うものだ。
それに、騎士団長が自分の報告を聞いていて(声を覚えていて)、戦闘後に直接報奨を賜るのは名誉なことであり、それによって兵士たちの士気も上昇するのだと言われたら、そうですかと言うしかないもんね。
この講義については唯一俺が一発で合格点を貰えなかった物だが、心の中では本当にどうでもいいと思っている。
オリジナルの評価制度を確立するか、さっさと無線機を開発するべきだとの決心をさせてくれたので意味が無かった訳ではないと自分を納得させた。
とにかく、年内には講義から解放される。
……そう言えば、ミヅチからライフル弾が底をついて久しいと言われてた。
ここ数ヶ月、誰も射撃訓練を行えていないのが続いていたのだ。
銃も半年くらいいじってない(勿論、新規製造もしていない)から、やんなきゃならない事はまだまだ残ってたな。
あ、誘発の魔術だけど、やっと使えるようになった。
精神集中に三〇分くらい掛かっちゃうのはご愛嬌だけど、回数をこなせばどんどん減って行くだろう。
・・・・・・・・・
7448年12月26日
「あ、団長。団長もお仕立てですか?」
王都ロンベルティアの表通りであるベイル通りから一本奥に入った路地。
第一騎士団の団長を務めるゲンダイル子爵が“軍装ハミル”と看板が出ている仕立屋の前に着くと丁度中から騎士団員の一人が出てきたところだった。
「ん? ああ、サーコートをな……」
「ここ、仕事が丁寧でいいですよね。じゃあ、私はこれで」
「ああ……」
ゲンダイル子爵は暫しの間騎士団員が表通りの方へ歩き去るのを見送ると店の扉を開けた。
窓から差し込む陽の光と明かりの魔道具に照らされていることもあって店の中は結構明るい。
「いらっしゃいませ。少々お待ち下さい」
奥の机で今まさに布を裁っているところらしい主人は、ちらっとだけ扉の方を窺うと布に鋏を滑らせた。
「すまんな。今日は客じゃないんだ。少し話を伺いたい」
ゲンダイル子爵は客ではないことを詫びると店の奥に足を踏み入れた。
鋏を置いた主人は子爵の顔を認めると、新しい第一騎士団の団長であると認識したようだ。
「これはゲンダイル閣下。その節は誠に有り難うございます。お陰様を持ちまして第一騎士団の方々には今まで以上にご贔屓にして頂いております。ご遠慮なさらずになんでもお訊ね下さい。こちらにどうぞ」
養子であるマーティンの結婚に際し、高級な食卓一式を贈ってくれた人である。
店の主人は子爵のためにすぐに椅子を用意した。
「ああ、かたじけない。……ええと、ウチのグリードの旦那さんは?」
「マーティーにご用事でしたか。申し訳ございませんがマーティーは昼前から出てしまいまして……」
「いや、すまん。実は彼が居ないのは知っている。新しい店の下見に行っているのだろう? 今のは単なる確認なんだ」
「え? は、はぁ」
店の主人は首を捻る。
わざわざマーティンの行動を把握した上で本人が居ないのを確認して入ってきたのは何故か?
自分と話をしたいからであろうこと以外に理由がない。
「窓を閉めてもよいか? あと、扉に鍵を掛けても?」
たった今腰を降ろした椅子からすぐに立ち上がって、ゲンダイル子爵は返事も聞かないうちから素早く通りに面した窓のつっかえ棒を外し、扉に閂を掛けた。
そして、一体何事かと目を白黒させる主人に向かって「奥方は?」と尋ねた。
落ち着きを失いながらも「買い物に出ている」と返事をする主人。
「単刀直入に聞きたい。そなたら、陛下とはどういう関係だ? 言い難いがマーティン殿は、その……陛下のご落胤か?」
静かな表情で語るゲンダイル子爵だが、その鋭い目付きは僅かな表情の変化すら見逃さないように思える。
たとえ嘘を吐いたとしても見ぬかれそうな眼光であった。
その視線からは物理的な圧力すら感じられるように思え、主人は思わず目を逸らしたくなる。
「は!? いえ、そんな、滅相もございません! 確かにマーティーは養子ですが、陛下のご落胤などではありません。古い友人の忘れ形見です。あれが幼い頃に両親が戦死したために私が引き取ったのです。幸か不幸か私共には子供もありませんでしたし、跡継ぎにしたいと申しましたら親戚連中も……お疑いでしたら彼の親戚の居場所も申し上げられます」
どうにか視線を逸らす欲求に耐えて驚いたような表情を浮かべたまま、主人は早口に答えた。
その顔をじっと見つめたあと、ゲンダイル子爵は「そうか。詮ないことを尋ねて失礼した。今日の話は忘れてくれ」とだけ言って扉の閂を外すと店を出て行った。
突然の来訪と、予想外の話題のため、少し興奮して顔を赤くしたままだった主人は子爵の後ろ姿が見えなくなるまで見送ると、店に戻って椅子に腰掛けて大きな溜め息を吐いた。
「……吃驚したな」
一つ呟くと立ち上がって再び鋏を手にした。
だが、すぐに鋏を机に戻すと水瓶から一杯の水を汲んで一息に飲み干した。
そして、店の奥に声を掛ける。
