第13話:王宮の歪みと、冥王の設計図
「抗うな、無能の職人が。大人しく縛りを受けろ」
近衛魔導兵の隊長が冷酷に命じると、十人のエリート魔術師が一斉に杖を掲げた。 展開されたのは、対象の魔力を強制的に封印する上級拘束魔法『五芒の鎖』。赤黒い光の鎖が、カナタの身体へ向かって蛇のように襲いかかる。
「師匠……!」
フィオナが叫び、エレナが剣を抜こうとしたその瞬間、カナタはただ静かに片手を挙げた。
「言ったはずだ。あんたたちの王冠より、俺の鉄の方が重いってな」
光の鎖がカナタの胸元に触れた刹那、彼の纏う『神鋳の法衣』が青白い燐光を放った。
ジュッ――という、水が油に触れたような無機質な音。
それだけだった。国家最高峰の拘束術式は、カナタの肌に届く前に霧のように霧散し、跡形もなく消え去った。
「な……っ!? 術式が消滅した……!? 馬鹿な、最大出力の魔法だぞ!」
「不純物が多いんだよ、あんたたちの魔法は。俺の鎧の『絶対不可侵』を貫きたきゃ、もっと純度の高い因果を持ってきな」
カナタは一歩、前に踏み出す。法衣の特性『職人の牙』が発動し、彼の周囲に目に見えない精神の圧力が放射される。そのあまりの重圧に、近衛兵たちは誰一人として杖を構え直すことすらできず、冷や汗を流してその場にへたり込んだ。
国家の暴力すら、神の職人の前にはただの子供騙しに過ぎなかった。
――同刻、王宮の謁見の間。
報告を聞いた国王アルベールの怒号が、大理石の壁を震わせていた。
「ラインハルト(総理大臣)……! 貴様、我が国を滅ぼす気か!」
玉座の前で、公爵の使いの役人がガタガタと震えている。
王は、ラインハルトたちの「利権を独占しようとする浅ましい目論見」を完全に見抜いていた。冥王竜を倒したばかりの奇跡の鍛冶師。その男を怒らせ、他国へ亡命でもされれば、この国の国防は一瞬で崩壊する。
「エレナに伝えよ! カナタ殿を害そうとする者は、例え大臣であろうとも『国家反逆罪』とみなす! 彼の工房を王宮直属の独立特区とし、いかなる貴族の介入も禁ずる!」
王の決定により、ラインハルト派閥の横槍は完全にへし折られた。だが、カナタにとってそんな政治劇はどうでもよかった。
深夜、工房『神鋳』の最深部。
フィオナを下がらせ、一人になったカナタの前に転がっているのは、不気味にドクドクと脈打つ『冥府の心臓』だった。
彼が『神鋳の金槌』を近づけると、システムが狂ったように明滅し、神代の設計図が暗闇の中に浮かび上がった。
【神器の封印解除率:10.00% ⇒ 12.50%】
【超絶神話級レシピ:『冥王の断頭剣』の構成を開始します】
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【神の設計図:冥王の断頭剣】
・必要素材:冥府の心臓×1、怨嗟の残鉄×100、神鋳の熱量
・種別:大剣 / 概念断絶武装
・神格特性:『霊魂切断』『因果剥離』
【詳細説明】
肉体ではなく、対象の「存在」そのものを切り離す漆黒の大剣。
この刃に触れた者は、いかなる不死の呪い(アンデッド)や、
目に見えない「権力・契約の呪縛」であっても、その因果ごと強制的に切断される。
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「肉体ではなく、因果を切る、か」
カナタは静かに微笑んだ。王宮の腐った貴族たちが、どれだけ法律や権力という「見えない鎖」で自分を縛ろうとしても、この剣があればその全てを切り裂くことができる。
「面白くなってきた。ラインハルト公爵……あんたたちがどれだけ高い席に座っていようが、俺の火床から見れば、ただの溶かすべき屑鉄だ」
漆黒の心臓に、カナタの金槌が振り下ろされる。
王都の闇を全て焼き尽くす、神殺しの第二幕が静かに始まった。




