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旅は道連れ、余は苦しゅうない  作者: 町娘おピカ
23/27

人の目を引くナイスなカップル

「ごらんになって、ロック!」



真夏の日差しよりも輝かしい笑顔で、リアティスが多少演技がかって言った。

今日は一段と美しい。

ロードリックは無言のまま、買いだした食料を手早く馬の荷に積んでいた。

ロードリックの表情は渋い。リアティスは構わず明るく叫んだ。

「村人たちのあたくしたちを見る目が違いますわ!」

(……本当にな)

獲物を見る人々の、ギラギラとした欲望に塗れた瞳。

もしかすると、何やロードリック達の知らぬ間に、王宮からお触れでも出たのかも知れぬ。



「やはりあたくしたち、人の目を引くナイスなカップルですのね!」

(だから!いつからそうなったと?!)

叫びたいのを堪えて、ロードリックは沈痛な表情のままリアティスを振り返った。重く口を開く。

「………本当に、そう思うのか?」

「思えたら楽しゅうございますわね」

リアティスがにっこりと微笑みつつ答えた。

数秒の沈黙が二人の間に満ちる。

「逃げるぞ」

「はい」

あくまで軽やかにリアティスが応じた。




「追いかけてらっしゃいますわね」

「ああ…」

リアティスが後方を振り返り、怯えた様子も無く言った。

追いかけてくる面々は、王宮の近衛兵ではなく、この辺りを守護する警備兵のようだった。一目見ればわかるほど身なりが違う。

多分、噂を聞きつけた村人も混じっているのだろう。数は三十を下らなかった。



「素晴らしい地響きです事」

(地響きを褒めた女はお前が初めてだ)

ロードリックは呆れつつも、リアティスと同じく後方を振り返った。

そうしてひとつ溜息を吐く。

王宮の近衛兵ならば、スピードを上げてなんとか逃げ切れば良い話だが、追手が土地の者となると話が変わる。土地勘がある分、引き離したと思っても、どこからか抜け道を通って追ってこないとも限らない。

なにより、話がどこまで正確に伝わっているのか。

ロードリックの身はともかく、リアティスは女でその上この美しさだ。血迷う者が現れないとも限らない。

「厄介だな」

ロードリックが呟くと、リアティスが馬の荷に手を伸ばした。

「お任せになって、ロック!こんな事もあろうかと!」

リアティスが場にそぐわぬ明るい声で言うと、ガイウスから受け取った金貨の入った袋を、中身をばら撒くようにして後方へと投げ落とした。

「おい?!」

「もひとつ」

驚くロードリックに構わず、リアティスはもう一つ袋をばら撒く。



「金貨だ!」

金貨のばら撒かれた場所に追いついた追手が、馬を止め、我先にと争う様に金貨を拾い始めた。

「止めんか!お前達!あの者たちを捕らえることが出来れば、その程度の金貨より、より多くの報酬を得る事ができるのだぞ!」

追手を率いる部隊の上の人間だろう男が、金貨に群がる人間を叱咤するが全く効き目が無い。

リアティスの行為は、大変に立派な足止めの方法として機能していた。



遙か遠くになった人々を顧みて、ロードリックが口を開いた。

「良いのか?」

「なにがですの?」

「せっかくの兄君のご厚意を」

「良いのですわ。捕まってしまう方が本末転倒ですもの。それに…」

思わせぶりに一端言葉を切ったリアティスに、ロードリックがどうしたのかと先を促す。リアティスは意味深に微笑んだ。

「あの金貨。中身は半分近く偽物ですのよ。前の町で買ったおはじきとか、ちょっと形の似たものを詰め込んでありますの」

楽し気に笑うリアティスにロードリックは二の句がつけなくなった。

一体いつの間に…。

「でも半分は本物が混じってますから、拾わずにはいられませんの事よ」

「なるほどな…、とにかく助かった。礼を言う」

「どういたしまして」

ロードリックの謝礼の言葉に、リアティスは鷹揚に笑って答えた。


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