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ほんのわずかな日常(3)

 区役所の担当者がお祝いの言葉をくれた。

「…………ありがとうございます」

「どうしてもわからないことがあれば、また区役所にお越しください。できる限りのことで力になります」

 不思議と、鼈宮谷さんはめちゃくちゃ喜んでいるようには見えなかった。出自のわからない怪しい人間から、しっかりと身分を証明できる大義名分が得られたというのに。

「さ。次の場所に行こっか。ちゃんと身元が証明できるようになったんなら、通うところに通わないと」

「どこに行くんだ?」

「学院に決まってるでしょ!」

 ノリノリの結月についていったら、いつも通っている学院に連れてこられた。

「おい、今日は休みなんだが…………」

「稜希が休みだとしても他の人は授業をやっている人もいるでしょ。全員が休みってわけじゃないんだから」

 オレたちが入学する前に、世界的にまん延した伝染病の影響により授業をすべてオンラインのインターネットでおこなうといった対策が施されるようになったらしい。

 今では学院へ登校することができているが、その代償…………と言ってはおかしいが、それと引き換えにシフト制の授業となり長期休みというものがなくなった。

 昔なら春休み、夏休みと大型の休みが確保されていたらしいのだが、今ではそんなものの見る影もない。

 なので、学院はいつでも開いている。週末も盆も正月も関係ない。

「検温をお願いしまーす」

 女性の警備員さんに入り口で止められる。熱なんかないのに、わざわざ画面に顔を向けなければならないのは面倒だ。

「37.6度、37.5度…………!? ダメです! 入館できません!」

 ピーッ! ピーッ! とこの世の終わりのようなエラー音が鳴り響き、いかにもオレたちがやばい人間かのような扱いをされた。

「あのですね、このクソ暑い中徒歩でここまでやってきたんですよ? そりゃ体温だって上がりますよ」

「で、でも、感染症を持ち込むわけには…………」

「オレも結月も、必要なワクチンはちゃんと打っています。ウイルスなんて持っちゃいませんので、通してください。なんなら冷ましてくればいいですか?」

「うう…………今回だけですよ…………。学生証をタッチしてください」

 10年ほど前から、IC認証で人員の出入りを管理するようになったらしい。そのシステムを導入した後に感染症の騒ぎになって、入退館を管理しやすくなるという理由でさらに導入が進んだとか。

「はい、通れますよ。…………ところで、そちらの女の子は?」

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