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ほんのわずかな日常(4)

「…………あの」

「端的に言えば学外の人間です。この学院とはまったく関係ありません」

「そんな人を入館させるわけにはいきません! 帰ってください!」

 この女性警備員はもう少し順番に人の話を聞くことはできないのだろうか。

「今は学外の人間です。ですが、この大学に中途で入学するための手続きにやってきたんです」

「手続き…………?」

「この人は、ワケあって今は学校に通っていません。この人にもちゃんと勉強の機会を作るために、入学の手続きをしに来たわけですよ」

「中途での入学には、受験のときと同じ試験がありますよ?」

「そりゃそうでしょう。もちろん受けるんですよ」

「そうですか。事情がわかれば少し安心しました。この紙にお名前と入館時刻を書いて手続きを行ってください」

 鼈宮谷澪…………と、きれいな字で書いていく。いつ見てもきれいな筆跡だ。きっとイイところで育ったのだろう。

「はい、受領いたしました。館内に入館できます。退館時にはまたここでお名前と退館時刻を書いてくださいね」

「…………わかりました」

「この学院は中途で入学する人へのガイドラインも定めてあったはずだから、職員棟で聞けばだいたいのことは教えてくれると思うよ」

「…………結月さんたちは、一学年からここに入学したんですか?」

「そうだね。稜希とは同期。ずーーーーーーーーっと一緒で、もう何年の付き合いになるっけ?」

「何年だっけ、忘れたわ」

「しかもしかも! あたしがちょっといいところに進学しようとすると、必ず稜希がついてくるの! いかにもオレはお前より上なんだぞ、って、言わんばかりに!」

「別にそんなつもりはねーよ。たまたま一緒だっただけだ」

「たまたまでずーーーーーーーーっと一緒になるわけがないっての!」

「……………………ふふ」

 結月さんの顔に笑顔がこぼれた。

「…………おふたりは常に仲がいいんですね」

「仲がいいってよりも、もはや腐れ縁だよ! くっつきも離れもしない、星みたいなもん!」

「…………おふたりと一緒にいると、ボクも昔からこの輪の中にいたんじゃないかと錯覚します」

「澪ちゃんはあたしたちと一緒にいて、もう慣れた? 一ヶ月間ずっと一緒だったけど」

「…………そうですね、一緒にいて楽しい人たちだなって、思っていますよ」

「そっか! それならよかった! 楽しんでもらえてるならなによりだよ!」

 最近は鼈宮谷さんが家にいても襲うな、という釘刺しがなくなってきた。実際に襲っていないわけだし、ある程度は信用されてきたということだろうか。


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