彼女の思い出(12)
不幸の度合いで、わたしが勝てないことを悟ったからだろうか? もしそうなら、わたしはまだ甘っちょろい人間だったということだ。
「アンタの病気は、治る見込みがないの?」
「…………わかりません。ですが長い間入院していることを考えると…………そういうことなんじゃないかと思っています」
「まあ、病気に関してはアンタの気合いでどうにかなる問題じゃないのはわかるけど。それなら親の代わりとやらの人に来てもらえるように話せばいいじゃないの」
「…………ダメなんですよ」
「どうしてよ?!」
「…………あの人はボクの親ではありません。ボクにお見舞いに来てくれるのは、ただの善意でしかありません。得がなければ、人は動きません」
「にべもない…………」
「…………それに関しては、陽莉さんがうらやましく思います。どういう心境であれ、様子を伺いに来てくれる人がいるのですから。ボクもそういう環境を持てたらよかった、と少なからず思っています」
「助けて、ってアピールしなさいよ! いろいろな人に! 片っ端から叫べば誰かが手を差し伸べてくれるかもしれないじゃない!」
「…………それは、陽莉さんがやるべきことですよ」
「え…………」
「…………見てのとおり、ボクには未来も、希望もありません。それをやって希望を見いだすことができるのは、陽莉さんの方だと思いますよ」
「…………」
「…………この先、ボクは生きることができるのか、死ぬ運命にあるのかはわかりません。ただ、確実にわかるのは…………この先に広がる真っ暗な未来。
目の前もわからないような真っ暗な空間が、無限に広がっているのです。その運命の終着点がどこなのか、わかる人はいません」
「アンタは、このまま死にゆく運命を…………許していいの?」
「…………ボクは許しますよ。それが運命なら、抗うことはできませんから」
「…………」
言葉が出なかった。これほどまでに自分の運命を受け入れている人を見たことがなかった。不幸を不幸だと片付けてしまう人。
それでいいのか、と問うてもいいと答える。助けを求めるべきと言っても、その必要はないと答える。
親の代わりとやらがどんな人物なのかわからないが、彼女を直接的に助けるつもりはないようだ。あくまで死なない程度の施ししかしない。
この人は、そんな運命でも、本当に不満がないのだろうか。本当は、誰かに助けてほしいのではないだろうか。本人が言及したわけではない、ただの憶測だ。




