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男なら一国一城の主を目指さなきゃね  作者: 三度笠
第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第百七十五話 奴隷大量購入

7446年7月4日


 夕方に地上に戻った俺たちは他の殺戮者(スローターズ)のメンバーと合流し、ムローワに居た客に銀朱を掴ませて追い出す(十二人も居やがった。三万Zだぜ。クソ)と、店を借り切って八層と九層の話をする。


「それで、こいつが最初のミノタウロスから採れた魔石だ」


 ごろりとテーブルに白っぽい魔石を転がす。オーガのものより数段白い上物だ。

 俺としてもこれより素晴らしい逸品は、でかみみずと目玉野郎の物しか見たことはない。


「あと、これが最初のミノタウロスが持っていた戦斧(バトルアックス)な。で、こっちが次の奴の戦斧(バルディッシュ)と、今日の三叉槍(トライデント)だ」


 続いて手に入れた上等な戦斧(バトルアックス)などの武器もテーブルに置いた。


「おおー、白い」

「この戦斧(バトルアックス)も凄い上物だ」

「あのくらいの色は見たことがあるが単一ってのが信じられないくらいの白さだな」

「驚きの白さね」

「ステータスオープン……すごい、単一かぁ」

「ちょっと貸してくれ……ほう、確かにこいつは……」

「「「「せーの、おめでとう御座います、ご主人様!」」」」

「これだけ上物なら売るの勿体なくない?」

「確かに……金に困ってる訳じゃ無いしなぁ」

「ミノタウロスって聞いたこと無いけど強いのか?」

「そりゃこんだけの魔石だ。無茶苦茶強いだろ、常識で考えて」

「しかし、九層か……俄には信じられんが、こいつを見るとな……」

「【両刃(ダブルエッジ)の戦斧(バトルアックス)】か……業物だな」


 騒ぐ皆を暫く見つめたあと、言葉を続ける。


「その魔石と戦斧(バトルアックス)は陛下に八層突破のご報告の際にお見せする。すまんがくれと言われたら献上するつもりだ。……悪いな、ケビン。だから見たいなら今のうちに見とけ。とは言え、お見せするのはバークッドから隊商が来てからだけどな」


 俺が再び話し始めたので皆は黙る。


「それまで当面は八層の転移水晶の間を基地化するために殺戮者(スローターズ)の方は資材運びだ。悪いがもう少し堪えてくれ。あと、バストラル、お前は明日、キャシーと一緒に俺と工場で働く奴隷を見に行くぞ」


「え? でもまだ人数が揃ってないって……」


「うん。でも揃うまで待ってられない。多少少なくても月内に稼働させよう。遊ばせといても意味ないしな。で、明後日から買った奴隷と一緒に工場の操業の準備を進めてくれ」


「解りました」


「キャシーも手伝ってやってくれな」


「ええ、勿論です。でも、ジョンとテリーはどうしましょう?」


 キャシーはジョンとテリーの面倒を良く見てやっているし、気になるんだろうな。


「明後日王都で工場の準備をする時に彼らの部屋も他の奴隷の分と一緒に見繕っておいてやってくれ」


「はい」


 返事をして微笑むキャシーはなんだか彼らの母親のような顔だった。

 年齢を考えると姉なんだけどな。




・・・・・・・・・




7446年7月5日


 翌朝、ランニングを終えて朝食を摂った後、バストラル夫妻と一緒に「奴隷の店 ロンスライル」へと赴く。挨拶もそこそこにどのくらいの人数が集まっているか聞いてみた。


「申し訳ありません、グリード様。まだ男が五人に女が六人です。候補になりうる条件を満たしているものは男が五人に女が四人居りますが、こちらはまだ躾が不十分ですのでお出し出来ません」


 十一人か。当初考えていた男女十人づつにはまだ遠いが仕方あるまい。とは言え、今のところはこれだけ居れば充分だ。


「……ん、まぁまだ全員買えるとは決まってません。バストラル、キャシー、奥に行って先に見せて貰え。いいですよね?」


「勿論ですとも……エレノグ、お通しして」


 マダム・ロンスライルは番頭さんに命じ、番頭さんはバストラルとキャシーを案内して奥の部屋に消えた。あ、これ言っとかなきゃ。


「お前らが使いやすいと思えばそれで決めていい。話してみてどうも合わないな、と言うのであれば無理はするな」


 俺がそう言うとマダムは少し微妙な顔になったが、すぐに自分の商会での教育や目利きについての自信を思い出したのか、当然だとでも言うように頷いた。ま、条件に合っていて彼らが良いと言うなら俺も別に気にしない。


「教育の程は? あと、最初にお伝えした条件もご確認いただいておりますよね?」


 一応そう言ってみるが、俺としては教育の程については問題無いと見ている。


「今用意している奴隷については全てグリード様の仰る条件を満たしています。しかし……その……立ち入ったことを申し上げますが、子供の売却をお考えなのですか? もしそうであればそこまで徹底しなくても大丈夫ですよ」