「もう大丈夫です。お頭。閣下は帰られましたよ」
声を掛けられて店の奥から出てきた人物は中年の獅人族、ザイドリッツであった。
彼は緊張を解すように交互に自分の肩を揉むと壁に寄りかかって腕を組む。
「まさか閣下自らがいらっしゃるとはな……閣下もグリード卿にお心を配られるのは当然か……。俺も吃驚して壁の向こうで身じろぎ一つ出来なかった……。もう年か」
「いえいえ、まだまだそんな事を言う程のお年でもないでしょう。お頭の隠行は完璧でした」
「若い時分ならいざ知らず、今の俺ではゲンダイル閣下にはとても及ばんよ。気配を読まれなかっただけでも僥倖だった」
「しかし、突然の戸締りはともかく、あの迫力には私も肝が冷えました」
「本当にな……おい、俺にも水をくれ」
ザイドリッツは主人同様に一息で水を飲み干した。
乱波の頭を務める彼ですら喉がカラカラになっていたのだ。
「……しかし、陛下のご落胤とは深読みのし過ぎと言うものだな……」
おかしそうにくつくつと笑いながら男は言う。
「でも、流石に第一騎士団の団長をお務めしているだけはあります。陛下との繋がりをお訊ねになられた時は……本当に驚きました」
「確かに流石だな。だが、我らの事まではご存じないようだ……。ハミルよ。そなたも長年『草』として過ごして来たが、これが最後の大仕事になると思ってもいいだろう。俺も八、いや、もう九年前になるのか……陛下から仕込みを命じられた時にはこんなことになろうとは夢にも思っておらんかった。陛下ご自身もそうだったろうがな」
「……ですな。確か、最初はグラナンの大使の部下の娘に取り入るというお話だったかと……」
「ま、マーティーも満更でもなさそうだし、グラナンの大使の部下の娘と結婚するよりは幸せだろう」
「ふっ。確かに。あれは酷いへちゃむくれですし、もの凄い我儘に見えましたからなぁ」
「平民だろうが大使の随員ともなればそれなりの家格であろうしな……」
「ええ、でも五年前に目標を変えると言われた時は驚きました」
主人は昔を懐かしむような表情を浮かべて語っている。
当時は理由もわからないまま、婿入りする対象をグラナン皇国の大使の部下の娘から第一騎士団の騎士に変えるとの命令があり、マーティン共々頭を抱えたこと。
鎧下の採寸や注文品の配達などで顔を繋ぎ、どうにかこうにか普通に喋れるようになるまで一年以上の月日を費やした。
そして、他愛のない話や冗談を言えるようになるまで更に一年。
別の騎士への恋心の相談を受けた時には肝を潰し、乱波組織を挙げて相手の騎士やその家族に近づいて騎士の愛情が妻一人に向けられるようにかなり大変な工作を行った。
傷心の女騎士を慰めながら、心を掴むのにも大変な努力が必要であった。
尤も、その過程でマーティーも満更どころか惚れてしまったような気がするのは長年親子として過ごしてきた主人やその女房にしか気が付かれていない。
「とにかく、お前達の仕事には陛下も大満足だと仰っておられる」
「勿体無いことです」
「いや、あのグリード卿を落とせたのは本当に素晴らしい事だ。陛下も一~二年後にはグリード卿を王都に戻すと仰られている。ご指示の通り、子供は三人以上になるように頑張らせろ。エンブリー達の偽装のように遺伝するのであれば……いずれは乱波の頭を張るようになろう。
その場合のグリード家は……主流の表向きは代々第一騎士団員を輩出する名家、裏は影から王国を支える乱波組織の長となるはずだ。ここ数年が正念場ぞ」
ロンベルト公爵家に代々仕える乱波組織の忠誠心は、忠誠の対象である国王が思っているよりもかなり高いが、末端である草の中には身内の情に絆される者もいないではなかった。
・・・・・・・・・
7448年12月30日
大晦日。
今日がミラ師匠たちとの最後の別れの日になるだろう。
彼らにとっては稀にある暇潰しの一つだったのだろうが、幾つもの魔術を教えて貰ったのだからお礼は大切だ。
ミヅチと二人、持ちきれない程の干物を抱えて妖精郷へと赴いた。
勿論、道中で出会ったモンスターは有無を言わさず氷漬けにしてやったので、俺もミヅチも傷一つ負っていない。
「あれぇ? もう領地に行っちゃってたんじゃないの?」
久しぶりに現れた俺たちを見てカールが驚いたように言った。
「あと一月か二月で出発する。今日は最後のお別れに来たんだ。いままでありがとうな、カール」
「色々な魔術を教えてくれて助かったわ。本当にありがとう」
カールは、いや、大多数の妖精たちは碌に人の話を聞かない、飽きっぽくてすぐに集中力を失うという大きな欠点があり、話が長続きしにくいので俺もミヅチも言えるうちに礼を述べておいた。
「二人共、この前来なかったからさ、もう行っちゃったんだと思ってた。……来てくれたんだな。でも、アルもこれで最後かぁ……」
俺の名前の直後に並立助詞である“と”が抜けてるぞ、羽虫。
それとも俺を殺したいのか?