 なるほど、子供の売却ね。そう取ったか。とっくに身分社会に染まっている俺としても自分の奴隷が産んだ子供をある程度まで育て、親元から引き離して売却するような事までは考えないよ。そこまで堕ちちゃいないさ。将来の工場の管理職候補となるジョンとテリーを買ったのとは訳が違う。だが、そう取られるならそれはそれで好都合だ。良い隠れ蓑になるだろう。将来外国となる俺の領地に連れて行く可能性があるからという理由もあるが、今そんな事を言って周囲から「捕らぬ狸の皮算用」とか誹られても気分悪いし。まだ人非人と思われる方がマシだ。


「さて、そこまでは……ですが、多少お値段が高くてもこの条件は絶対譲れません」


「まぁ、奴隷の親族関係の調査費用などたかが知れておりますからそれは良いんですけど……出過ぎたことを申し上げましたようで……」


「いえ、お気になさらず。場合によっては条件に合う奴隷を探すのにご苦労もあったでしょうし、それに見合った代金は構いませんよ」


「多少は苦労しましたが、それ程大変だった訳ではありませんわ。どちらかと言うと人種を単一に限られたので、その点の方が苦労したくらいです。集めやすい普人族(ヒューム)になりましたが」


 少し微笑んでマダムは答えた。


「はっは。それでもこの短期間に十人以上もの人数を揃えられたロンスライル商会の購買力には頭が下がりますよ」


 正直に言って結構な人数が集まっていることに驚いていた。せいぜい二~三人かと思っていたのだ。まだ教育が終わっていない人数を合わせると俺が要求した男女十人づつが揃ってるじゃねぇか。


 俺の伝えた条件は、


1.親子兄弟と疎遠なこと(幼少時に生き別れが最低条件でその後没交渉なら尚良し)

2.未婚、且つ女性なら出産経験がないこと

3.軽労働に耐えられる程度であれば多少の障碍は可

4.下は十歳、上は十四歳の成人前

5.どの人族でも良いが、全員同じであること

6.ちゃんと奴隷としての教育が行き届いていること


 の六つである。だが、奴隷商のネットワークでいとも簡単に揃えられているようだ。マダム・ロンスライルはこれまでの取引で信用が置けるので少なくとも意図的に条件から外れた者を販売しようとはしないだろう。


 正直な話、奴隷の取引は人身売買をしている感覚が薄い。俺としては単に条件を設定した従業員の採用を行おうとしている感覚でもある。とは言え、全員の人生をきちんと背負う覚悟もあるけど。奴隷と言うからには俺個人の財産とも言えるし、縁があって俺の物になるのであればそれなりの幸せを用意してやるのは主人の務めだろう。


 基本的に最低でも半数は(恐らくもっとだろうけど)将来的に俺が封ぜられる領地に同行をさせるつもりなので、親族が居ると可哀想だからだ。……恥ずかしくて言えるか、こんなこと。他にも理由があると言えばあるが、今はいい。それに、孤児みたいな奴隷にちゃんとした働き口や生活を提供することだって悪いことじゃないと思うし。


「じゃあ、私も見せて貰いましょうかね。王都で生活させるにしても顔くらい見たいですから」


 通された奥の部屋ではバストラルとキャシーが真剣な顔でいろいろと質問したりしている。結構しょうもない質問ばっかりなので内容はどうでもいい。彼らには、将来的に俺の領地に行く可能性があるから先の条件にしていると伝えているのでいろいろ確認したいことが多いのだろう。特にキャシーは自分が一番接することになるから非常に真剣な顔つきだった。バストラルも自分の嫁さんが心配なのだろう。だからと言う訳じゃ無いけど、年齢を子供に絞った意味の一部もそれだしね。


「どうだ?」


「あ、大丈夫だと思います」


 バストラルが言う。キャシーもこいつはダメだって奴がいないようなのでOKだろう。


 男女織り交ぜて合計十一名。要望通り十歳から十四歳の普人族で揃っている。だが、栄養状態は良くなかったのだろう。食事の改善はされているだろうが皆どことなく痩せている感じだ。


 鍛えられている俺やバストラルの体格を見て少し怯えた感じの表情を浮かべている奴もいた。


「ロンスライルさん。全員購入させて頂きます。お代は?」


 全員多少の誤差はあるようだが、一人百二十万から百五十万というところだった。十一人で千四百二十万Zだ。今回はちゃんと利益を取っているようだ。金貨十四枚と金朱で支払うと銀貨で釣り銭を貰い、販売証明が出来る明日の朝引き取りに来ることを伝え、店を辞した。




・・・・・・・・・




 ボイル亭に戻ったら誰も居なかった。

 多分時間からして昼食を摂りに行っているんだろうが、いちいち皆を探すのも面倒だ。

 ジョンもテリーも宿の前で待っていなかったから一緒に連れて行ったんだろう。

 仕方ないので三人で昼食がてら新しい店に行こうという話になった。午後はそのまま全体訓練になるので俺とバストラルは鎧や練習用の武器を持っていく。


 鶏の木という変な名前の店に入った。店構えはそこそこマシな部類で料理も悪くない。ボイル亭からは少し遠目なのが難点かな?

 適当な昼定食だったが結構満足出来たし、食後のお茶も一杯まで無料で飲めるのはなかなかサービスが良い。近場で飽きたらここまで足を運ぶのも悪くはないな、そんな事を三人で話していた。


「おい、あれ、殺戮者(スローターズ)の……」

「ああ、そうだな。俺も見たことあるぜ、グリードだ」

「あの猫人族(キャットピープル)も見たことあるな」

「メンバーだよ」

「あの女、どこかで……」

「ばっか、それどころじゃねぇ、この前あいつら九層まで行ったらしいぜ。さっきそう話してるのを聞いたって奴が居るんだ」

「九層? 嘘だろ? 建国王を抜いたのか?」

「九層が本当ならそうなんだろうな。すげぇ」


 おっほ。もう噂になってるのか。もっと褒めれ、ひれ伏せ、リスペクトしろ。うひょひょ。

 だが、そんな気持ちは三人共おくびにも出さずに平然と工場の話をしながら昼食をたいらげ、お茶までしっかりと飲み干すとゆうゆうと代金を払って店を出た。


「もう噂が広まっているようですね」


 店を出ると少しニヤけたバストラルが言った。

 キャシーもどことなく嬉しそうだ。

 俺も一生懸命に表情を取り繕いながらも「そうだな。六層や七層に行った時もこんな感じだった。八層に行った時もいちいち言っちゃいないが魔道具屋の親父からトロールの魔石の情報が漏れたじゃんか。二週間も経たないうちに八層に行ったに違いないって言われたろ」と言って平然とした表情ですましていた。


 九層なんてそれら以上にセンセーショナルな話だけに、噂は冒険者を中心にあっという間に広まったのだろう。とは言え、店に居た奴らも相当に耳が早いようだが。


 見てろ、そのうち皆が羨ましがるような高価な魔法の品(マジックアイテム)を手に入れて上級貴族(自治領地持ち)になってやるから。そして、時期を見据えた上で可能な限り早く独立するのだ。そうなった時、またもや噂が尾ひれをつけて泳ぎまわるだろう。


 俺の名声は高まり、人や物が集まりやすくなる。

 勝負はそれからだ。




・・・・・・・・・




7446年7月6日


 迷宮に入る虐殺者(ブッチャーズ)と根絶者(エクスターミネーターズ)を見送った後、俺はバストラル夫妻を伴ってまた「奴隷の店 ロンスライル」へと向かう。

 昨日買った奴隷たちを販売証明と共に受け取り、神社で命名の儀式を行って貰った後で王都に行くのだ。


 作り置いてある挽き肉機を念のため今日明日の予定で借りた馬車に押し込み、バストラル夫妻が御者台に座った。

 奴隷たちはズールーとエンゲラ、ギベルティに先導されて徒歩移動だがこれは仕方ない。

 本当はこれじゃ移動に時間が掛かるので一緒に馬車に乗せたいところだったが、挽き肉機はバストラルの部屋にあった最初のものも含めて五台もあるし、防腐剤も山のようにあるから無理だしね。


 王都に着いたら工場の操業準備は勿論だが、キャシーを伴って仕入先や流通を受け持ってくれる商会にも顔を出して挨拶回りをしなければいけないだろうし、防腐剤を卸してくれているダークエルフの治療院にも顔を出しておかねばなるまい。奴隷たちの宿の確保も必要だ。


「出来れば今夜には戻りたいが、戻れない可能性もある。あんまり心配しないで宜しくやって待っといてくれ」


 ゼノムやトリスにそう伝えてミヅチとそれぞれの軍馬に跨る。

 馬車を御するのはバストラルが行う。キャシーはバストラルの隣だ。


 ジョンとテリーには「お前たちが一番先輩になるんだからな。しっかり教えてやれ」と言っておいたし、新しい奴隷たちに紹介する時も先輩の言う事をしっかり聞くように言い含めておいた。


 途中、皆で弁当にするバルドゥッキーも今日サンプルとして配布するものと併せて昨日の午後にキャシーとジョン、テリーに充分な量を作らせている。


「よし、行くぞ」


 出発だ。


 

年末年始ですが、誠に申し訳ありませんが来週末から1/5まで実家に帰省しますのでその間の更新は滞ると思います。とは言え、出来れば予約投稿などで途中に一回くらい更新を入れたいとは思っています。


なお、頂戴致しましたご感想は全て拝読させて頂いています。

返信は活動報告の方で行っています。たまにご覧になってみてください。

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