まぁ、悪気があって言ったんじゃないんだろうけどさ……。
「師匠、大変お世話になりました。これはほんの気持ちです」
カールを無視してミラ師匠に干物の詰まった行李を渡した。
「ありがとない。アル」
ミラ師匠は微笑んでくれたがその目は早く行李の蓋を開けろと言っている。
行李の蓋を開けて中身を出し、これはメイセイヴァー、これはケイスァーゴと一つ一つ説明してあげた。
「ところでアルさぁ。ミヅチもだけど、誘発は覚えられたの?」
俺に邪険にされたカールがミヅチのフードの中から頭だけを出して言った。
「んふふ」
ミヅチが笑う。
「ねぇ、私とアルにちょっとだけ傷を付けてみて?」
ミヅチはそう言って、腰の物入れから縫い針を出した。
「お! ってことはミヅチもアルも!?」
カールは驚いたように言うとミヅチのフードから飛び出して縫い針を受け取った。
そしてミヅチが差し出した指先にちょっとだけ針を突き刺す。
すると、すぐにミヅチの体のうち外から見える地肌の部分が一瞬だけ薄っすらと青い魔術光に包まれ、カールが突き刺した傷が塞がった。
「精神集中には俺もミヅチもまだ大分時間が掛かるけど、もう使えるようになったぜ」
俺もミヅチ同様にカールに手を出しながら笑う。
お前でも使えない魔術、俺たちは使えるようになったぜ。
「うっわー、何その自慢気な顔。百歳にもなってない小僧のくせにアルは生意気だねぇ」
「痛っ! この野郎、思い切り刺しやがった!」
俺も先のミヅチ同様に予め誘発に設定しておいた軽傷治癒の魔術が自動的に発動したが、小さな傷であったミヅチとは異なって完全に傷は治らず痛みが尾を引いている。
思わずカールを捕まえようと手を伸ばすが避けられてしまった。
「まぁまぁ、アルよ。その辺で勘弁してやっておくれ。カールはあんたらが別れの挨拶にも来ないって、さっきまで泣いてたんだからの」
「ぴるるるっ!」
大声で何やら叫ぶカール。
大方、嘘吐くなとか黙ってろとか言ってるんだろう。
だけど、俺たちが別れの挨拶に来ないって泣いてたとか、可愛いところもあるじゃねぇか。
ちょっとだけ優しい気持ちになったのでカールは見逃してやることにした。
「それより二人共、一年も掛からずに誘発の魔術を覚えられるとは大したものじゃて……」
ミラ師匠は感心したように言ってくれた。
その後は餞別としてまた幾つかの魔術を披露して貰い、名残は惜しいが俺とミヅチは妖精郷を後にすることにした。
「おいアル! ミヅチも! おいら達のこと、忘れんなよ!」
自分は俺のことを忘れてた事もあるくせに、カールは勝手なことを叫ぶ。
「ああ。いつになるかはわかんないけど、ジョージみたいに国を作れたらもう一度くらいは顔を出しに来るさ。お前の方こそ忘れんな!」
なんとなく後ろ髪を引かれる思いで、小さな、とても小さな友人たちに暫しの別れを告げた。
ありがとう。決して忘れない。




